Deeply love with the darkness -4-
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リカがカフェでアルバイトをしていると聞きつけた承太郎。
次の日さっそく車を飛ばしてドゥマゴまでやってきた。
店員のいらっしゃいませが聞こえてくるより先にリカを見つける。
クラシックな黒いワンピースと少しレースのついたエプロンの制服が眩しい。それは彼女と6年もの間離れていた代償だった。あの頃は自分と同じ高校生の姿を夢に描いたものだが、現実のリカはそれを超えて魅力に溢れている。
「ほらここ!ここにあるでしょ?!」
「そうかぁ〜??んまぁ、言われてみれば?ちょこぉっと赤いような?」
「ちょこっとじゃない!ぷくってしてるから目立つの!」
「別に気にするほどじゃあねぇって〜」
テラス席で見つけたリカは座っている仗助と何やら言い合いをしていた。仗助と億泰と康一と…。どうやら仲良し3人組が客として来ているようだ。
リカは必死に自分の顔を指差しながら仗助に迫り、仗助はにやにやとしている。そりゃあ好きな相手が自分から至近距離に近づいてきてくれたら、口元の筋肉も緩むというものだ。
「あ!承太郎さん!」
康一がやってきた承太郎に1番に気付いた。
続いて億泰が「うっす」と頭を下げ、仗助は無言で承太郎を見つめる。
そしてリカは。
「………。」
ちらっとその姿を目に止めて、すぐに仗助に向き直った。
「ねぇ、ほんとにちょっと赤いだけ??膨らんでるし痛いのに!」
「だからぁ〜〜、化粧もしてっしわかんねーって!気にしすぎだぜ〜」
「そうですよリカさん!僕なんてこないだ頭の後ろの生え際んとこにできて…めちゃくちゃ痛かったですよ!」
「俺もよぉ〜、ケツにでけぇの出来たときは座るたんびに飛び上がるほど痛くてよぉ〜!」
「えぇ〜やだぁ〜〜っ」
康一に続く億泰のニキビトークにリカは楽しそうに笑っている。
無視されたことなんかより彼女が笑顔でいれていることが何より嬉しい承太郎。帽子で顔を隠しながらも小さく息をついた。こちらもニヤける顔を見せないためである。
「やれやれ……。いちよう俺も客として来たんだが」
「らっしゃっせぇぇえ」
ぶすっとしたまま適当すぎる歓迎をするリカに康一が苦笑いしている。
「承太郎さん、ここに座ったら」
にこにこと空いている椅子を動かす。
しかし友人2人の心境は(げぇっ!康一余計なことすんなよぉ〜〜気まずいよぉぉぉ)である。
「じゃあ、みんなの支払い承太郎の伝票に足しとくね」
リカの一言に座ろうとしていた承太郎が一瞬止まった。
「…昔はもう少し可愛げがあったんだがな」
「ちょ、ちょっと」
「駄菓子屋で足し算出来ずに金が足りなくなって泣きついて来ていたのに」
「あーあーあーあー!」
「それが人の伝票に勝手に会計を足すようになるとは…偉くなったもんだぜ」
「へぇ〜〜!それってリカさんが子供のときの話ですか?!」
勝ち誇ったような承太郎の隣でリカは耳を押さえていた手をそっと下ろした。康一や億泰がキラキラした目で見てくるのでなんだか期待に応えなければならない気分になったのだ。
「だって、円の計算なんてすぐに覚えられないよ。まだ10歳で日本に来たのなんて初めてだったし」
そういえば、何もかもわからない日本の生活だったけど、不思議と平気だった気がする。
ああそっか。思い出してみれば、いつも承太郎が一緒にいてくれたんだっけ。それでさりげなく助けてくれていた気がする。この人ぶっきらぼうだけど優しかったんだよね。
昔を思い出して今更感心するリカだった。
「承太郎が甘やかすからなかなか馴染めなかったんだからね!」
「そりゃ悪かった」
「友達欲しくてホームパーティー計画するたんびに邪魔して!」
「日本じゃあそんなことはやらねぇ」
「結局借りてきたおっきいプールに承太郎とのりくんと入ってほんと意味不明だったのよ!」
でも、楽しかったけど。
リカは最後の言葉を飲み込んで、代わりに少しだけ笑った。
珍しい子供のような無邪気な表情を見て驚く。
話を聞いて今まで黙っていた仗助は非常に焦っていた。
(くそがぁ〜〜〜何昔に思いを馳せてにやにやしてんすか2人ともぉぉ!10歳のリカなんて可愛いに決まってんだろぉ!それを…ッ、それをこの人は一緒に住んで独り占めしてたっていうのかよぉぉ〜ッ!!)
正確には嫉妬にまみれていた。
そう。かつて承太郎が高校生のリカの姿を夢見たように、仗助もまたリカが小学生で同じクラスだったらと、彼女に惚れた当時妄想していたのだ。
目の前にいる訳ありの2人の空気を壊すつもりで口を開いた。
「つーかよぉ〜、いくら旅で仲良くなったからって知りもしない日本に良く来る気になったよなぁ〜。まだジョースターさんとアメリカに帰ったってオチのが納得できるぜ。赤の他人の高校生と小学生がいきなり一緒に暮らすってのはなかなか危険な香りっスよぉ」
「今思うとほんとそれなのよ」
だが当時は一緒にいるのが当たり前だと思っていたのだ。承太郎はいつも夢見てるみたいに深くてキラキラした目でリカのことを見ていたし、離すことはしないと言ってくれていたから。リカも承太郎のことが大好きだった。なのにジョセフとの約束破ってあんなことして!余計に許せない。
「言っとくけど、みんなが尊敬するような男じゃあないんだからねっ!めちゃ不良だったし、学校の制服も改造とかしてたのよ!」
「マジかよぉ〜〜…いや、だが納得だぜぇ。スゴみというか威圧感というか…やるときゃやるって感じがビンビンしてくるわけだ…」
冷や汗を浮かべている億泰と同じく、康一もうんうんと納得している。
承太郎がとんでもない人物であることなんてとっくに分かっていた仗助だけが別のことを思い出していた。
「改造っていやぁ、リカ…オメーも高校の制服のスカート短くしていたよなぁ?」
「えっ?!」
「いや…よく門の前で先公に怒られてたじゃねーか。ただ雑誌に写真が載ってから辺りの高校で一時期スカートを短くすんのが流行っていたんだぜ。なぁ?」
「あ、あれはなんか、あの時はそれが可愛いと思って……やっちゃったのよ…うん…。」
「あと伊達メガネしていた時期もあったよな?」
「おっきいメガネ可愛いと思って……。」
ニヤリとからかう仗助に若気(高校生)の至りを次々暴露され、リカは小さくなりながらちらりと承太郎を盗み見た。
「……。」
承太郎は大きな手で額を押さえて頭を抱えていた。やばい呆れられてる、とリカは焦ったが、彼の考えていることは違う。
(こいつ結局そういう服しか着ねぇ…マジで俺の言うことをなんにも聞いちゃあいなかったってことか……おそらく仗助がいたから無事だったんだろうな……危なすぎるぜ……!)
そして閉じている瞼の裏では高校生のリカがスカートの短い制服を見に纏い、大きめのメガネをしていて承太郎ににこにこ手を振っていた。想像だけでめちゃくちゃ可愛い。本物と共に過ごした仗助を心底憎たらしく感じるほどに。
「………くそが…!」
「じょ、承太郎さん!だいたい何考えてるか分かります!」
付き合いの浅い康一にも感じ取れるほど分かりやすく念の込もった独り言である。
もちろんそれは仗助にも聞こえていて、意地が悪いとは分かっているものの、優越感にうぷぷと笑いを堪えるのに必死になった。
「おぉ〜っと、こりゃ失礼。わっかんねーよなぁぁ!リカの制服姿見たことないんでしたもんねぇ〜承太郎さんはぁぁ」
「おめー何ドヤってんだ??」
1人本気で混ざれていない億泰に康一は「なんで分かんないの?!」と本気で驚いた。
しかしもはや承太郎には2人は見えておらず、それどころかドヤ顔の仗助すら見えていない。
リカと離れていた間に封印していた親心、もとい兄心、もとい恋心が解放されていた。
「リカ…お前は中身ももう少し成長した方が良いようだな。まさか今だに腹出して涎垂らしながら寝てんじゃあねーだろうな」
「あああああ!!だぁぁッッ!ちっくしょぉおーーッ!!!」
いきなり椅子から立ち上がって悶え始める仗助。見たことのない小学生のリカの可愛さに打ちのめされている。
「えぇ?…そ、そんなこと……ない、もん」
(……決めた。次は布団を掛けに行く。そして短い服は破いて捨ててやるぜ)
(俺も見たい俺も見たい俺も見たい)
図星だったので赤い顔でオロオロするリカを見てジョースターの2人はご満悦だ。
ただ、仲良くなったばかりの友人2人には多少引かれているので、失ったものもそれなりにありそう。
