Love the darkness -5-
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「え…マジで?……ジョルノもやられたんだ……アレ…。」
「はい…。マジでビビりましたよ…『嘘をついてる味だぜ』とか言われて…、っていうか僕『も』ってなんですか?『も』って」
ダベる場所を町中からアジトに変えて、リカとジョルノはいつものようにおしゃべりをしていた。
いつもと違うのは、ジョルノが正式にパッショーネの一員となり、リカと同じくブチャラティのチームに入ったことぐらい。
「私もさ、寝冷えしちゃってちょっと寒気してたの当てられて…ほんとすごくない?ブチャラティのあの特技……」
「え、あれって特技なんですか?相手をビビらせるための脅し文句なんじゃ」
「でも、実際ジョルノは嘘付いてたわけだし、私も体調悪かったわけだし」
「確かに……」
ソファに背中を埋めつつふむ、と考え込むジョルノ。それと同時に大変なことに気付いてしまった。いや、もう特技だとかパフォーマンスだとかどっちでもいいんだが。
「待ってくださいよ…リカ、それってあなたもブチャラティに……え?…え?……ちょっと待ってくださいよ!」
身を乗り出すジョルノの頭の中では、ブチャラティがリカにぺろーんとする想像がしっかり浮かび上がっていた。
「朝の挨拶にキスしてくれただけだよ。それでわかったみたい」
「(……。)………へぇぇ〜……」
ジョルノの狼狽えようになんとなく説明したリカだったが、それが良くなかった。
なーんか気軽に言ってくれてますけど、慣れてるその感じ、すっごく不愉快だなぁ。
キスしただけ?朝の挨拶で?何の朝の?
きれいな微笑みを浮かべるジョルノからゴゴゴゴが浮かび上がる。
「僕も組織の一員ですし、是非その特技…出来るようになっておきたいなぁ」
「いや特技かわかんないじゃない。ジョルノの言う通り相手をビビらせるための当てずっぽうなのかもよ」
「どっちにしろちょっと出来るようになっときたいなぁ。」
「な、何言ってんの…?」
さらりと正面からリカの隣に移動するジョルノ。リカはなんだか嫌な予感がして少し後ろにのけぞった。
「出来なくてもいいと思うよ。そんなことしなくたってジョルノ、充分怖いし迫力あるもん。充分ギャングだよ」
「ええ、出来なくてもいいですよ。でも、僕も今朝の挨拶がまだだったなって思って。どんな味がするのか気になるし」
「え、やだ」
距離を詰めてくるジョルノにリカは小さくなって咄嗟に左の頬を押さえた。
ああ、この人は僕がほんとにキスしようとしてるって分かってるのか。僕の好意を分かった上で拒否しているし、きっとブチャラティが触れたのは今押さえているところなんだろうな。
「ブチャラティは良くて僕は駄目なんですか?」
反応全部が可愛いけど断じて許せない。
笑顔のジョルノのこめかみがピクピクしてるのを見てリカは寒気を覚えた。
「だって…ブチャラティは突然だったから…。そんな、しますよみたいな感じで来られたら……は、恥ずかしいでしょ……!」
自分の胸元で頬を染めておろおろとするリカを見て、ジョルノの中で何かがプツンと音を立てた。
「恥ずかしくてもいいですよ」
「え」
「もう我慢できません」
「嫌だって言ってるでしょ!」
もはや両頬を押さえてガードするリカと、その両手首を掴んで引き離そうとするジョルノ。
がっちがちに力を込めて固まるリカは結構強靭だった。
「きゃーーーっ!!やだジョルノ!ほんと嫌い!!変態ぃぃい!!」
「騒がないでよいちいち!はぁはぁ、ちょっとした挨拶じゃあないか!」
何故だかリカに拒否されるほど興奮してしまうジョルノである。ディオの血がなせる技なのだろうか。そこがますます怯えさせる原因になっているのだがわかっちゃあいない。
2人して揉み合っていると、奥の部屋のドアがバァン!と音を立てて開け放たれた。
「うるせぇぇぇえ!!!てめぇらさっきからうるっせぇんだよ!!何をギャーギャー騒いでやがんだ!」
まさか他にも誰かいるとは思っていなかった2人である。同時に驚いて動きが止まり、怒り顔で登場したアバッキオはしっかり様子を見ることができた。
「盛んなここで!!普通に嫌がられてんじゃあねーかよ!!」
「うっ」
びしぃっ!と指を突きつけられ、ジョルノはようやくソファに撃沈した。
両手を解放され自由を手にしたリカは、ウキウキとソファから飛び降りてアバッキオにまとわりつく。
「わーい!いたのねアバッキオ!…なんでいるの?」
「昼寝だ昼寝。ったく、邪魔しやがって…」
寝起きでぼりぼり頭をかいていたら、リカの手首が赤くなっているのに気がついた。どんだけ強い力で掴んでたんだ、こいつ…。
落ち込んでいるジョルノの方を見たら、小さな子供のように膝を抱えてふてくされている。
(この新入り……マジでヤベー奴だぜ…やると言ったらやるって感じだ…こいつも…)
関わりたくないのも確かだが、新入りのくせに何やらリカと親しい間柄らしいことも気に入らない。
「…で、てめーらは任務もないのになんでいんだ」
「私もお昼寝しようと思ってたの」
ジョルノはついてきただけだ。
「アバッキオはまだ寝る?奥の部屋使う?」
「いいや…気色悪りぃもん見せられて目が冴えたぜ…もう出る」
「使っていい?」
「勝手にしな」
とりあえずリカが無事だったので良しとするか。
ブチャラティに報告するかは悩むところだ。
キッチンで飲み物を取って戻ってきたら、2人はまだやり合っていた。
「いやいやほんとやめた方がいいですよ。アバッキオが使った後のベッドとか」
「それがさ、なんか毎回ちょっと良い匂いするのよ」
「やめた方がいいですって。寝汗とか汚いだろうし」
「テメー全部聞こえてんだよこの野郎!!!」
「すみません」
しれっと謝ってはいるがまったく反省していない。2人を見てリカがきゃっきゃと笑うものだから、まぁいいかと揉め事が収まってしまう。
「用がないならとっとと帰れよ」
「はぁ…仕方ないな…。今日は何も上手くいかないや」
不服そうにため息をつくジョルノを見て、リカは少し申し訳なく思った。
元々リカが1人になるのは危ないから、寝てる間見張っといてあげる、と一緒に来てくれたのだ。全力で拒絶してしまった。
アバッキオから見たら悪いのなんか100%ジョルノなのだが、落ち込んでいるジョルノを見たら元気付けてあげたいと思うのがリカなのである。
それに、別に…挨拶のキスなんて特別なものじゃあないんだから。ブチャラティが特別ってわけじゃ…。
「(…。)ねぇ、ジョルノ帰らなくてもいいよ。あとでまた出かけよう?」
「…いいんですか?リカ、怒っているんじゃあ」
「タイミング下手すぎるのよ」
きょとんとしているジョルノはやっぱり年相応で可愛い。
思わず笑ってしまいながらソファに戻り、リカはジョルノの頬に音を立てて唇を寄せた。
「おやすみ、ジョルノ。」
突然のことにジョルノは咄嗟に自分の頬を押さえることしかできなかった。まだはっきり残る柔らかい感触と、彼女の照れてるような嬉しそうな微笑みが焼き付いて。
ばたん、とドアの閉まる音がしてリカがいなくなるまで意識を飛ばしていた。
ねぇ。本当にあなたが好きなんだけど。
どうしたらいいか分からなくて何をしてるのかもわからないのに、全部許してくれるから…。
もっともっとって、何でもしたくなってしまうんじゃあないか。
「……ずるい人だな、本当…」
「………。」
「…何見てんですか」
「見せてくんだよお前らが勝手に!」
昼寝で回復するどころか余計に疲れてしまうアバッキオだった。
ちなみにこの後、やってきたブチャラティとジョルノとどちらがリカを起こすかでまた一悶着あった。
