Crush on the darkness
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うん、わかってた。こーなると思ってたよ、俺は」
地面にしゃがみ込んだまま、アレックスは額に浮いてきた汗を片手でぬぐった。
背後の少し離れたところでは、ディオが木陰で涼しそうに寝転んでいる。
風が頬杖をつくディオの金髪を揺らし、木漏れ日の当たる部分はきらきらと輝いていた。
「ちょっとは手伝えよ」
目の前までやってきて、アレックスはそんなディオに数秒見惚れていたため話し出すのが遅くなってしまった。
見た目だけなら本当に優美なのに…。
「嫌だね手が汚れるし疲れる」
アレックスの胸中を知る由もないディオは、わざとらしく顔をそらしてみせた。
それから視線だけちらりと見上げると、手にその辺の草を掴んだアレックスが軽蔑した目で自分を見下ろしているのに気付いた。
顔に汗が浮いているし、疲れて呼吸も浅いのに、その漆黒の両目だけは深海を思わせるように冷たい。
ぞくぞくと背中を何かが駆け上がるのをごまかすために起き上がってあぐらをかいた。
「そんなに暑いのかい?」
「暑いよ…。今日天気いいし、動いてたら」
またブラウスの袖口で額の汗を抑えて空を見上げるアレックス。「なんでこんなことに…」とつぶやきながら昨日の出来事を思い出した。
そしたら、アレックスの大嫌いな虫を掴んで追いかけてきたディオの姿が蘇ってきた。
大声で叫びながら逃げるアレックスと爆笑しながら追いかけてくるディオ。
そして2人を見つけてディオに怒りながらさらに追いかけてくるジョナサン。
ちょうどそこにジョースター卿が通りがかったのだ。
品がないとめちゃくちゃに叱られて、今。屋敷の裏の草むしりをさせられている。
「元はといえばお前のせいだからな…!マジで……!!」
「誰かさんが虫嫌いを克服すれば済むんじゃあないか?どれ、このディオが手伝ってやろう」
「ほんとにやめろ!!」
草をかき分ける仕草のディオにアレックスは完全に引いている。今にも逃げ出しそうに持っていた雑草を投げ捨てた。
舞い散る草の隙間から小さな影が飛んでいったのを見て、アレックスは少し避けるように体勢を低くした。
「ん」
飛んでいった小さな虫は、ディオの胸の辺りにくっ付いて動きを止める。高級なシャツになんてことを。うっとおしい虫め。
ディオはすぐにそれを手で払い落とそうとした。
「てんとう虫だ」
気付いたらアレックスの声がすぐ近くから聞こえて、ディオは反射的にそちらに顔を向けた。ほとんど隙間なく、隣にアレックスがしゃがみ込んでいる。何か愛しい者でも見るかのように優しく微笑んでいるも、その視線の先にディオはいない。いつもそうだ。こっちが一生懸命に見つめている時に限って、アレックスはこちらを見ていない。まぁ見つめられても困るのだが、なんとなく毎回悔しくなってしまうディオである。
「可愛いなー。なんか良い匂いでもしたのか?」
(虫に話しかけている……。)
見てはいけないものを見た気がしてディオは胸元のてんとう虫に視線を落とした。
ちょこちょこと服を登ってきている。
「(…。)虫は苦手なんじゃあなかったか?」
「てんとう虫は好きなんだ」
「なんで?」
聞きながらやっぱり虫が服を登ってくるのが不愉快で、ディオはそれを振り払うために手を上げた。
「あ、待って」
「!」
思わず体が固まる。アレックスがディオの半端に上がった手を掴んだからだ。
そして、空いている方の手でてんとう虫のいる胸に触れた。そのあまりにも優しい仕草に唖然として、けれど愛しそうに細まる瞳にディオは映ってはいない。
アレックスは掴んだままのディオの手を真っ直ぐ上に向けさせた。
「てんとう虫は幸運の象徴なんだ。いつも1番上から太陽に向かって飛んでいくだろ…」
ディオの手に小さな赤いてんとう虫が乗った。
アレックスの手が優しく触れて、ディオの人差し指を包んで空に向かって立ち上がらせる。
てんとう虫は導かれるように指の一番上までちょこちょこと歩いていった。その動きに合わせて、ディオの手全体が熱を帯び、少し震える。
アレックスは太陽のエネルギーに溢れた小さな生命を見つめることに夢中で気付いていなかった。自分がどれだけディオの近くにいるのか。どれだけ長く手と手が触れ合っているのか。
そして、目の前にいる野心に溢れた少年が、どれだけ動揺しているのか。
(……っ、熱い……!)
「(…。)常に1番上にって…、なんかお前みたいだな。」
何故か好きなてんとう虫とディオを重ねて、そこで初めてアレックスは嫌そうに顔をしかめてディオを見た。久しぶりにこっちを見たと思ったら、だいたい嫌そうにしている。
「…俺は…こんなに、どんくさく、ない」
「あ」
ついに指の先に辿り着いたてんとう虫が、音もなく太陽に向かって飛び立った。つられて見上げるが眩しくてすぐに見えなくなってしまう。
「確かに、なんですぐ飛ばないんだろうな…」
「くだらん。いい加減に離せよっ」
「……ごめん。」
そういえばずっと掴んでた。
アレックスは急に気恥ずかしくなって、ディオの体温が残る自分の手を振って空気で冷ますようにした。何故かディオも離れた手をぶんぶんと振っていた。もしかしてこいつ照れてるのかな、と頭をよぎったがディオがそんな可愛らしいわけないなとすぐに考えを改めた。
…そういえば、可愛らしいっていったら。
「てんとう虫を一緒に見つけたら、愛が芽生えるっていうよな」
「………。」
「何?」
「…この機に教えておいてやろう。俺はお前がむちゃくちゃに嫌いだ」
「えぇー……」
「そして今、てんとう虫も大嫌いになった」
「何でだよ!可愛いのに!」
なんとなくそのまま2人で小突きあっていたら、ジョナサンがどこからともなく喜色満面で走ってきた。
包み込んでいた手のひらに3匹のてんとう虫が収まっていた。アレックスに喜んで欲しくてずっと探して、捕まえてきたのだろう。
にこにことしている2人にディオは付き合っていられないと再び草に寝転んだ。つまり草むしりはまったく進んでいないわけで、アホ2人は放置して早々に出来なかった言い訳を考えることにした。
