A rabbit in magicalland♣︎
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「ああああのあのレナさんっっっ!!わわ、私はアドラ寮のレモン・アーヴィンと申しますっ!!!大変恐縮ではありますが今度の日曜日!おひおひお暇だったりしませんか!?!?」
この間のお絵描きの授業で叫んでたオレンジリボンの女の子が勢い良く話しかけてきた。
「日曜日……は、にんじん畑のお世話に」
「よかったぁぁぁ!!!ちょーーーど!!魔獣博物館のチケットが一枚余ってまして!!!良ければ!!出来れば!絶対一緒に行ってみませんか?!?!」
レモンちゃん…真っ赤な顔して可愛いな。
彼女の後ろでは仲良しのマッシュくんたちが揃い踏みだった。フィンくんとドットくんは身を乗り出してこっちに注目してるし、ランスくんはちらちらこっちを見ながら机を指でトントン叩いている。
そしてマッシュくんは。
「あば、あばばばばば……」
何故か白目で泡を吹いていた。
その肩をドット君が勢いよく叩く。
「おらマッシュ!気合い入れろぉ!福引で当たった6枚綴りのチケットでレナちゃん誘うっつったのはお前だろーが!!」
「任せてくださいマッシュくん!!私が必ずレナさんを連れ出してみせます!!そして2人の甘酸っぱい胸キュンブギウギラブストーリーで私のハートをつらぬいてくださいよぉ!!」
「レナちゃん……誘う……レナちゃん……誘う………」
……なんか、カオスすぎて「行く」って言ってしまった。フィンくんが真顔で「ごめん」って呟いてた。
「というわけで、日曜日うさぎのお世話ついでににんじんにお水あげてくれませんか?」
「魔獣博物館…だと?」
放課後レインさんのところにお邪魔してなりゆきを説明したら、やっぱり不機嫌そうな顔された。
「…あれか。子供騙しの魔法で古代魔獣の剥製だとか骨だとかが動いたり飛び出たりするやつか」
「そうなんですか?行ったことないからわかんないけど……楽しそうですね」
「お前なんで最近マッシュとつるんでるんだ。よりによって」
「お友達になったんです。いいでしょ?」
(まぁ……フィンもいるから問題は起きないだろうが……)
「?」
「お前魔獣の博物館なんか行って大丈夫なのか。縮み上がってぶるぶる震えて帰ってくるのが目に浮かぶ」
「平気ですよお子様向けの博物館なんて!」
失礼な人ですね!
「きゃああああ吠えたぁぁあ!!?こっち見てるぅ!食べられちゃうぅぅうう!!!」
「おいレナ………落ち着け。ただの立体映像だ」
日曜日。意気揚々とみんなと博物館にやってきた私は、早々にランスくんの背中にひっついてぶるぶる縮み上がっていた。
「いやいや、どうしたランス?何故お前はレナちゃんを当然のごとく呼び捨てに?そして何故レナちゃんは男気溢れる俺ではなくお前の背中にくっついてんだ?あ?」
「うちは親同士が知り合いだったんでな。幼い頃はよく一緒にすごしていたんだ。故にレナが俺を頼るのは当然のことだ」
「ハイ!イケメン許すまじ!!」
「僻みの塊だなお前は」
「うるせぇぇえ!!こーなったらぁ、スタンプラリーでてめぇをけちょんけちょんに負かしてやっからよぉぉ!!ツラ貸せやぁぁ!!」
「お前に貸すものなど何もない」
ランスくんは私にアンナちゃんグッズをお守り代わりだって持たせてくれた。そして仲良しスタンプラリー競争を始めるためにドットくんを追いかけてどこかに消えてしまった。
「……そんな…知らなかった……ランスくんとレナちゃんが知り合いだったなんて……」
「元気出しなよマッシュくん」
「なんか腹立つな」
「マッシュくん!!?」
斜め下を向いてぶつぶつ言ってるマッシュくんの相手をするフィンくん。の隣で私もしゃがみ込んで息を整える。
「レナちゃんも、大丈夫?…兄様にあいつ絶対怯えて逃げ帰るぞって言われてはいたんだけど……ほんとに怖がりだったんだね」
「あの、すみません……私も安易に誘ってしまって…」
しょんぼりするフィンくんとレモンちゃんに罪悪感が湧き上がってきた。せっかく出来たお友達と、初めて街に遊びに来たのに。このままじゃみんな楽しくないだろうし、もう誘ってくれなくなるかもしれない。
私は持っていたアンナちゃんグッズをぎゅっとしてから立ち上がった。
「ご、ごめんね!初めて来たからちょっとびっくりしちゃって……」
笑ってごまかしてる間に、フィンくんとレモンちゃんはきょろきょろと辺りを見回してからお互いの目を合わせた。
「レナさん!あそこならどうですか?古代の海の様子が見れるらしいですよ!水族館みたいでゆっくりできそうじゃないですか?」
「大きい音とかしないだろうしいいかもね。みんなで行けば大丈夫だよ」
「…ほんとだ」
レモンちゃんが指さす先にはブルーにライトアップされた入り口が。なんだか綺麗な感じだし、いいかも。
「……はい」
マッシュくんが差し出してくれた手を取って、私はみんなと歩き始めた。
「……あの、…マッシュくん」
「何?やっぱり怖い?」
「ううん…涼しいなって思って」
「確かに」
海コーナーに入ってみたら、中は洞窟みたいになってて案外暗くて、やっぱりちょっと不安だった。
でも、そんなことよりマッシュくんがずっと私の手を握って離さないことの方が気になる。
手が熱いし、けっこうしっかり掴まれてるからちょっと締め付けられていた。
綺麗な手だけど、ごつごつしてて大きい。男の人の手。
「…マッシュくん。ちょっと待ってね。アンナちゃんグッズ持ったままだから…」
なんだか急に照れてしまって、立ち止まって繋がった手を引いた。下を向いたままグッズを服のいろんなポッケになおしてる間、手を離したマッシュくんは斜め上からじっと私を見ていた。
「終わり?」
「うん」
「はい」
当然のごとく再び手を伸ばしてくるマッシュくんに正直気圧されて、半歩ほど後ずさり。
こん、と何かが足に当たる。
「どうかした?」
「レインさんにもらったにんじん落としたのかも」
「…にんじんもらってるの?」
「うん。おやつにって。高級赤にんじんなんだよ」
「知らなかった」
しゃがむ途中で腕を掴まれた。手を繋いでたときよりだいぶ強い力で驚く。顔を上げたら、マッシュくんの金色の瞳と目が合った。薄暗い中で静かだけど強いその目だけが煌々と光っていて、ぞくってして身動きが取れなくなる。
「…知らないことばっかりだ」
「なに、が」
「僕、嫌みたい。レナちゃんのこと…知らないのが」
「???」
なんだか、今のマッシュくん…怖いな。
腕が痛くて身を引こうとしたけど、私は逆に思いっきりマッシュくんの腕に抱きついてしまった。
急に辺りが薄暗いのからほぼ真っ暗に暗転して、次には一面海の濃い色になってしまったからだ。360度、足元まで海の中みたい。
そして次々と海中の魔獣たちが私たちの周りを飛び回った。これ、たぶん……古代の深海の映像…みたいな……。
「ご、ごめん。ごめんねマッシュくん……わ、私、ほんとに無理かも……っ」
暗さもだけど、海の中にいるみたいなのも、魔獣の見た目も近付いてくる様子も全てが怖すぎて、勝手に足が震え始めた。マッシュくんにしがみついてる両腕も。
「ほんとにごめん……!目、開けられなくて……動けない……」
だってこんなの、絶対食べられちゃうもん。
「……怖い…っ」
「怖くないでしょ。僕がいるのに」
「え」
マッシュくんは私の腰に腕を回してぎゅっと引き寄せて、反対の拳を握りしめた。体の半分以上がマッシュくんに包まれていて、力強い心臓の音が伝わってくる。
「こんなんグーパン一撃ですよ」
「やめて博物館壊れちゃう!!」
頼もしすぎて勝手に目が開いた。
マッシュくんは何が駄目なのかわからないみたいなちょっと残念そうな顔で私を見下ろしている。近い。
「…仕方ないなぁもう」
「きゃあ!」
もはやにんじんを探すどころではない。
マッシュくんはすぐさま私を横向きに抱き抱えると、ばびゅんと文字通り目にも止まらぬ速さで海コーナーを飛び出した。
シュタ、と静止したのは通路の一画。そこには先に出ていたのであろうフィンくんとレモンちゃん、そしてスタンプラリー勝負を終えたランスくんとドットくんがいた。
「ほら」
顔を上げたら、明るい中でマッシュくんが優しい微笑みで私を見つめていた。
「怖くなかったでしょ」
「……なかったかも」
嬉しくなってきて顔がにやける。甘んじて抱っこされたままになっていたら、ふとみんなと目が合った。
レモンちゃんの顔が瞬時に真っ赤になり、鼻息が聞こえてくるぐらい荒い。
「いやぁぁああぁ!!!ケダモノぉぉーーーーっ!!?!」
そこ!危ないことしないで!あと、博物館では静かに!ってスタッフさんに注意されてしまった。
「とんでもないことしてしもうた……!!!」
にんじんは後から探してもらった。子供が落とし物係に届けてくれていたらしい。おいしい高級赤にんじんをふきふきしながら戻ってきたら、マッシュくんが座って頭を抱えていて、フィンくんが一生懸命それをなだめていた。