A rabbit in magicalland♣︎
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お買い物の途中で魔法局の本部の近くを通った。
いきなりボワン、と全身煙で包まれてどこかに吸い込まれていく感覚。
「はわっ!はわわわわぁ〜〜っ!??」
煙が晴れて目を開けたら、魔法局の中にいました。
「今日こそ証明してもらおう……お前の魔法がれっきとした魔法であることを」
どーんと仁王立ちのオーターさんが私の前に立ち塞がっている。なにこれ。
「あの、私の魔法はもう何回もお見せして…」
「私は認めない。お前の力は魔法にしては異端すぎる」
「そんなこと言われても」
「杖を出せ」
人の話全然聞かないし……相変わらず。
こうなったら彼の気が済むまで解放されないので、私は大人しく杖を差し出すことにした。
もふん、とオーターさんの手が持ち手にめり込む。
「何で出来ているんだこの杖は。ありえんだろう。持ち手がふわっふわのファーの杖とか」
「でも我が家ではこのスタイルなんです」
「なんて言ったか…お前の固有魔法…」
「『うさぎさん魔法』です」
…………。
………。
すっごいかき氷よりキンキンの冷たい目で見られている。
もう時間が止まったのかと思ったけど、オーターさんがメガネを押し上げたので気のせいだってわかった。
「…『うさぎさん』?うさぎ……『さん』だと?ふざけるのもいい加減にしてもらいたい。なにが『さん』だ。そんな魔法は聞いたことがない。100歩譲ってあったとしても、うさぎ魔法で充分…いや、せめてラビット魔法とか、アニマル魔法だとかいうんならまだあるのかもしれないと思えるが…いや、それでもギリギリない」
「だから私が使って」
「ふざけているのか」
よほどふざけているように見えるらしい。2回も言われてショックだ。
「魔法ではない何かなら早めに白状した方が身のためだ…マッシュ・バーンデッドのおかげで多少甘くはなったとはいえ、魔法が使えぬ者には相応の手続きが必要になったからな…それに、得体の知れない力は監視の対象となる」
「いや、だから…魔法だって言って」
「これからお前が本当に魔法を使えるかをテストする」
これはオーターさんの思うようにしか事が運ばないシステム!
そんなわけで言われるがまま、基本の基みたいな魔法を何個か試させられた。
オーターさんは顔色ひとつ変えずにそれらを見守っていた。
「へったくそめ」
私は普通の魔法がどちらかというと苦手だった。
「箒にしても生まれたての子鹿みたいな飛び方しかできていない」
「跳んだ方が速いんです…」
「まったく……では次は固有魔法を見せてもらおう」
「嫌です」
「見ないと判断できないんだが」
「けちょんけちょんに言うんでしょ、どうせ」
「そんなことはない。さすがに見慣れたんでな」
「もぉぉ」
見慣れるほどにこの抜き打ちテストを繰り返してるのに、なんで魔法かどうかジャッジしてくれないんですか?!
もうあとは早く終わらせるしかない。
私は杖を真っ直ぐ構えて集中した。
「………『うさぎさん魔法』っ!!」
瞬間光が周囲に差し込み、杖がボワンと真っ白な煙になって私を包んだ。煙が消えた後には私の服が真っ白なコスチュームに変わっている。
提灯袖に胸元の空いたトップス。ボリュームのあるミニスカートに膝上までのこれまた真っ白でタイトなロングブーツ。
頭には耳当てみたいなファーが。そこから白うさぎの細くて長い耳がピンと伸びる。
「できました!」
ぴょんとポーズを取るレナを見てオーターは思った。
(……プリティでキュアっキュアしている……)
もうマジで自分の常識が木っ端微塵になろうとしている。オーターはいったん下を向いて落ち着くために息を吐き、メガネを押し上げた。
「……レナ」
「はい」
「お前まず杖はどこにいったんだ」
「変身と共にパーツになりましたね…」
「いつも思うんだが、なんで服が変わる必要が?戦うには不向きだし、うさぎ魔法だとしてぴょんぴょん跳ねるにしても更に不向きなんじゃないのか?」
「でも、勝手にこうなるんです」
「そしてその耳はなんだ。お前はうさぎなのか?」
「違いますけど…」
「ピクピク動かすな。今はどっちの耳で聞いているんだ。その長い方は良く聞こえるのか?元の耳はどうなっている」
「…この耳当ての中にあるのやら、ないのやら……」
「ふざけるな」
「ふ、ふざけてないです」
「でやることといったらとんでもなく跳んでとんでもなく蹴るの二択だったな」
「…まぁ、そんなところです」
「到底魔法に思えない」
「なんで?!……な、なんで……あっ!あとは私が跳んだ後は肉球の残像が残るんです!魔法です!」
「認められない」
「なぁんでぇぇぇえ!!」
回数を重ねるたびに思うがらちが開かない。なぜなら目の前の神格者は非常に強靭な価値観の持ち主だからである。
(よし、逃げよう……!)
心で思った瞬間、まさに脱兎のごとくレナはその場から逃げ出した。しかしそれを見逃すオーター・マドルではない。
「あばばばばばば」
すぐに砂でぐるぐる巻きにされました。
下を見ると、杖を構えて爛々としているオーターさんが。
「逃げるということはやましいことがあるということだ…お前の身柄を拘束する」
「や、やめてくださぁい!」
「杖を預かる。人参を用意したのでそれでも食べて待っていろ」
「卑怯じゃないですか……ぜひ、いただきます!」
オーターさんはしつこいけど嫌いになれない。なぜなら抜き打ち検査のあとはおいしい人参をくれるから。
抵抗をやめてぷらんと砂にくるまれたままうなだれてたら、遠くの扉の向こうから小さく「パルチザン」って聞こえた。
ドシュドシュドシュ、と剣が飛んできて、オーターさんの砂をスパッと切断していった。
「きゃあああああああ!!?」
私の体スレスレを掠めて。
涙目で叫びながら落ちていく私を滑り込んできたレインさんが受け止めてくれた。
レインさんは怒ってオーターさんを睨み付けている。
「こいつの身柄は俺が保証すると言ったはずです…俺の許可なく連れ出すのはやめていただきたい」
「ここで人参食べる気まんまんだったぞ、そいつ…」
「知らん野郎から食い物をもらうなと言っただろうが」
「オーターさんは知らない人じゃありません!人参くれる良い人です!」
「レナを餌付けするのはやめていただきたい」
「うさぎみたく言うな」
眉間にがっつりしわ寄せて嫌そうなレインさんに、オーターさんはいつも通り「いや〜別に魔法の検査してただけやしぃ」みたいな言い訳をごにょごにょ小難しい言い回しで1人で長々喋っていた。
それを聞きながらレインさんは延々と私のウサ耳の間をしゃかしゃか撫でくりまわしているものだから、髪が絡まって焦る。
「あ、あのっ、ありがとうございます。レインさん…お砂から出してくれて……」
ぐい、とレインさんのシャツを引っ張って気を引いたらやっとこっちを向いた。
そして私たちは同時に白いコスチュームの胸元が破けているのに気付いた。
さっきのパルチザンかいぃ!
「ぐはぁっっ!!?」
レインさんは何かを吐いてぶっ倒れてしまった。彼を心配するより先に急いでうさぎさん魔法を解除して元の普通の格好に戻る私。
「アホらし」
全ての元凶のオーターさんが1番すんってなってた。