Deeply love with the darkness -4-
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「もうさ本当に信じられないんだけど。廃墟みたいな家に人がいたからって、なんでのこのこ2人だけで見に行っちゃうワケ?」
リカが虹村形兆とあの弓矢の話を聞いたのは、1人怪我を負ったままの仗助が病院から承太郎を呼び出した時だった。
「廃墟じゃねーよ億泰んちだよ」
「そんな廃墟みたいな家に普通の人なんかいるわけないのよ!」
人の家に対して失礼なことを連呼しているのに気付かないぐらいには頭に血が昇っている。
偉そうにふんぞり返って説教モードのリカだが、仗助からしたらそんな終わったことより何故リカが承太郎と一緒にいたのかの方が問題だった。
仗助がむすっとしているせいで反抗的に見えたのか、リカの目がますます吊り上がった。
「そういう怪しい人間を見たときはねぇ、まず大人を呼ぶの!私か、承太郎か、のりくんを呼んで、それから一緒に調べるのよ!何のために電話番号教えてると思ってんのよ!」
「別にのこのこ見に行ってねぇーっつのぉ。ちょっと近付いたらもう康一が攻撃されちまってたんだよ。注意深かったぜ、俺は。…目の前で死にそうな人間がいるってのに、のんびり加勢が来るのを待ってろって言うのかよ?」
「だから!そのちょっと近付くってのをやめろって言ってんでしょ!」
引く気のないリカは仗助が見たことのない有無を言わさぬ迫力をしている。美人が怒ると怖いというやつだ。
そこで助け舟を出したのは黙って行末を見守っていた承太郎だった。
「…リカ。お前の言う通りにするとなると、四六時中仗助は俺たちの誰かと一緒にいなきゃあいけなくなるぜ。」
やれやれとため息をつきながら帽子を押さえる承太郎を見て、仗助は(リカだけならいいけど……)という言葉を口から出す前に飲み込んだ。
「この町に弓と矢がありスタンド使いが増えているなら、戦わないわけにはいかないだろう。確かに危険だったが味方のスタンド使いが増えたのは良いことだ」
「そんなことわかってるのよ。私が言いたいのは…」
「全員、覚悟をして戦ったんだ。お前もそうだったろう…リカ。」
「……。」
言い聞かせるような承太郎と目が合うと、リカは急に顔を歪めて涙目になった。仗助はすぐに駆け寄りたかったが、目を拭ったリカはまだ泣いてはいなかった。
「…心配してるの。仗助は人の怪我は治せるけど自分のは治せないでしょ…。私がいたら傷を塞いで一緒に戦うことができる。…嫌なのよ。私がいないときに大怪我したら、死んじゃうかもしれないんだから」
リカと目が合うと、その真っ直ぐな気持ちが流れ込んでくるようだった。
暖かく穏やかな気持ちになるのと同時に、掻き乱したくなるぐらいに揺さぶられる。
「私、全然覚悟なんて出来てなかったよ。あの時もそう。何にも出来なかった…知らない間に、みんな」
リカは承太郎を見るのをやめた。
怖かったことや辛かったこと、そしてそれらに負けないぐらい楽しかった記憶が蘇ってしまうからだった。
「ほんと承太郎って余計なことしか言わない!」
リカは反抗的に言い捨てるとそのまま病室を出て行った。
後に残された2人に沈黙が流れる。大変気まずく感じているのは仗助だけだろうか。
彼女の足音が遠ざかっていく。承太郎はドアの先を見つめるようにしたまま動かなかった。
彼もまたあの時の、一生懸命に自分の後をついてくるリカの健気な姿を思い出していたからだ。ずっとそうだと思っていた。
「…ずっと、守ってやっていると思っていたんだがな…」
「?」
小さなつぶやきはようやく聞こえるぐらいの声だった。
振り向いた承太郎と目が合うと、信じられないぐらいに慈しみを感じて仗助は動揺した。
「守られていたのは俺の方だった。今俺が生きているのはリカのおかげだ。あいつは本気で、俺たちが死ぬなら自分が代わりにと思っている…。ジョースター家の運命を受け入れながら、俺たちがただ…普通の人生を歩けることを願い、見届けようとしているんだ。だから仗助、お前はこれからどんな戦いにも勝たなくてはならない。リカがいればそれが可能だろう。それが…ジョースター家と、リカの魂との因縁だ…」
仗助にとって承太郎は頼りになる親戚だが、リカのことに関してはどうにも脅威に感じてしまう。まぁ承太郎は結婚もしているしリカに対する執心は親心(?)のようなものだと思うようにはしているが…。
「んなこと分かってますよ…」
まるで自分の気持ちを読み取られたようで居心地が悪かった。こんなにも承太郎に共感できたのは初めてだったからだ。
「今まで俺は…ガキの頃から、リカのことを守ってきたつもりでいたが…きっと逆だったんだ。それをここしばらくしみじみ感じてるよ。それが魂のせいだとかなんとか言われるのはまだ納得できねーけどさ……ただ、今言えるのは…あの弓と矢をぶっ壊すまでにリカを傷付ける奴が現れたら、俺はそいつを絶対に許さねーってことだけっスよ」
膝の上で拳を握りしめる。
怪我の酷いところにはリカのダークネスが張り付いていて、そこから温かさが全身を包んでいるようだった。
「ああ、リカ。ちょうど良かった…今から仗助くんのところに行こうとしていたんだよ」
部屋を飛び出して角を曲がったところで、リカはちょうどやってきた花京院と鉢合わせした。
さっきまでもぎりぎりだったのに、柔和な花京院と目が合ったら、ついにリカの大きな瞳からは涙が溢れ出していた。
「億泰くんと康一くんから話を聞いて、虹村形兆の現場もスピードワゴン財団が処理しているところだ…」
話しながら歩いていたら、軽い衝撃と共にリカが胸にぶつかっていたので花京院は少しばかり驚いた。
「…リカ?…どうかした?」
「あのねのりくんが生きてるか確認してるの」
リカは花京院にしがみついたまま顔を見せようとはしなかった。すぐに気付かれると思ったからだ。あの夜のむごい光景や、花京院の傷付いた姿を思い出したことを。
「生きてるよ。君のおかげで」
花京院は少しだけ、そっとリカを腕に包んで答えた。傷付いた仗助を見て彼女が何を感じたのかが手に取るように分かっていたからだ。
「また承太郎に余計なことを言われたんだろう?」
「うん」
「どうする?一緒に言い負かしに行こうか?」
「もういい。仗助の治療も終わったし、私帰る」
「…そうだね。君も休んだ方がいい」
「のりくん、うちでゲームする?」
唐突な誘いに花京院は少し驚いたが、すぐに幼い日のリカを思い出して小さく笑った。
3人だったから。承太郎がいたから仲良くしてくれていたのだと思っていたが、リカはいつも花京院をこっそり2人だけの遊びに誘ってくれた。
「いいね。…そうさせてもらうよ。」
連れ立って歩き出す二人は気付いていない。
曲がり角の影に忍ぶ億泰と康一がいたことを。
「ねぇぇええ億泰くぅん!あれってどういうこと?!リカさんは承太郎さんの…?!えっ?リカさんって……?!?」
「俺に言われてもわっかんねぇよぉお!どう考えてもリカは仗助の……ホラ、アレだと思ってたからなぁぁ〜〜〜!ありゃあいわゆる、浮気ってやつじゃあねぇのかぁ〜?!」
「だっ!駄目だよそんなの!!あぁぁ……神様、僕はどうしたら……ッ!?」
康一は頭を抱えて悶え、億泰も見た光景に頭が追い付かず、目を泳がせている。
一応仗助のお見舞いに来たのに、平静でいられる気がしない。
「おっ、康一に億泰じゃん!ちょうど今からリカを探しに行こうとしてたんだよ!」
「えっ!あ、あああのッ!リカさんッ、か、帰ったよ!!!」
「「??」」
動揺したまま、病室のドアを出てこようとする仗助と鉢合わせた。
妙にぎくしゃくしている康一に仗助も承太郎も首を傾げて不思議そうにしていた。
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