✴︎本編✴︎
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「やっほ〜康一くん!」
「リ、リカさん!久しぶりだなぁ!本当にいるなんて…!」
承太郎から康一がイタリアにくる飛行機を教えてもらっていたので、リカは飛行機の到着時間に合わせて空港にやってきていた。
スーツケースを転がしながら出てきた康一に手を上げながら近付くと、ぱっと康一の表情が明るくなる。
「ほら見ろ。やっぱり男じゃねーか」
「日本人か?…冴えねーなぁ」
リカの後ろをうろうろしていた男たちが離れていくのを見て康一は苦笑する。
「相変わらずみたいだね…」
「相変わらず?何?」
「いやぁ…元気そうでよかった。杜王町のみんなもすごく会いたがってたよ」
「えへへ。そっかぁ。今度電話してみようかな」
話しながらタクシー乗り場まで並んで歩いた。
途中で承太郎からの仕事の話を共有し、康一は件の汐華初流乃の写真をリカに見せる。
「ん」
「心当たり、ある?」
「てゆーか、承太郎にちょっと似てるね」
ジョースター家の血を引いてる(?)からかなぁ。…喉からでかかった言葉をリカはすんでで飲み込んだ。康一にそこまでの話は聞かされていないはずだから。
「やっぱり承太郎の方がかっこいいかな」
(それは本人に言ってあげれば…)
リカの惚気にうげぇと舌を出してから、康一は「続きはホテルで」と写真をしまいつつリカに促した。
「ちょっ、今ホテルとか言った?」
「あ、ジョルノ」
急にぐい、と2人の間に肩を割り込ませてきたのは、噂をすれば何とやらのジョルノ本人だった。威嚇丸出しの鋭い目付きでじろじろ見下ろされ、康一は口角を引き攣らせる。堀深く綺麗な顔立ちなので迫力がすごい。名前を呼んだのだから、リカの知り合いなのだろうが……。それにしてもすごく不愉快そうに観察されている。
「ホテルって?今から2人で行くんですか?リカ、君の住んでる部屋に?それとも別の?続きって何の続きです?」
「ジョルノ、すっごい偶然ね。でも学校はどうしたの?またサボり?駄目だよちゃんと行かないと」
「大事なときは行ってますよ…今日はタクシーのアルバイト」
「それならちょうど良かった!今から康一くんと乗せてくれない?日本の故郷の友達なの」
「ふぅん……構いませんよ僕は。乗せてあげたらあなたたちがどこのホテルに行くのかわかりますし…何なら部屋まで荷物を運ぶよ。というか部屋まで行くんですか?よし、帰りも送ってあげるから僕もそこで待たせてもらうことにしよう。もちろん同じ室内でね」
「ジョルノって免許持ってるの?」
「無事故ですよ」
気軽な応酬だ。というか今のやりとりだけで康一には充分察することができた。
真顔で饒舌なジョルノのこめかみに血管が浮いていたからだ。
(ああ承太郎さん…!やっぱりリカさんを1人でイタリアなんかに行かせるべきじゃなかったんだ…!!)
康一の読み通りジョルノは嫉妬に怒り狂っていた。
なんだこのぽっと出のちんちくりんな日本人は。なんでこいつがリカと2人でホテルに行くんだよ。僕でさえロビー止まりなのに(しかも勝手に押しかけている)。
もっとも康一にとってはジョルノの方がよっぽどぽっと出なのだが、ジョルノはそんなこと眼中にないのだった。
「へ、部屋はちょっと、困るなぁ〜。積もる話もあるしぃ〜?」
「会話に入ってこないでくれます?」
日本人らしくヘラヘラしている康一に余計に苛立ち、ジョルノはぴしゃりと言い放った。
「大丈夫?ジョルノ。ちょっと疲れているんじゃないの…みんなで後からご飯でも食べに行く?」
「リカ……あなたって本当に優しいけどにぶちんですね…。ま、そういうところも良いんですけど…」
ジョルノは思った。この日本人にちょっと痛い目みせてやろう。何故なら、リカが彼とすごす時間がまったくの無駄だと思うからだ。
そして3人でご飯を食べに行き、リカから彼や日本の話をされるのなんてまっぴらごめんだった。
日本からイタリアに単身やってくるんだからそれなりにお金はもっていそうだし、リカはジョルノがそういう風に小遣い稼ぎをしているのを分かっている。
ちょっと痛い目にあってもらって、もうイタリアには来ないぞ、とこの小柄な彼に思ってもらおう。彼がいなければ、リカはこのあとジョルノとデートをしてくれるはずだ。
「…冗談はさておき、リカの友達なら1000円ぴったしでいいですよ。チップもなしで。ただし荷物は自分で助手席に運んでよね…」
「安っ。…やすぅ……」
と引いている時点でリカはジョルノが何をしようとしているか気付いていた。と同時に康一がやすやすお金を取られるようなことにはならないだろうとも確信していた。
案の定、康一のキャリーバッグだけを乗せて走り去ろうとしたジョルノのタクシーは、エコーズの力で地面にめり込むことになる。
「リカさん、大丈夫なの?ああいう連中と交流していて」
「ジョルノは良い子よ」
「僕じゃなかったら荷物全部持ってかれてたじゃないか」
まったくぅ〜とぼやきながら悠々と動けない車に向かう康一の背中は頼もしい。
リカは彼の成長に嬉しくなった。
「僕言われてるんだよ…あなたが妙な連中とつるんでいたらはっ倒してでも日本に連れて帰ってくれって。承太郎さんに」
妙な連中どころかギャング組織に入団してしまっているリカはとたんに悪寒を感じた。
どうにかジョルノとのことを口止めしないとまた承太郎から恐ろしい電話がかかってくることは間違いない。
「ついてないな…車が急に壊れるなんて」
バタンと車のドアが開く音にリカは現実に戻ってきた。降りてきたジョルノは爽やかな微笑を浮かべており、どことなく満足そう。
それを見たリカにはわかった。
あーあ、またやったな……。
康一くんも優しいんだから…逃げてもいいなんて言わない方がいいのに…。
「それじゃリカ。またあとで」
康一の荷物はすでにカエルに変えてある。
これで康一への嫌がらせもできたし、荷物がないなら2人はホテルどころじゃなくなるだろう。
ジョルノは清々しい気分で全てを置き去りにその場から走り去った。
「…康一くん、キャリーバッグ、無事?」
「え?何言ってるのリカさ……っ、あぁ!?!」
「何?やっぱりなくなってる?」
「カ、カエルだ!僕の荷物がなくなって、代わりにカエルがいる!」
座席から元気よくジャンプしてきたカエルを康一は「うへぇ」と避けた。どう考えても怪しいカエルだ。ジョルノが紙幣を生き物に変えるところを何度か見ているリカはとっさに跳ねていくカエルを追った。
「あっ!リカさんどこ行くの?!」
「康一くん、ジョルノは私に任せて!汐華初流乃を探して〜」
「ま、任せてったって……あぁもうっ!」
「〈darkness〉!!」
カエルが側溝に飛び込もうとしていたので、リカはすぐにカエルの影にダークネスを潜ませた。これでカエルがどこに行こうとリカには感じ取ることができる。
ジョルノは『またあとで』と言っていた。きっと追いかけてきてねって意味で。
(ジョルノってかまってちゃんだよね…。)
甘やかしたら調子に乗るけど、時々すごくひとりぼっちみたいに見えるから…いじわるしなくてもちゃんと遊んであげるのに。
ダークネスの気配を追って地面を蹴った。