✴︎本編✴︎
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(そういえば……あの涙目のルカって人……シャバ代が何とかってジョルノに絡んでたけど…。まさか……組織の人じゃないわよね?!)
リカは1人になって初めてそのことに思い至った。
(え〜〜…大丈夫よね…?面倒なことにならなかったらいいけど〜〜)
もしあの人が組織のメンバーで、今回のことがブチャラティの耳に入ったら…。
(探すわよね〜犯人……ブチャラティそういうのほっとかないだろうし……)
だって人をスコップでぶん殴って逃げてる奴が大切な街に居座ってるってことだもんね〜……。
(やばい気がする…!)
自分自身を励まそうとしてか、無意識のうちに微笑みを浮かべてしまっていた。リカのいるカフェのテラス席の外を歩いていた知らない男性に微笑み返される。
落ち着け落ち着けと両手を組んで、手のひらが温かいことに気付いた。
ジョルノはここに来るまで、空港でも路面電車でも道でもリカの手を握っていてくれた。
リカのことを戦えない、何の力もないただの女友達だと思っているからだろう。
実際は、リカは涙目のルカがジョルノを危険にさらすなら自身のスタンドで返り討ちにしてやる用意をしていた。
その前にジョルノのカエルがしっかりカウンターを食らわせてしまったわけだが。
(ジョルノを守らなきゃ…)
繋いでいた手でぎゅっと拳を作って決意を固める。
「注文してきた。甘いものでも食べて落ち着こう」
店内から出てきたジョルノがリカの横に座った時点でようやく、リカは大切なことを思い出した。
「待ってジョルノ。ケーキ食べれるのは嬉しいけど、支払いってお金……もちろんそうだと思うけど、自分のお金で払ったのよね?」
「……リカはシュガー2本でしたね」
リカの前に香ばしい匂いのコーヒーを置きながら、ジョルノは顔色ひとつ変えない。
「……康一くんの荷物、盗ったよね?」
「そうですね……」
「ジョルノのお財布お金入ってなかったでしょ?」
「…ええ、まぁ」
「……。」
じっと見つめていたら、ジョルノはついに観念したように息を吐いて背もたれに体重を預けた。
「あなたの友人に手を出したのは謝ります。ただ少し…彼のことが気に食わなくて」
ギャングの素質あるわこの子。
「心配しなくてもパスポートはあとで返しますよ。あなたに渡しておいたらいいでしょう?
…そんなことよりケーキ食べないんですか?1番高いセットにしたんですけど…」
「うーーん……。」
康一くんが承太郎からの仕事でここまで来たんなら、旅費は承太郎かSPW財団が出してるはず。
「………食べる。」
「そうこなくちゃ」
康一くんに罪悪感がないと言えば嘘になる。けど、このカフェのあのケーキの誘惑には勝てなかった。
大きなフルーツもりもりタルトを目の前にしたら、どうせ康一くんのお金でもないんだからとすっかり気を取り直してしまった。
「おいしいっ」
(可愛いなぁ……。)
それはジョルノも同じで、にこにこケーキを食べ進めるリカを眺めて癒されていた。
繋いでいた手の感覚が忘れられない。
あんなに怖い目に遭ったのに、こうして変わらずそばにいてくれる。
そして抱き合った時の柔らかさといったら。今でも思い出したら体が熱くなってくる。リカこそが運命の女性だとジョルノは確信していた。
(僕が守る……ギャングスターになって、もう誰も…彼女に手出し出来ないように……!)
「あっ!ジョルノだわ!」
「ほんとだ!」
「ジョルノ!」
悶々としていると学校の女子軍団に見つかった。せっかくリカとの世界を楽しんでいたのに台無しだ。フォークを咥えたままきょとんとしてるリカがこれまた可愛いのに視界はもはやみんな同じに見える女子たちで埋め尽くされている。
みんな壊れたレコードのようにジョルノを誘ってくるのだ。
「ほっといてよ鬱陶しい。僕がこの人と過ごしてるのがわからないのか。邪魔なんだよ」
冷たくそっけない言葉にリカはぎょっとした。承太郎も仗助も良くモテるのでリカにとってはお馴染みの光景だったが、ジョルノの反応は…普段人当たりが良い分承太郎より相手を傷付けるかもしれない。
「嘘でしょジョルノ…!」
「信じられない」
「まさかこの人、ジョルノの……!?」
「そーだよ。だからもう僕に構わないでくれます?」
「ふん!どーせ顔だけでしょそんな女!」
女子軍団はぶーぶー言い始めたけど、ジョルノが無言で睨みをきかせたら捨て台詞を吐いて立ち去って行った。
「もう少し穏便に断らないと……ジョルノは良い子なのに、損するよ」
同性に突っかかられることに慣れているリカは再びケーキを口に入れながら何ともなくそうアドバイスした。ジョルノはやっぱり悪びれることなく微笑んでリカを眺めている。
「リカといると余計にあいつらの相手をする時間が無駄に思えますね。同じことを一体何度言わせる気なんだろう…無駄は嫌いなんだ。だからあいつらも嫌いさ。その点あなたと過ごす時間には…何ひとつ無駄がない。だから僕はあなたが好きなんです、リカ」
(無駄無駄言ってる………!)
恐ろしい思い出が蘇ってマスカットを噛むのを忘れて丸飲みしてしまった。
リカは急いでコーヒーを両手で持って一気飲みしつつ顔を隠した。
なんだか急にジョルノがディオの息子であることを猛烈に意識してしまったからだ。頭の中は警告音を鳴らしているのにそばにいる安心感はジョースター家のそれ。混乱する。そのせいでジョルノの放った「好き」という単語も聞き流してしまった。
(可愛いなぁ……。)
コーヒーを飲んで照れているのをごまかしているんだろうとジョルノは解釈した。お互いの理解に猛烈なズレが生まれようとしている。
「…ジョルノ、ケーキ食べないの?」
リカにそう指摘されるまでずっと目の前のケーキのことを忘れていたぐらいだった。
ジョルノは理想的な、彼いわくまったく無駄のない時間を過ごせて幸せだった。
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