Thank you!(キリ番・リクエスト)
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うららかな日差しが町を温め始める午後。
リカは大変気分良くカフェテラスでティータイムを楽しんでいた。
日差しに手をかざすその人差し指には光るものが。
町歩きの最中可愛い指輪を見つけたのだ。
その指輪はプラチナで出来ており、ダイヤモンドの星が付いている。
リカは星の形がとても好きだった。
見ているといつも元気が湧いてくる。そして、大好きな人たちをいつでも思い起こすことができるから。
「珍しいものを付けているな」
リカは目立つし、自分の中ではいつも光り輝いているように感じる。
だからブチャラティにとって町でリカを見つけるのはそれほど難しいことではなかった。組織の任務や住人からの依頼がないとき、町の見回りをしながら彼女の好きな場所に目を配るのだ。もし彼女がそこにいたら、運命的なものを感じてやめられない。
「可愛いでしょ?プラチナのリングにダイヤの星が付いてるの」
「……。」
そんなに高級な意匠の指輪だったら、誰かにもらったとかかもしれない。
一瞬でそれが頭をよぎったブチャラティの顔が曇った。リカは学校にも行っているし、ブチャラティの知らない友人たちがいることも知っている。だが、その中に高価な指輪を送ってリカもそれを身に付けるような相手がいるのは心が拒絶してしまう。人生を組織に捧げたブチャラティだが、リカの存在は彼に2人の幸せな生活を夢見させるほどには大きくなっていた。
「良さそうな指輪じゃあないか。…どこのものだい?」
「そこの雑貨屋さんで買ったの」
「……ああ、自分で?」
「1500円だよ」
ブチャラティがきょとんと目を丸くしたのでリカはおかしくって笑ってしまった。ブチャラティはというと、リカに騙されたなんてことはどうでも良くて、ただ誰か他の男からの贈り物でなくて良かったと胸を撫で下ろしただけだった。安心からの笑顔だった。
「そりゃあ……偽物だな。」
「偽物なの」
悪びれる様子もないリカと顔を見合わせて同時にくすくすと笑った。
「でもいつか、本当にそういう指輪が欲しいなぁ。私、星大好きなんだぁ」
イミテーションの指輪が輝く手を撫でて物思いにふけるリカはいつもより大人っぽく見えた。
俺が指輪を買えないなんてことは決してない。ただ今は、まだその時じゃあないだけだ。俺に勇気がないわけでは……。
ブチャラティはリカから目を離せないままごくりと息を詰めた。時折り見せるそのミステリアスな表情がまた魅惑的だった。
「ほんとに可愛い〜〜っ!こんな可愛い指輪見つけちゃったら、今日は良いことありそう!」
じゃじゃーん!とでも言いたげに両手を広げるリカに脱力する。無邪気さと色気のアンバランスに振り回されて、こっちはどうにかなりそうなんだが。
「ブチャラティも、あとで一緒に雑貨屋さん行ってみる?!色々置いてたよ!ん??」
はしゃぐリカの足に妙な感触が。
テーブルの下を覗くと、1匹の野良猫がリカの足を踏んづけて悠々と歩き去って行った。
顔を上げたら大きめの飛ぶ虫が近づいてきて反射的に顔を隠し、目を開けたらちょうどテーブルのすぐ近くのタイルに鳥のフンが落ちた。
「………。」
「…『今日は良いことありそう』……だって?」
連続する不快な出来事にブチャラティはちょっと本気で引いている。
そして極め付け。
「お水をお持ちしました…あっ!!」
ブチャラティにメニューと水を持ってきたウェイターがタイルの出っ張りにつまづいて、持っていたグラスが揺れた。
そしてその水が、ばしゃんとリカの手にかかったのだ。
「す、すぐにタオルをお持ちいたしますっ!」
「いや…いいよ。持っているから」
唖然とするリカをよそにブチャラティがすぐさま持っていたハンカチで彼女の手を拭いてやったから、ウェイターは「申し訳ございません。」と去っていった。
「嘘でしょ…もしかしてこれ、呪いの指輪…?!」
指輪というか、星に乗り移ったジョースター家の呪いなのかもしれない。そんなわけないけど。
背中にぞくっとしたものを感じたリカは思わず礼を言いつつもブチャラティから手を引いてちょっと振った。
そうしたら、ついに指輪はリカの指から離れ、床に落ちてころころとブチャラティの方に転がってきた。取りきれていなかった水滴でリングが指から滑ったのだろう。
「うわぁぁ、どっか行った!」
「ここにあるぞ」
慌てて手を伸ばすリカよりブチャラティが椅子から降りて拾う方が早い。
服で指輪を少し拭いて顔を上げたらリカの手があったので、ブチャラティはごく自然にその手を取った。
「サイズが合っていないんだな…。リカの指は、細いから……」
そう。自分に比べたら、なんて細くて、白くて、美しいんだろう。真っ直ぐ伸びた薄桃色の爪の先から今にも花が咲き綻びそうだ。
そして触ると滑らかでもっと愛でたくなる。
ブチャラティはそういう欲をぐっと堪えて指輪をリカに返した。せめて少しは分かってもらいたいものだと思い、指輪を直接指にはめてやった。
「……あ、あの……、…ブチャラティ。」
「?」
リカの小さな声にやっと気付いて我に帰る。
なんだ?テラスが妙な雰囲気だな。
頬を押さえて驚く女性、にこにことこっちを見守る老婦人、黄色い声を上げている者もいる。
周りの世界を思い出してようやく気付いた。
「あっ!!」
ブチャラティはリカの薬指に指輪をはめていたのだ。完全に無意識だった。
無意識に、リカの足元に膝をついて手を取り、彼女の薬指に指輪を贈った。そりゃあ周りが色めき立つはずである。
「もー!変なイタズラしないでよねー」
周りに聞こえるように笑って誤魔化すリカだが、顔は真っ赤になっている。
もちろんブチャラティだって指輪を薬指に付けるのがどういうことかは分かっているので、すぐにリカから手を離した。
「す、すまない!間違っ」
……ってもいないな。
ブチャラティにしては珍しく言葉を飲み込み、次に何を言えば良いのか思い付かない。
だってもし、自分がリカに指輪を贈るなら。
それを付けてやるのは薬指が良いのだから。
彼女が顔を赤くしているのが、ただ照れているだけじゃあなく、相手が自分だからだといいのだが……。
「ああびっくりした。王子様はのりくんだけで充分だよ」
「……誰だそれ」
「え?……近所のお兄さん」
「やれやれ。本当に…登場人物が多いな……」
リカは頬を染めたまま、指輪を人差し指に付け直した。
ブチャラティって、いつも紳士ですごく頼れるけど、時々信じられないぐらい天然だよね。
でも今回は自分が間違っちゃった自覚があるみたい。椅子に戻ったらつまんなさそうに頬杖付いてお店の向こうを眺めてる。
しかしその横顔がリカと同じようにいつもより赤く染まっていたので、意外だけどちょっと可愛いなんて思ったり。(普段は落ち着きすぎてて年相応に見えないもんね。)
「なぁ、リカ」
「なぁに?」
「さっきの。…『良いこと』が起きたってことでいいよな?それまでのことと比べたら、全然、悪くはないと思う」
全然違う方向を見ながらぶっきらぼうに言うものだから、リカは思わず笑ってしまった。なんだか言い訳のタイミングを失って、意地張ってる子供みたいだったから。
リカは意地悪そうな笑みを浮かべたまま何も言わない。わざとだ。
だって、間違って指輪を薬指にはめるなんて。
「ブチャラティ、好きな人でもいるの?」
「!?!」
もはやショックを通り越して呆れる。
ブチャラティは念を込めてしばらくリカをじっとりと睨んだあとで、ようやくテーブルに置かれたメニュー表を開いたのだった。
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