A rabbit in magicalland♣︎
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「なんか……最近マッシュくんの様子がおかしいんだけど…」
きっかけはフィンのささいな一言だった。
マッシュがまた学校の一部を破壊してしまったので校長に呼び出されている間のこと。
「様子がおかしいのはいつものことじゃねーか」
「いや……なんかさ……人がシュークリームに見えてるみたいなんだ…」
「は?」
予想の斜め上をいく話にドットが顔をしかめた。代わりにパスを拾ったのはさらに隣に座ってポーカーフェイスをたもったままのランスである。
「もしかしてそれは…レナ・ラパンのことか?」
「そう。ランスくんも知ってたんだ…」
「やたら見ているからな。一昨日は『前世がシュークリームなのかな…』とか、『うまそ…』とかつぶやいていたぞ」
「怖っ」
自分で自分を抱きしめて震えるフィン。
とたんにドットがすごい勢いで身を乗り出してきた。
「待て待て待て!レナちゃんはお前…!ヤバいってぇ!魔法が苦手な上休みがちで魔法が全てのこの世界で劣等生のレッテル貼られてんのに、その可愛さと控えめな態度でじわじわファンを増やし、ついには隠れファンクラブまで出来てしまったという伝説の美少女だぞ!!なんでも魔法局にも熱心なファンがいるとか…!マッシュの奴ただでさえ色んな奴らに目ぇ付けられてんのに、レナちゃんに手を出すのはぜっっったいにヤバい!!つーか、許さん!!レナちゃんはみんなのもんだぞ!!」
「詳しすぎるよドットくん!?」
フィンのツッコミもむなしく、メラメラと色んな欲を最もたぎらせている者がいた。
「キェェェェエエ!!!!なんてこと!!!!!」
目玉をひん剥いて顔を掻きむしるレモン。さながらホラー映画のような光景に全員が押し黙ったのだった。
「………うぅ〜ん……!」
ただいま魔力操作の訓練をしています。
今日の課題は、魔力でペンをコントロールして絵を描くこと。
テーマは『好きな物』。
私はもちろん、体半分はある大きなキャンバスにでかでかにんじんを描こうとしていた。
「んん〜〜……!」
杖を持つ手が震える…!
私の色鉛筆はぷるぷる浮いてはいるものの、ふらふらしていてまともにキャンバスに触れてすらくれないのだ。
こんなにがんばって魔力を込めてる(つもり)のに…!
「見ろよあんなに震えて小動物みたいだ……レナちゃん………かわゆす★」
「ふざけんな!!あんなもん全部計算なんだよ計算んんん!!ああいうのを世間ではあざといっていうの!!悪魔!悪魔よぉぉお!!」
「確かにレナちゃんは…俺にとっての小悪魔ちゃんだぜ★」
びっくりした…頭赤い男の子がオレンジリボンの可愛い女の子にぶん殴られた……。
肩をすくめてちらりと盗み見てたけど、女の子の目付きが怖すぎてすぐにくるりとキャンバスに向き直った。
なんだかもう、やる気なくなっちゃったな。にんじん食べたい。
「…やーめたっ」
そして私は普通に鉛筆を持ってしゃかしゃかにんじんを描き始めた。そうしたら、隣からも私のと同じしゃかしゃか音が聞こえているのに気が付いた。
隣より少し後ろにマッシュくんがいた。私と同じく普通に手で鉛筆持って描いていた。
ていうか、最初っからこの並びだったっけ…?
「マッシュくん何描いてるの?」
「ええと、これは」
「シュークリーム?」
「うん」
相変わらず淡々としてる彼のキャンバスを覗き込む。シュークリームはシュークリームだけど、これって…。
「うさ耳生えてるね」
「なんか生えた…」
「うさぎのこと考えてたの?」
「なんか…レナちゃん見てたらこうなってしまった…」
うさ耳の生えたファンシーなシュークリームを前にマッシュくんはなんだか落ち込んでいた。
「レナちゃんは何描いてるの」
「でかでかにんじん」
「にんじん好きなんだね」
「うん。大好き」
「僕も」
「え?」
「シュークリーム大好き」
「うん」
会うたびににんじん好きか聞いてくるよね、マッシュくんって。
「作るのも上手だもんね。またにんじんシュークリーム食べたいなぁ」
「がってん」
安請け合いのマッシュくんに笑ってから私はまた前を向いた。
絵を整えようと思って消しゴムを取ったら、キャンバスにひっかかってころんと床に転がっていった。
「「あ」」
マッシュくんの席までころころして倒れた消しゴムに気付いて、マッシュくんがすぐに椅子から降りて手を伸ばしてくれた。
私も慌ててぴょんと椅子から降りて手を伸ばした。
そしたら思いっきりマッシュくんの手を握りしめてしまった。
「ごめっ、な……さい……?」
慌てて離れようとしたら、指をぎゅっと掴まれて動けなかった。
指先だけなのに、そんなに強い力じゃないのに、やけに熱く感じてどんどん全部の神経が指先に集まってくみたいだった。
「あの、マッシュくん」
「……。」
「あ、あの…消しゴム…」
「…。」
マッシュくんはひたすら私たちの重なった手を見つめていて、あまりにも反応がないからちょっと怖いぐらいで。
「マッシュくん!!消しゴム!!レナちゃんのぉ!!」
すっごい赤い顔でマッシュくんの隣にいたフィンくんが盛大につっこんでくれた。ようやくはっと目をちょっと見開いて、マッシュくんが私の指を離す。顔を上げて私と目を合わせたら、きゅうに体半分ずざって後ずさった。
「えと、あの、ち、違うんです……消しゴムを、拾おうとしただけで……そ、そんなつもりは」
「そ、そんなつもり?」
「手を繋いでしもうた…!」
「気にしないで。私の方こそごめんね?」
「あの、これ、消しゴム…デス」
「ありがとう」
「うす」
無事に消しゴムを受け取ってまた席に戻った。
ちらっと後ろを覗き見たら、マッシュくんは私と触れ合った手を反対の手でぎゅうぅ、と握りしめていた。
照れてるのかな?なんか…可愛い。
「て……ッ、てぇてぇっっ!!?」
後ろの方で女の子の甲高い声がした。