Crush on the darkness
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学校に通い始めて数年がたつと、2人の人付き合いの幅はぐぅんと増えた。
「…お前、またでかくなった?」
「わかるかい?!最近体を鍛えているんだよ。友達にトレーニングのやり方を教わって」
どうだ!と力こぶを作ってみせるジョナサンを見て、アレックスは笑ったのかなんなのか、半端な吐息を吐いて終わった。
「………野蛮人。」
「なっ、なんだってぇ!?」
「ははは。じゃあな、ジョナサン」
小さく片手を上げてから、颯爽と屋敷の門を出ていくアレックス。道の向こうで友人たちが待っているのだ。
タイトなパンツに長めの燕尾服を纏って、胸元や手首からチャラリとアクセサリーが音を立てていた。
最近のアレックスはどうにも煌びやかで洒落ている。仲間もそういった奴らが多くて、やれチョーカーやブレスレットや指輪がどうとか、フレグランスがどうとか、髪につけるオイルがどうとか話している。装飾や服のデザイナーが屋敷まで新商品を持って訪ねてくるのだ。アレックスがそれらを見に纏うと宣伝になるのだとか。父さんも嬉しそうにしている。ジョナサンだってそういうのに興味はあるけどどうにも疎くて…度々アレックスにコーディネートを作ってもらうのだ。
ジョナサンは去って行ったアレックスの笑顔に見惚れていたのをごまかすために、鼻をこすった。
そういうお洒落で美しい友人が毎日同じ家で暮らしているのだ。誇らしいことじゃあないか。
「…でも僕は、君に1番似合うのは自然に咲いてる薔薇だってこと…ちゃあんとわかっているんだから」
本当はあのころみたいにかくれんぼや落書きや、ダニーも一緒に暴れて触れ合って遊びたいけれど……仲が良いのは変わらないし、僕らもいつまでも子供じゃいられないから。
「……決めた!今日は帰ったら久々にアレックスを遊びに誘うぞ!」
帽子を深く被り直して、ジョナサンも屋敷を出て行った。
「見ろよこの靴。空まで映ってるぞ」
先日新調した革靴を上から見つめて、アレックスは仲間に話しかけた。路上で靴を磨いてもらってご機嫌なのだ。
機嫌といえば、今朝のジョナサンは少し元気がなかったようだが…。そう思い出すと、靴に映る自分の顔も曇っている。
原因は何となくわかる。自分がこうしてチャラチャラしているのに引け目を感じているのだ、ジョナサンは。
学校に通い出してからジョナサンは変わった。
みるみる体が大きく強くなって、遊びではアレックスはもう勝つことが出来ないし、小さな頃はすぐにメソメソしていたくせに最近はすぐに泣き止んで負けを認めない。
(トレーニングって……何がおもしろいんだ?)
仕方がないのだ。アレックスは何年たっても華奢なままだし色は白くて女と間違われるほどの容姿をしている。同じような人間同士で集まるのは仕方のないことだ。
もう簡単には届かないけれど、本当はあの頃みたいにジョナサンの癖っ毛をなでてやりたいのだけど。だってジョナサンは探究心旺盛で、体を動かすのと同じくらい本を読むのも勉強するのも好きなんだ。みんな知らないだろうけどさ。
(……帰ったら一緒に宿題でもやるかな)
「来いよアレックス!アフタヌーンティーにしよう!」
呼ばれて顔を上げた。今はジョナサンよりどの茶葉を選ぶかの方が重要だな。
足早に友人を追いかけた。
「……何この手紙?」
屋敷に帰るとちょうど執事が郵便物を整理しているところだった。
一枚だけくしゃくしゃの薄い封筒が混ざっていたのでなんとなく目に留まったのだ。
「そちらはジョースター卿宛てで……あぁっ!ぼっちゃまいけません!」
「中まで見ないよ…」
素早く抜き取ると注意されてしまった。少しむっとしながら光に透かすように顔の上にかざしてみる。
(…この住所は……ロンドンの貧民街だな。なんでこんなところからジョースターさんに手紙が?)
今思うと執事のいないときに抜き取って内容を見ればよかったかもしれない。
「これ、ただの手紙だよな?カミソリとか入ってない?」
「それを今から確認して振り分けるのでございますよぅ…」
「わかってるって。あ、俺宛てのはある?」
「ラヴレターが少々」
持っていた封筒をテーブルに戻してから3通の手紙を受け取り、アレックスは自分の部屋に戻っていった。
「ただいま!」
それから1時間ほどして今度はジョナサンが大きな扉を開いて帰ってきた。
挨拶もそこそこにほとんど駆け出している。今日はアレックスと過ごしたいと思っていたので、まるで女の子を誘うかのようにドキドキそわそわしているのだ。
「聞いておくれよアレックス!今日はなんと!カエルの足に紐を付けて遊んだんだ……って、いないな…」
勢いよく部屋に駆け込んだがもぬけの空だ。
そういえばアレックスは最近夜遊びなんかしてるみたいで、どこぞのパーティだのでお酒を飲んで父さんにこっぴどく叱られていたな…。
いやでも、ピッカピカの靴が玄関に置いてあったから、いないわけないんだけど…。
「あっ、そうか!こっちか!」
今度はダッシュで書斎に駆け込む。見つけた。
相変わらずお気に入りのソファに座って、入り口からは後ろ頭しか見えない。小さな頃から変わらない光景にジョナサンは思わずにししと笑った。
そっと近付いて回り込むと、アレックスはやっぱり寝ている。陶器の人形みたいに線が細くてきめ細やかで……ジョナサンはいつも、起こさないように細心の注意を払いながらその寝顔を眺めるのだった。
(……きれいだな…)
最近のアレックスは本当に、もう子供だなんて言えないぐらいに大人びていて色っぽくて困る。
(…ねぇアレックス。何をそんなに疲れているんだい?君を高価なアクセサリーみたいに自慢して回ってる、あの友人たちのせいなんじゃあないだろうね…)
言いたいけど言えない。
言葉の代わりにジョナサンは徐々にアレックスとの距離を詰めていく。
白くて細い首に巻き付いたネックレスの鎖が、波打つ鎖骨に沿って動いている。何故だかそれに触れたくなった。浮き上がったその筋に。
「………ジョナサン。」
ふと呼ばれてジョナサンは動けなくなった。
アレックスが瞳を開くと、美しい黒曜石の光の中に囚われてしまう。
ぎゅっとアレックスが息を飲み込んだのが分かった。だって今彼の首に触れていて、吐息がかかってもうすぐ口付けてしまうほどに近い。こんなに近くにいるのなんていつぶりだろうか。
アレックスは何を考えているのか分からない。温度のない顔のまま首にあるジョナサンの手を下ろさせた。手と手が繋がってとても熱い。ずっと目と目が合っている。…僕はずっと、君を見つめている。
「……そうだ。…ちょうど、…ジョナサンにあげたいものが……あるんだった」
「僕に…?くれるのかい?」
てっきり唇をかと思ってしまったけど、よく考えたらそんなわけなかった。
「………スコーン。」
そっと小さな紙袋を顔と顔の間に差し出されて、ようやくジョナサンはとんでもない勘違いのようなものをしていたのに気付いた。
アレックスの手を握りしめたまま脱力して床に片膝をつく。
「スコーン……スコーンか。そりゃそうだ…」
「???」
目覚めた瞬間目の前で熱く見つめられて触れられて、かと思えばがっくり両肩を落としているジョナサンにアレックスは引いていた。
よくわからないけど、こんなにそばにいるのは久しぶりだな…。少し骨ばった大人の顔になってきたジョナサンに、少し照れる。
「……なんかまた、下品な遊びをしてきたんだろ?お腹空いて夜まで保たないだろうと思って買ってきた」
「ああそうさ!お腹ペッコペコだよ!ありがと!ほんとありがと!!」
「???」
早く手、離してくれる?
追い打ちをかけられ、ジョナサンがさらに沈んだ。
「…お前、またでかくなった?」
「わかるかい?!最近体を鍛えているんだよ。友達にトレーニングのやり方を教わって」
どうだ!と力こぶを作ってみせるジョナサンを見て、アレックスは笑ったのかなんなのか、半端な吐息を吐いて終わった。
「………野蛮人。」
「なっ、なんだってぇ!?」
「ははは。じゃあな、ジョナサン」
小さく片手を上げてから、颯爽と屋敷の門を出ていくアレックス。道の向こうで友人たちが待っているのだ。
タイトなパンツに長めの燕尾服を纏って、胸元や手首からチャラリとアクセサリーが音を立てていた。
最近のアレックスはどうにも煌びやかで洒落ている。仲間もそういった奴らが多くて、やれチョーカーやブレスレットや指輪がどうとか、フレグランスがどうとか、髪につけるオイルがどうとか話している。装飾や服のデザイナーが屋敷まで新商品を持って訪ねてくるのだ。アレックスがそれらを見に纏うと宣伝になるのだとか。父さんも嬉しそうにしている。ジョナサンだってそういうのに興味はあるけどどうにも疎くて…度々アレックスにコーディネートを作ってもらうのだ。
ジョナサンは去って行ったアレックスの笑顔に見惚れていたのをごまかすために、鼻をこすった。
そういうお洒落で美しい友人が毎日同じ家で暮らしているのだ。誇らしいことじゃあないか。
「…でも僕は、君に1番似合うのは自然に咲いてる薔薇だってこと…ちゃあんとわかっているんだから」
本当はあのころみたいにかくれんぼや落書きや、ダニーも一緒に暴れて触れ合って遊びたいけれど……仲が良いのは変わらないし、僕らもいつまでも子供じゃいられないから。
「……決めた!今日は帰ったら久々にアレックスを遊びに誘うぞ!」
帽子を深く被り直して、ジョナサンも屋敷を出て行った。
「見ろよこの靴。空まで映ってるぞ」
先日新調した革靴を上から見つめて、アレックスは仲間に話しかけた。路上で靴を磨いてもらってご機嫌なのだ。
機嫌といえば、今朝のジョナサンは少し元気がなかったようだが…。そう思い出すと、靴に映る自分の顔も曇っている。
原因は何となくわかる。自分がこうしてチャラチャラしているのに引け目を感じているのだ、ジョナサンは。
学校に通い出してからジョナサンは変わった。
みるみる体が大きく強くなって、遊びではアレックスはもう勝つことが出来ないし、小さな頃はすぐにメソメソしていたくせに最近はすぐに泣き止んで負けを認めない。
(トレーニングって……何がおもしろいんだ?)
仕方がないのだ。アレックスは何年たっても華奢なままだし色は白くて女と間違われるほどの容姿をしている。同じような人間同士で集まるのは仕方のないことだ。
もう簡単には届かないけれど、本当はあの頃みたいにジョナサンの癖っ毛をなでてやりたいのだけど。だってジョナサンは探究心旺盛で、体を動かすのと同じくらい本を読むのも勉強するのも好きなんだ。みんな知らないだろうけどさ。
(……帰ったら一緒に宿題でもやるかな)
「来いよアレックス!アフタヌーンティーにしよう!」
呼ばれて顔を上げた。今はジョナサンよりどの茶葉を選ぶかの方が重要だな。
足早に友人を追いかけた。
「……何この手紙?」
屋敷に帰るとちょうど執事が郵便物を整理しているところだった。
一枚だけくしゃくしゃの薄い封筒が混ざっていたのでなんとなく目に留まったのだ。
「そちらはジョースター卿宛てで……あぁっ!ぼっちゃまいけません!」
「中まで見ないよ…」
素早く抜き取ると注意されてしまった。少しむっとしながら光に透かすように顔の上にかざしてみる。
(…この住所は……ロンドンの貧民街だな。なんでこんなところからジョースターさんに手紙が?)
今思うと執事のいないときに抜き取って内容を見ればよかったかもしれない。
「これ、ただの手紙だよな?カミソリとか入ってない?」
「それを今から確認して振り分けるのでございますよぅ…」
「わかってるって。あ、俺宛てのはある?」
「ラヴレターが少々」
持っていた封筒をテーブルに戻してから3通の手紙を受け取り、アレックスは自分の部屋に戻っていった。
「ただいま!」
それから1時間ほどして今度はジョナサンが大きな扉を開いて帰ってきた。
挨拶もそこそこにほとんど駆け出している。今日はアレックスと過ごしたいと思っていたので、まるで女の子を誘うかのようにドキドキそわそわしているのだ。
「聞いておくれよアレックス!今日はなんと!カエルの足に紐を付けて遊んだんだ……って、いないな…」
勢いよく部屋に駆け込んだがもぬけの空だ。
そういえばアレックスは最近夜遊びなんかしてるみたいで、どこぞのパーティだのでお酒を飲んで父さんにこっぴどく叱られていたな…。
いやでも、ピッカピカの靴が玄関に置いてあったから、いないわけないんだけど…。
「あっ、そうか!こっちか!」
今度はダッシュで書斎に駆け込む。見つけた。
相変わらずお気に入りのソファに座って、入り口からは後ろ頭しか見えない。小さな頃から変わらない光景にジョナサンは思わずにししと笑った。
そっと近付いて回り込むと、アレックスはやっぱり寝ている。陶器の人形みたいに線が細くてきめ細やかで……ジョナサンはいつも、起こさないように細心の注意を払いながらその寝顔を眺めるのだった。
(……きれいだな…)
最近のアレックスは本当に、もう子供だなんて言えないぐらいに大人びていて色っぽくて困る。
(…ねぇアレックス。何をそんなに疲れているんだい?君を高価なアクセサリーみたいに自慢して回ってる、あの友人たちのせいなんじゃあないだろうね…)
言いたいけど言えない。
言葉の代わりにジョナサンは徐々にアレックスとの距離を詰めていく。
白くて細い首に巻き付いたネックレスの鎖が、波打つ鎖骨に沿って動いている。何故だかそれに触れたくなった。浮き上がったその筋に。
「………ジョナサン。」
ふと呼ばれてジョナサンは動けなくなった。
アレックスが瞳を開くと、美しい黒曜石の光の中に囚われてしまう。
ぎゅっとアレックスが息を飲み込んだのが分かった。だって今彼の首に触れていて、吐息がかかってもうすぐ口付けてしまうほどに近い。こんなに近くにいるのなんていつぶりだろうか。
アレックスは何を考えているのか分からない。温度のない顔のまま首にあるジョナサンの手を下ろさせた。手と手が繋がってとても熱い。ずっと目と目が合っている。…僕はずっと、君を見つめている。
「……そうだ。…ちょうど、…ジョナサンにあげたいものが……あるんだった」
「僕に…?くれるのかい?」
てっきり唇をかと思ってしまったけど、よく考えたらそんなわけなかった。
「………スコーン。」
そっと小さな紙袋を顔と顔の間に差し出されて、ようやくジョナサンはとんでもない勘違いのようなものをしていたのに気付いた。
アレックスの手を握りしめたまま脱力して床に片膝をつく。
「スコーン……スコーンか。そりゃそうだ…」
「???」
目覚めた瞬間目の前で熱く見つめられて触れられて、かと思えばがっくり両肩を落としているジョナサンにアレックスは引いていた。
よくわからないけど、こんなにそばにいるのは久しぶりだな…。少し骨ばった大人の顔になってきたジョナサンに、少し照れる。
「……なんかまた、下品な遊びをしてきたんだろ?お腹空いて夜まで保たないだろうと思って買ってきた」
「ああそうさ!お腹ペッコペコだよ!ありがと!ほんとありがと!!」
「???」
早く手、離してくれる?
追い打ちをかけられ、ジョナサンがさらに沈んだ。