A rabbit in magicalland♣︎
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「あ、兄様」
「調子はどうだ、フィン…ずいぶん辛気くせぇ顔をしているな」
「うん…レナちゃんがすごい熱で医務室に運ばれて……」
「何だと」
ばびゅん!!!
「えっ?兄様?!兄様ーーーーっっ?!(はっや!!)」
ほんと一瞬。
一瞬だった。レイン・エイムズは弟の瞬きの間に廊下を突っ切って曲がり、見えなくなった。
(てゆーか怖っ!)
熱を出してマッシュ君に医務室にポイされました。
頭を撫でてもらって目を覚ましたら、授業始まってるのにマッシュ君は医務室の椅子で爆睡。すぐに起こして教室に帰ってもらいました。
体はだるいけど少し寝たから今すぐには寝つかないし、ぼんやり天井を眺めて時間をつぶす。
ああ、暇………
「熱が出たそうじゃないか。あんだけ人参食っておいて何故そうなる?」
……じゃなかった。
ドカァン!!!と医務室のドアを破壊して登場したレインさんにものすごくびっくり。
「……いや、人参しか食ってないせいか…?」
いつもの眉間にしわ寄せた不機嫌そうな顔で首を捻りつつ私のところまでやってきた。
「それより、どうしてドアを……」
粉砕したし。
他にも寝てる人いるのに怖がらせちゃってますよ。
「………ドア…?」
不思議そうに壊れて破片が散らばるただの穴と化したそこを見て、レインさんはやっと己の暴挙に気付いたようだった。
しばらく無言で見つめ合う。よくよく見たら肩で息をしてるし、ちょっと額に汗も浮いている。
もしかして、急いで来てくれたのかな。
そう気付いたらすごく嬉しくなった。
「…まぁいい。飲め」
「なんですかコレ!?」
ドア問題を丸っと無視して、レインさんは私に細長くてワイングラスみたいな壺みたいな怪しい緑色のドリンクを手渡してきた。ストローだけ輪っかに捻ってあるトロピカルな感じなのがさらに嫌だ。
「ちょうどキウイと人参があったんでな。ああしてこうしてスムージーにしてきてやった」
「な、なんだ……スムージー…」
呪いの激薬かと思った…。
受け取ったら確かに爽やかな甘めの良い匂い。
「飲め」
「いただきます」
2回も言うんだからよっぽど飲んでほしいんでしょう。
ちゅうちゅう飲んだら冷たくて喉越しも良くてとんでもなく美味しく感じた。
「……。(ちゅうちゅう)」
「………。」
「……。(ちゅうちゅう)」
「…………。」
とんでもなく見てくる。
「んっ」
「?!変な声出すな」
「ふぁい…(もぐもぐ)」
ところどころ大きな果肉が入っているようだ。
……これパルチザンで粉微塵にしたってこと…?
そんなことを想像しながらちゅうちゅうしてる間に、レインさんはさっきまでマッシュくんが座ってた椅子に座って私の額に触った。
そして深々とため息をついて真下を向いてしまった。
「…俺のせいか……人参ばかり食わせていたから…」
「え、ち、違いますよ!これはキック力を鍛えるために川で泳いだからです!」
「は?」
離れた手の後ろに見えるお顔はそれは恐ろしかった。すんごい冷たい目で見下されている…。
「お前……真冬だぞ今……なんで川で泳ぐ?」
「マッシュくんみたいに重いものでトレーニング出来ないから…」
「マッシュとか関係ないだろうが。お前…今日、外何度だと思ってる?」
「え…っと、15℃ぐらいですかね」
「5℃だ」
「……。」
「うさぎの中でも馬鹿なうさぎだ、お前は」
「そ、そんなこと」
熱のせいでただでさえ大きな瞳をさらに潤ませながら赤い顔で見上げてくるうさぎ(レナ)を見ながらレインは思った。
…ったく……俺もとんでもねぇ拾いもんをしちまったな…今までよく無事でやってこれたもんだ。野生だったら間違いなく死んでるぞ…。しかし拾っちまったもんは仕方がない…最後まで責任持って俺が面倒見てやらねぇとな。こいつが喜ぶもんだから人参ばかり与えていたが、これからは野菜や果物のレパートリーを増やすか…いや、タンパク質が足りてねぇのか…それから水のそばに近づかないようにしねぇと……目を離さないように………柵を増やすか。
※レナはうさぎではありません。
「……あの、レインさん」
「なんだ」
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」
500mlぐらいの量あったけど、あまりにレインさんが考え込んでるからがんばって全部飲み終わった。
私から器を受け取ってローブのどこかにごそごそしながら立ち上がる。
「(柵を作ろう…)残さず飲んだな。さっきより顔色も良くなったんじゃないか?キウイは栄養と美容成分が豊富らしいからな」
「はい。…レインさんのおかげです」
労ってくれてるのが伝わってきて、我慢出来なくて表情が緩んだ。にこにこしてたらレインさんもちょっと笑ってくれた。ときどき見せてくれる笑顔が好きで、私もますます嬉しくなる。
「スムージーもだけど、レインさんの顔見たら安心して…元気でました」
「うぐぅっ?!」
ぱりぃん!
「…くそがっ!」
「あっ、瓶が……」
何故かスムージーの器を唐突に床に叩きつけるレインさん。胸を押さえてはぁはぁ言いながら赤い顔で睨んでくる。……怖…。
「寝てろ…清掃の人間をよこすから…寝ろ」
「は、はい」
「俺はこれからまた魔法局で仕事だ。次に戻るまで水辺に近付くなよ。わかったな」
「わかりま」
「治ってもマッシュと脳筋トレーニングなんかするなよ」
「………。」
「返事」
「ハイ!」
最後にばさぁ!と私に布団をかけて、ドアがないので全てをスルーして出て行ったレインさんはとても速かった。
変な人…と思ったけど、いなくなったらすごく静かに感じてしまって、やっぱり寂しかった。
「はぁぁ……レナさん大丈夫ですかねぇ?みんなでお見舞いに来たものの、まだ寝てるか、もぉぉおおおお?!?!なんじゃあこりゃあああ!!?」
破壊された医務室にレモンちゃんの叫び声が響いた。