Crush on the darkness
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「おーいっ!早く来なよアレックス!先に行っちゃうぞぉ〜」
「はぁっ、はぁっ……ちょ…!この、体力バカ……ッ!」
猛ダッシュのジョナサンに普通に置いていかれるアレックスである。
しかし先ほど悪ガキたちに殴られていた影響もあまりないようで安心した。きっと一対一ならジョナサンが勝っていたと思うのに。
(普通に間に合わん…)
そんなこんなでアレックスが息を切らしながら屋敷に帰った時、すでにロンドンからやってきたディオ・ブランドーを乗せた馬車は大きな門の前に鎮座していた。
まさかのいなかったはずのジョナサンが先にいて馬車を待ち構えている状況。
アレックスは最後の力を振り絞って馬車の横を通り過ぎようとした。
なので、勢い良く馬車のドアが開いても急には止まれなかった。
「うわぁっ」
「!」
驚いたのは馬車から飛び降りたディオも同じだった。窓から見えるジョナサンばかり気にしていて、アレックスが来たことに気付かなかったのだ。
どん、とぶつかったもののアレックスは軽い。咄嗟に腰に腕を回してふらふらしているのを支えた。肌は白く線は細い。そしてディオはこんなにも真っ黒で大きな瞳を見たのが初めてだったので、一瞬言葉を失ってその顔を見つめた。
「………失礼、マドモアゼル」
「…ああ、いや……こちらこそ…」
その薄くて艶々とした唇が開いて少年の声がしたのでディオははっとした。良く見ると格好も。
(なんだ、男か)
とはいえやはり美しい。
ディオはすぐに手を離すことができずに目の前の黒曜石の瞳をまじまじと眺めていた。そこには人形のように真顔のディオが映っている。逆にアレックスの方も明るい金の髪と水色の瞳を見つめていて眩しいぐらいだった。
(…ずいぶん、垢抜けた奴だなぁ…)
そして至近距離で見つめ合う2人に焦っているのがジョナサンだった。
「あ〜〜っと!き、君はディオ!ディオ・ブランドーだね?!」
「ああ……そういう君は」
………ん?
ここでディオは止まった。
ジョースター家には1人息子がいると聞いている。
馬車から見えていたので普通にこいつがジョナサンだと思っていたが、ならば今ここで俺が抱き止めているこいつは誰だ?
咄嗟にこいつがジョナサン・ジョースターだったなら最悪だ、と感じた。なぜそう思ったのかはディオにもわからなかった。
「そうだっ。アレックス、父さんたちを呼んでよ。ディオが着いたって」
「ああ…そうか。ちょっと伝えてくる」
「待ってくれないか。よくわからないな…同い年の息子が1人と聞いていたんだが…」
「それは僕だ」
「そうか君が…ジョナサンか」
「さあ、行っておいでアレックス」
何か慌てているジョナサンに手をふって促され、アレックスはようやくディオの手をやんわり制してそこから離れた。
「おかげで転ばずに済んだよ。ありがとう」
「いや…(助けたというか、ああ突っ込んでこられちゃあそうなるだろ…)」
「また後でな。ディオ」
アレックスは人当たりの良い笑顔を浮かべたが、ディオはつんとして頷いただけ。クールなやつだな。
「…彼は君の友達か?」
「いいや、親友さ。父の友人の子なんだ…この家で一緒に育ったんだよ」
「ふぅん…」
存在を知らなかったのは誤算だが、いい駒かもしれない。このジョナサンから彼を取り上げて孤立させたらさぞ気分がいいだろう。
「アレックス、か……」
か弱そうな女みたいな奴だな。
その背中を見送りながらディオはようやく微かに笑った。アレックスのそれとは違う意地悪そうな。
屋敷の中にその姿が消えるまで、ジョナサンのことは眼中になかった。