Love the darkness -5-
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今にも雪が降りそうな寒空の下を、リカは下を向きつつとぼとぼと歩いていた。
少し離れた後ろからそれを追いかけるジョルノは、彼女が落ち込んでいる理由を知っている。
(僕のせいだ)
もうすぐクリスマスだから、そういう話をしていただけだけど。
リカが幼い頃家族から変なプレゼントをもらっただとか。
ジョルノにクリスマスに特別な感情はない。
リカが楽しそうにしているから自分も嬉しいだけで、自分の思い出は蘇ってはこなかった。
特に、良い思い出は。
だからリカに急に聞かれて普通に答えただけだ。
『ジョルノは子供のとき何もらった?』
『…いえ。特に何も。』
その瞬間リカがはっとして見る間に悲しい顔になったから、そこで初めてジョルノも気付いたのだ。自分がリカにショックを与えるようなことを言ってしまったのだと。
『(…。)ああそうだ。今度、寮に残ってる生徒たちでクリスマスパーティをするんです。プレゼント交換があるから、僕も選ばなくちゃあな』
『なにそれ楽しそう!』
『選ぶの、手伝ってもらっても?』
『もちろんっ』
なんとか彼女を笑顔にすることには成功したけれど、先を行くリカはやっぱり元気がなくて。見られていないのを良いことにジョルノはため息をついた。
(…私のせいだ…)
その短いため息はリカの背中まで届いていた。
ジョルノにクリスマスの予定を聞かれたから、『日本に帰る』と言ったのだ。
そうしたら見るからにジョルノが落ち込んでしまったので、空気を変えたくておしゃべりが過ぎた。ジョルノが昔の嫌な記憶を思い出していたらどうしよう。
お店を回ってプレゼント候補を選んでたらいつの間にかいつもの雰囲気に戻ったけど、そろそろ帰らないとってジョルノに言われてやっぱり落ち込む。いつもは自分から言わないくせに。
(やっぱり誘えば良かったな…。)
そして今、ジョルノは学生寮の自分の部屋でつまらなさそうにベッドに横たわっている。
寮は帰省していない生徒たちでクリスマス用に飾り付けられ、あと数日で訪れる青春のイベントにみんなが浮かれているのがわかる。
だけど、その当日にはリカはこの国にいない。
22日の夜に立つと言っていた。特別な夜を過ごすのは別にクリスマスじゃあなくても良いのに。特別な日に故郷の日本に帰るのなんかきっと当然のことなのに。まるで自分が選ばれなかった気がして誘う勇気が出なかったのだ。
寝返りを打って窓から外を見たら、手作りのイルミネーションがキラキラ光っている。この光にリカが照らされたら、さぞかし綺麗だったろう。
「メリークリスマス、か……」
「ちょっと早いけどね」
「?!」
ジョルノの言葉に答えて背中に控えめな声がかかる。聞けば誰のものなのかすぐに分かるので、ジョルノは急いで振り向いた。
そこにはリカが立っていて、短いスカートのサンタクロースの衣装を着ている。それから白い膨らんだ袋も持っていた。
「煙突ないけど来ちゃった」
照れているのかどことなくそわそわしているリカを見てジョルノは本当に嬉しかった。リカがこの部屋を訪れるときはいつも、夢のような現実を見せてくれて…2人きりの世界に溺れそうになる。
「ジョルノ、ごめんね。あのとき嫌なこと聞いて」
「謝らないでください。どうだって良いんです、そんなこと」
リカがベッドのところまで来てしゃがみ込んだら、その瞳に外のイルミネーションの光が映り込んだ。その輝く世界にはジョルノもいて、ジョルノはずっとここにいたいと思った。
急いでベッドから降りてリカと同じ高さまでしゃがんで手を握る。
「毎年プレゼントあげるから。変なのいっぱいあげる」
そう言って見せてくれた袋の中身の1番上が変な顔のぬいぐるみだったので、ちょっと吹き出してしまった。
本当に、彼女には敵わないな。
プレゼントなんて何もいらないのに。
だってこっちはあなたがいないと思ってなんにも用意していない。
「…やっぱりどうでも良くはないかな…。本当は、一緒にクリスマスを過ごしたかったなって」
「うん」
でももういいんだ。
今夜こうして自分を想ってここに来てくれただけで。
ジョルノが床の敷物を撫でたら、周囲が少し輝いてそこに次々と花が咲いた。リカはジョルノのスタンド能力が好きだ。いつも魔法のような奇跡のような。
ジョルノが一輪手にしたのは花びらが幾重にも重なり華やかなクリスマスローズである。
「こんなことしかできないけれど、あなたに似合うと思うから」
その淡いピンクの花を受け取ってリカが笑った。なんて愛らしいんだろうか。こんなに幸せな心地になれるなら、いつだって。ジョルノは彼女の手を強く握り直した。
「パーティしよ!色々持ってきたから!」
手近なその辺の影から次々パーティグッズを取り出すリカを見て、まるで手品か魔法のようだとジョルノも笑ってしまった。
さっきまでキスでもしてしまいそうな甘い雰囲気だったので、少しばかり残念だった。
