✴︎本編✴︎
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「つかまえたっ!」
入ったのと別の側溝から地面に飛び出てきたカエルをリカは両手で包み込んで捕まえた。
カエルの顔の先にはジョルノがいて、誰かとベンチに座って話をしているようだった。
「ご主人様のところに帰ろうね」
カエルを撫でながら2人の背後に近づく。
ジョルノの隣の男は何故スコップなんか持ってるんだろう…。なんとなく嫌な予感がした。
声が聞こえるぐらい近くにきたら、案の定ジョルノがお金を巻き上げられようとしている。
「ジョルノ!この子あなたのカエルでしょ?そこ、うろうろしてたから連れてきたよ!」
「リカ…?!」
驚いて固まっているジョルノの足元に男が投げ捨てた財布が落ちた。
中に挟まっていた写真が自然と目に入り、今度はリカの方が硬直してしまう。その隙にカエルはするりと手から逃げ、ジョルノの足にしがみついた。
「なんだぁ…?てめぇの女かジョルノ。良いご身分だなぁオイ」
「違う、彼女は…違います。リカ、今は取り込み中なんだ。離れてほしい…どこか、遠くに」
彼女に危害が加えられるなどあってはならないことだ。ここにきて焦りの汗を浮かべるジョルノに相手の男はますます苛立っていた。
2人が言い争っている間にリカは落ちているジョルノの財布を拾う。この写真に写っているのは……ディオだ。間違いない。エジプトで承太郎と共に倒したあのディオ・ブランドーだ。
承太郎が探してるディオの息子は…ジョルノだった。
「リカ!何をしてるんだ!いいから早く逃げろ!!」
「おせーんだよジョルノ!!テメーを殺してその女は俺がもらうッ!!」
涙目の男はジョルノの腰あたりのカエルごと殴ろうとスコップを振り下ろした。
「ジョルノ!!」
咄嗟にダークネスで盾を張る…までもなかった。涙目の男の動きがぴたりと止まり、電池が切れた人形のように脱力して倒れ込んだからだ。
その後頭部はべこりと凹み、そこには彼の持つスコップと同じ形の跡がくっきり残っている。まるでジョルノの体に刻まれるはずだった大怪我だ。
「リカッ!見ないで…!大丈夫ですか?!」
ジョルノはリカの目の前に回り込んで彼女の目を隠すために手のひらを当てた。
その手は優しくて温かくて…リカが知るジョースターの血統を持つ男たちと同じ感覚を覚える。全てを任せることができる安心感だった。
リカはすぐに確信した。ジョルノがディオのように私たちの敵になることはないだろうと。
一緒に過ごした時間がそれを物語っている。
「大丈夫だから……リカ、あなたは何も関係ない。この人は僕を狙っていて、勝手に血を吐いて倒れたんだ。だから何も心配しなくていい…!」
ジョルノは生きていてこんなにも罪悪感に苛まれたことはなかった。愛する女性を恐ろしい暴力にさらして涙を流させてしまった。今どれだけ怯えていることだろう。どうすれば償えるのか分からずに咄嗟に抱き止める。
「リカ…どうか泣かないでください。大丈夫だから……」
優しいその声にリカはますます涙をこぼした。
ジョルノが時々洩らした幼少期の話は、どれも悲惨なもので…。ジョルノがディオの息子だとわかると、彼のその経験も自分が責任の一端を背負っている気がしてならない。
ディオが生きていたからといってジョルノの何が変わったわけではないのかもしれないが、かつてディオに親を殺された自分が、今度は彼から父親を奪ったのだ。こんなに私を慈しんでくれる彼から…。
「ごめんね…っ」
力一杯抱きしめて答えるしか、リカにはできなかった。ジョルノは15歳だとは思えない逞しい体でリカを包んでいる。まるで承太郎といるときみたいにどきどきした。
「ごめんねジョルノ……!私、そんなつもりじゃ」
「ええ。わかってます。リカは何も悪くないんだ。謝らないで」
「…ジョルノはひとりぼっちじゃないよ。私がいるもん…大丈夫だからね…!」
「リカ……」
彼女の言葉はジョルノに今の状況を忘れさせるほど甘美なものだった。
身も心も熱く彼女を求めているのをはっきりと自覚する。だからといってこの綺麗な涙と頼りなく柔らかい体をどう扱えばいいのか、ジョルノにはわからなかった。ただ自分でも怖くなるほどぴたりと重なり合う体の感触を味わう。離れたくない。誰にも邪魔されたくはなかった。誰にも……。
「……とにかく、ここから離れよう」
ようやく倒れ込んだままの涙目のルカのことを思い出し、ジョルノはちらりと背後を盗み見た。現実が押し寄せてきた。
「平気ですよ。僕もあなたも、本当にこの彼には何もしていませんから…そうでしょ?」
「う、うん」
「…リカには僕がいますから…大丈夫です」
手を取り同じ言葉を返されて、リカはジョルノとの絆を感じて嬉しくなった。
そうして2人で手を繋いだまま、そそくさとその場を離れたのだった。