Thank you!(キリ番・リクエスト)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私が杜王町からびゅびゅんと1938年のニューヨークにタイムスリップしてしばらく。
この現象が誰かのスタンド攻撃なのか、私のダークネスの暴走なのか……何もわからないまま、私は再びジョースター家の戦いに巻き込まれることになった。
「おいおい、どーしたリカ?むすっと頬杖なんかついちゃって〜。このジョセフ・ジョースターのハンサム顔が見れなくなってそんなに残念か?んん??」
現代であんなにあんなに憧れていた白黒の写真のイケメンがリアルで私の顔を楽しそうに覗き込んでる。立体カラーの青年ジョセフはやっぱり満点のイケメンだ。
「ううん。顔半分隠れてるぐらいがちょうどいいかな…」
「ちょいちょいちょい!それってどーいう意味?!」
過去に戻って途方に暮れてた私を拾ってくれたのは、未来と同じでやっぱりジョセフだった。
私に身寄りがないことを知って依頼、ずっと一緒にいてくれるし、なんなら未来のジョセフ以上にかまい倒してくれている。
「俺の顔なんざ見たくねぇってか?それとも……やはりまぶしすぎるか…この俺の存在が……」
なんやかんや石仮面を巡る戦いが始まって、私が特殊能力(ダークネス)を持ってることやウィンチェスターの血筋であることがばれて…ちょうどもう引き返せないなぁって悩んでたとこ。ジョセフも波紋の呼吸法の修行でがっつりイカついマスク生活が始まって、がんばってるからほっとけないし…。
「あのね、ジョセフ。信じてもらえないかもしれないけど、私本当はここに存在しない人間なの」
「ほほぅ」
何回も説明してる。ジョセフはその度に中途半端ににやにやしながら適当に返事をしてくる。絶対信じてないよね。
「いつか、元の世界に帰るんだからね。私落ちてた猫とかじゃないんだから。寝起きにほっぺにチューしたり、羽交い締めにしてすりすりしたり、どこに行くにも首ねっこつかまえて連行したり……しつこいの、やめてほしいの。そんなの全部、意味ないんだから」
「………なぁ俺、そんなにしつこい?」
「しつこすぎるな」
先に起きていたシーザーがお上品に朝ごはんをもぐもぐしながら咎めるみたいに低くつぶやいた。アンニュイにため息をつく姿が色っぽい。
「柱の男たちを止めたら帰るからね!」
「帰るって……どこにだよ?」
思い切り顔をしかめてジョセフが私を見つめてくる。その表情を見たら、不機嫌そうに眉間にしわを寄せてる承太郎の姿と重なって見えた。
ひどい。未来でも私と承太郎の居場所を引き離したのに、今度は時代まで離れ離れにするの。
ジョセフなんて過保護すぎて嫌い。
「なぁリカ。リサリサの言うように、ジョースターとウィンチェスターの血筋の間には特別な何かがあるぜ。お前と出会った時ピンときたんだ。特別な…運命的な何かを感じたんだよ。つまり、あれだ……一緒にいりゃあ、とてつもなく…調子がいいッ。ツイてる!ってことだ。お前も帰るとこなんてないんだろ?どのみち、お前の力はやつらに狙われてんだ…一緒にいねーと…危険が増すだけだぜ」
一緒に一緒にって……何言ってんの。
私は帰りたいんだってば。杜王町に……帰っても、承太郎がいるわけじゃないけど…。
それに、ジョセフにはスージーさんがいるじゃない。それこそ2人が一緒にいないと、ホリーさんも承太郎も。
「な、なんだよ」
悲しくなってきて睨みあげたらジョセフはちょっと狼狽えたみたいに体をのけぞらせた。
涙目になっていた私は思わず椅子から立ち上がり、可愛さ余って憎さなんとやらのジョセフに背を向ける。
「ジョセフなんて一生そのマスクしてたらいいのよ!」
「はぁ?!て、てめー!なんちゅーいじわるなことを!」
「ちょっと!一体何事なの?!」
やってきたリサリサの声を背中で聞きながら、私は走って自分の部屋に戻った。
「仗助も心配してるかなぁ…」
ベッドでふて寝しながらさらに悩む。
柱の男たちを倒すのにはもちろん協力するけど、そもそも私がいなくても倒せる…よね?
ジョセフが片腕を犠牲にして勝ったんだよね。
ほんと、何のためにここにいるのよ、私。
ていうか、未来で私って急に消えたことになってる?!まさか最初からいないことになってたり…!?
もしも本当にこのまま、この時代から帰れなかったら……。
承太郎にものりくんにもポルナレフにも会えなくて、おじいちゃんジョセフにも会えなくて。
杜王町の友達や仗助もみんな、私のこと忘れてたら…!
「……ここでシーザーと結婚するしかない…!」
「にゃにぃ?!!」
なんて冗談だけど。
そう自分でつっこみを入れる前に部屋の外からジョセフの大声が聞こえてきた。
「平気かいリカ…。苦労するよなこういう無神経なやつに付き纏われちゃあ……朝食を部屋に持ってこようか?」
ドアを開けて颯爽と現れたシーザーがベッド脇に膝をついて私の背中をよしよししてくれる。
シーザーって女たらしだけど絶対奥さんにつくすタイプだわ…紳士的だし。
彼の後ろではジョセフが「オーマイガー」と言わんばかりに頭を抱えていた。
「いいの…。少し休んだら食べに戻るから」
「それならドリンクだけでも持ってこよう。事情が事情だ。参るのも無理ないさ」
ぽんぽん背中を押されてちょっと元気が出た。
さっきより体を起こして立ち上がったシーザーを見送る。
「ありがとう。優しくしてくれて」
「俺が旦那になったらこんなもんじゃないぞ」
ふふんと笑ってからジョセフを肘でこづいてシーザーは去って行った。イケメン……いいな、シーザーの未来のお嫁さん……。
「あっ、あっ、あのヤロぉ〜〜!!今のはほとんど尻だ!リカの尻を叩いていきやがった!とんだムッツリ野郎だぜぇぇ〜〜許さん!!」
わなわなしてるジョセフを見てマジで呆れた。
半目でじとっと見てたら、ジョセフはちょっと目を泳がせて狼狽えてから、結局ベッドの脇にどっかりと座り込んできた。
「可愛い可愛いリカちゃんよ、そんなに俺のことが嫌いかい?」
「………。」
両手を私の足の外側についてぐっと身を乗り出してくる。その目はもうふざけてなんかなくて、近づく距離に私は反射的にシーツをぎゅっと手繰り寄せて顔を半分隠していた。
綺麗なブルーの瞳に映る私は複雑そうな困った顔をしてる。なんでこんなに困ってるのかって…ジョセフのこと大好きだもん、私。
「…いつも、ふざけて私のことからかってくるから…」
「お前が帰る帰るって言うから…不安になるのを隠すためだって言ったら?」
いつの間にかベッドに乗り上げて、ジョセフはさらに私の目の前に詰め寄ってきている。
そんなに上から来られたら、逃げられないんだけど…。
ジョセフが何か悟ったような諦めたような、いつになく真剣な顔をしてるから。胸が締め上げられるような心地だった。
「……ジョセフも不安なの?」
「これからバケモンどもと殺すか殺されるかの戦いをおっ始めようとしているんだぜ。不安にならない奴なんているか?」
「うん…」
「その前にこの変てこマスクで息が止まりそうだし、修行も死ぬほどきついし…」
「しんどいね」
「こうして開き直っちゃあいるが、お前も心臓に毒のピアスとか仕込まれてみ?マジで生きてる心地なんてしねぇから」
「……。(そうだった…)」
「なのにお前は1日2回は元の世界に帰りたいって話をするじゃねぇか。俺は……、俺はこんなに、お前といたらそれだけでめちゃくちゃがんばれるってーのに!毒ピアスのことも忘れてられるし、奴らにだって勝てる気がしてくるんだよ!だからっ」
手振りを交えて訴えていたジョセフは結局、私をぎゅぎゅっと抱きしめて落ち着いた。
匂いとか力加減とか未来のジョセフと同じで、私も結局安心して大人しくその腕の中に収まっている。卑怯なの。
「いなくなるなんて…意地悪な話、すんなよ。どこから来たとかどうだっていいから。今ここにお前がいることが重要なんだ。俺にとっては何よりもな」
「……。」
「リカ……お前は次に…、『わかった』って言う」
締めつける力が強くなる。ジョセフは少しだけ震えてるみたいだった。
私だって、未来で私を救ってくれたジョセフのこと、助けたいんだよ。
相手の次のセリフ言い当てるジョセフの特技…。でも、今回だけはお願いされてるみたいに感じてすぐに声が出なかった。
「………わかっ」
「おいこの変態発情野郎」
目の前でばっしゃんとジョセフの後頭部に液体がかかった。
「のわぁあ!!ちべてぇぇえ!!?」
コップの水を上からジョセフにぶっかけたのは、戻ってきたシーザーだった。すぐに私を離して頭を抱えてもだえるジョセフを冷め切った目で観察してる。
危ない危ない…雰囲気で「わかった」って返事しちゃうとこだった…。
「ジョセフ貴様……リカのことに関しては本当に…見損なうことしかやらないな」
シーザーはため息つきながら、「平気か?」って私にちょっと飛んだ水をハンカチで払ってくれた。
「シーザー…ありがと…」
「このぐらい当然だ。リサリサ先生にもこの馬鹿が君を襲わないよう見張れと言われているし」
「とか言っちゃってぇえ〜!本当は羨ましいくせにぃ。相思相愛の俺たちのことがぁ〜!」
「相思相愛?」
「(違う違う違う違う)」
首をぶんぶん横に振って拒否したら、シーザーはすごく…哀れむような生温かい視線をジョセフに送っていた。
「哀れなやつだな」
本当に思っていたようだ。
その後シーザーの態度にジョセフがキレて、シーザーもキレ返していつもの喧嘩が始まったので、私は1人で朝ごはんを食べに戻ったのだった。
…元の時代に帰りたいって話は、少し控えようと思った。
1/1ページ