A rabbit in magicalland♣︎
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(……なんか、シュークリームの匂いする)
「えっ。マッシュくんどこ行くの?!」
マッシュは大好きな香りに誘われるがまま、廊下を歩き始めた。
とある部屋から出てきたばかりの少女のところに辿り着き、ふんふんと彼女の周りの匂いを嗅いでいる。
「………誰?」
(誰この人…!誰この人ぉぉ!?)
怖すぎますぅ……!!
突然すたすた歩いてきたかと思ったら周りをふんふんされて怪訝そうに誰って聞かれるなんて…!
……いや、なんか見たことある気が……はっ!この人マッシュくん!マッシュ・バーンデッドだ!魔法が使えなくて有名な、あの……。ていうか世界を救った英雄の、あの……。
「わ、私に何かご用ですか…?」
「いや、シュークリームの匂いがするなと思って」
「シュークリーム?」
「気付いたらここに」
「私、シュークリームは持ってない…」
「そっか。………突然ごめんなさい」
「人参ならあるけど…」
がさっと隠し持っていた葉っぱ付き人参を全部出した(6本ある)。マッシュくんは「何故…」とつぶやいてちょっと引いている。せっかく謝ってくれたのに申し訳なかったかな。
「突然ごめんなさい。人参だけ持ってるなんてびっくりするよね…」
「……好きなの?人参…」
「うん。大好き」
「…そっか。気持ちわかるよ」
「マッシュくんはシュークリームが好きなの?」
「うん……えっと、うん」
心なしかマッシュくんは目を泳がせている。ほっぺがちょっと赤くなってて可愛かった。
「なんで僕の名前」
「マッシュくん有名人だから」
「…こりゃ困りましたな」
「でも、なんで私からシュークリームの匂いしたんだろうね?なんか勘違いさせてごめんね」
「…君はもしかしてシュークリーム?」
そんなわけない。
真顔でこてんと頭を傾けて聞いてくるから、おかしくなって笑っちゃった。
「そうだったらよかったけど…申し訳ないから人参おすそわけ」
シュークリームもおいしいけど、人参もすっごく甘くておいしいよ。
そう言って一本手渡した。マッシュくんは素直に受け取ってローブになおしてくれた。
「あ、そろそろ行かなきゃ。じゃあまたね。マッシュくん」
「あ、はい」
ひらひら手を振ってその場を離れた。しばらく背中にマッシュくんの視線を感じてた。
「ねぇマッシュくん。何してんの?何してんのマッシュくん!」
フィンの必死の問いかけもマッシュには聞こえていなかった。
ひたすらに人参をすりおろしているからだ。
頭の中ではさきほどの少女の「(人参)大好き」の言葉と愛らしい笑顔がぐるぐるしている。
フィンは思った。絶対シュークリーム作ってる!と…。
そしてしばらくして大きなシュークリームが出来上がった。
「…っは!思わず人参シュークリームを作ってしまった……何故…」
「いやこっちが聞きたいよぉぉ!」
オレンジ色の巨大シュークリームを前に怯えるフィンであった。
「………おや?」
シュークリームの香りの少女のことを考えて悶々としていたマッシュ。ふと気がつくと、教室の隅にその子がいるではないか。
突然びしっと体が緊張し、隣のフィンにギギギ…と手を伸ばした。
「フィンくん、あの端の席のシュークリームな子は一体」
「(シュークリームな子?)ああ…レナちゃんだよ。全然学校来てなかったけど、復帰したんだね」
「…なんで来てなかったの?」
「たぶん、魔法があんまり得意じゃなくて…結構浮いてたから……」
「僕と同じですな」
「すごく可愛いから余計目立っちゃってたんだよね…辛かったと思うよ」
「そっか」
すごくもやもやした。なんであの子のこと気付いてあげられなかったんだろう。
僕と同じだねって元気付けてあげたかった。
そしたら学校休まなくても良かったかもしれないのに……。
「あげる」
「マッシュくん」
休み時間になったら私の席まで歩いてきたマッシュくんが、大きなオレンジ色のシュークリームを差し出してくれた。
スイカぐらい大きいしすっごいオレンジ色。思わず笑顔になっちゃう。
「人参の色だぁ」
「これがいわゆる人参シュークリーム」
それをローブに収納してるのがすごいよね。
「くれるの?」
「あげる」
「ありがとう」
シュークリームに混ざって、人参の甘い匂いがする。私はそれに吸い寄せられて、パクッとかじった。ペロッと唇のクリームを舐め取る。マッシュくんの手がちょっと震えた。
「すっごくおいしい」
「全部あげる」
ぐいっとマッシュくんがシュークリームを持ったままぐいぐい差し出してくるので、近づいてくるままぱくぱく食べた。
「おいしい?」
「うん」
「人参好きなの?」
「大好き」
「……。」
半分食べたけどさすがに大きい…。
一息ついてから、私はマッシュくんから残りのシュークリームを受け取った。そしてそれをマッシュくんに差し出した。
「おいしいから、おすそわけ」
「…いいの?」
「?…いらない?」
持ってる両手を伸ばしてシュークリームを近づけた。マッシュくんはちょっと悩んでいたけど、ふと体勢を低くして、私が持ったままのシュークリームをかじった。一口おっきいな。
「(もっもっもっもっ)」
「おいしいでしょう?」
ごくんと飲み込んで、残っていた分もぱくって全部口に入れた。
柔らかい唇が私の人差し指を少しだけ吸い込んだ。もぐもぐ咀嚼して飲み込んだら目が合う。マッシュくんの目は優しいけどちょっと鋭い。ドキッとして急いで手を引っ込めた。
「おいしいね」
「…マッシュくんはシュークリームが好きなんだね」
「うん…僕も好き」
「(僕も?)」
「マッシュくん!!な、何が起きてるのさっきから!!?」
がしっと後ろからフィンくんに肩を掴まれて、マッシュくんは連行されて行った。
「また作るね」
宣言されて嬉しかった。また人参シュークリームが食べれるんだぁ。
にこって笑顔になって手を振った。
マッシュくんは真顔のまま手を振りかえしてくれた。