Crush on the darkness
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どこ行くんだ、ジョナサン」
アレックスがそう聞いたとき、ジョナサンは明らかにぎくりと肩を揺らして振り向いたので、アレックスは何か後ろめたいことがあるんだなとすぐに気付いた。
案の定、ジョナサンはそわそわと挙動不審だ。
「い、いやぁ〜別に?ちょっとふらふら散歩にでも行こうかなって」
「散歩?誘ってくれたらいいのに。ちょうど暇してたから一緒に行こう」
「そっ!それは駄目だ!」
「えっ」
「いや!駄目じゃないけど…なんとなく、1人になりたいというか、その」
「…何か悩みでもある?」
「いやいや、そう!実は1人で勉強しに図書館に行こうと思っていて!」
「1人で?」
「1人で……」
「(……。)ふぅん。…まぁ、1人の方が集中できるときもあるしな」
「そ、そうなんだよ……」
ジョナサンはバツの悪そうにアレックスの顔を覗き込んでから、再びそろりと彼に背を向ける。アレックスはそれ以上追求したりしなかった。
最近ジョナサンが1人で屋敷を抜け出してこそこそしているのを知っているからである。
きっとジョナサンは図書館になんか行かないだろう。けれど、どこで何をするかをアレックスには教えてくれないのだ。
「それじゃアレックス、また後で…」
「ああ。気をつけて」
大きな扉が閉まり、その直前ジョナサンが外へ駆け出していたのが見えた。
そんなに楽しいことなのに、どうして自分には何も言ってくれないんだろう。
最近のジョナサンはやけに機嫌が良くて。秘密にしているそれはきっと俺といるよりも楽しいことなんだろうな。
分かってるよ。分かってる。別々の人間なのにあんまりべったりしててもしょうがないもんな。別々の人生なんだから。
悶々とし始めた思考が打ち消された。
上からバタンとドアの音がして、颯爽としたいつもの足音が聞こえてきたからだ。
「ぼけっとそこに立っていられても邪魔なんだが」
「ディオ!どこか行くのか?」
「図書館だよ。遊び回ってるお前らとは違って忙しいんでね」
ディオは子綺麗に身なりを整えており、本とノートと文房具をぴっちりと革ベルトでまとめて片手に持っていた。アレックスはディオのそういうこだわりがあるところが好きだった。自分が人にどう映るかを良く分かっていて、ちゃんと気にかけている。
「勉強するのかぁ」
「…お前、この俺がどーやって学年トップの成績を保ってると思っていたんだ」
「悪いことして?」
「普通に勉強した方がリスクもないし効率もいいぞ」
「悪いことしてないのか」
「まぁちょっと金をちらつかせるぐらいだな」
素直なディオにうふふと笑うとディオもふふんと鼻を鳴らした。
欲望はえげつないけど努力してるところも好きだったりする。
「俺も一緒に行こうかな」
「やめてくれ。集中できなくなる」
ぴしゃりと断られてアレックスは不満げに口をへの字に歪めた。
アレックスは嫌いな科目について考えるのを放棄する上、AからZまでこっちに質問責めしてくるので付き合っていられないのだ。
前も一緒に宿題をやっていてあまりにも必死にぐいぐい責めてくるものだから、距離が近すぎて動悸がして勉強どころじゃなくなった。
アレックスはディオの葛藤など知る由もなく、あまりにも即答で断られたのでショックを受けていた。
「お前の家庭教師になるのはごめんだ」
「別に教えてとか言ってないじゃん」
「それに、お前が来るとなるとジョナサンのやつも一緒になってついてくるからな」
「ジョナサンいないよ」
「何?」
意外できょろりと少し辺りを見回す。
ジョナサンのやつ、一緒に家にいるときは番犬のようにアレックスを見張っているのに。
(奴の目を盗んでアレックスと過ごすのは大変愉快だ。後で悔しそうな顔が見れるから。)
「…そういえば、ジョナサンのやつ最近やけに浮かれているようだが」
「だよな。なんでか知ってる?」
「いや……。」
「さっきも一緒に出かけようとしたら、駄目だって…」
「それは……お気の毒に」
自分が勉強を教えるのを断ったときよりよほど落ち込んで見える。
ジョナサンがアレックスを避けているのはなんとも好都合だが、ディオはざまぁみろとアレックスを嘲笑うことはできなかった。あまりにも哀愁が漂っていて不憫だし、こっちに興味がないと言われているような気もして複雑だ。
「…まぁ、2人でベタベタしてホモだとか噂されるよりマシかもしれないな。俺にはどーすることもできん。そうやって捨てられた犬のように奴の帰りを待つといいさ」
ふい、と顔をそらして、ディオは素っ気なくアレックスから離れていく。ここで「待ってよ一緒に行きたい」とすがってくれば気分も変わりそうなのだが、アレックスは黙ってその場にいるだけだった。それがまた腹が立つ。まるで床に磁石でも入っていて、引き寄せられたかのように足が止まった。
「……。」
「………。」
「……。」
くるっと180度方向を変えて、ディオがアレックスのところに戻ってきた。
ディオの性格に難があることなんてアレックスは分かっているので、置いていかれることなんて何ともないし、わざわざ嫌味を言いに戻ってきたのかと思った。ところがディオはちょっと斜に構えてこっちを見ているだけで、何もない。不思議に思ってじっと見返していると、やっと憤慨して口を割った。
「アホ面さらしてないでさっさと準備をしてこいよ!」
「…えっ、ディオと行くの?」
「おい、嫌そうだがどういうことだ」
「さっきディオが嫌そうにしてたから」
「っ、いいから早くしろよ!1人で行ったら友達いなくて勉強で気を紛らわせる寂しい奴だと思われるだろっ」
「あそういうこと」
持っていた本でどつく直前、アレックスは身を翻してあっという間に階段のところに戻った。
「一瞬で終わらせてくる!」
軽快に階段を駆け上がる直前の表情がとても嬉しそうに笑っていたので、ディオは咳払いをして心を落ち着かせなければならなかった。
たぶん今日は勉強したってあまりはかどらないだろう。
1日を無駄にしない為に、さっそく別のプランを考え始めるディオであった。(なんと有能なんだこの俺は。)
