Love the darkness -5-
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「うぐぐぐっ……ぐぇえ!」
「きゃあぁああっっ!!」
メイク直しから戻ったらカフェテラスが騒然としていた。
「えっ……ちょっと…何??」
「ああリカ。おかえりなさい」
私たちの席から少し離れたところで地面に男が転がって苦しんでて、通行人の女性が怯えている。
その光景を紅茶を飲みながら眺めているのがジョルノで、騒ぎに不愉快になりつつ座り直したのが私。
「誰かっ!誰か来てぇーーーっ!!」
野次馬が集まるのをジョルノは横目でどこか楽しそうに観察してるみたいだった。
倒れてる男の首には蛇が巻きついている。
なんとなーくことの顛末を察して私はジョルノの顔を覗き込んだ。
「…ねぇジョルノ。……あの人に何かした?」
「何かって?別に何も。…そういえばずいぶん窮屈そうなネックレスをしてますね」
にこりと私に見せる微笑みはとても優美なものだけど、私は笑えなかった。確かにあいつ、大きな金のネックレスをしてたわよ。
でも絶対ヘビなんかじゃなかった。ジョルノがあの人に何かしたんだわ。
「いい気味だ…身の程をわきまえないからこうなる」
ゾッとした。
男は蛇に首を絞められて、顔を真っ赤にしてもがき苦しんでる。
ジョルノがそれを薄く笑ったまま眺めてるから…目だけがとても冷たくて怖かった。
きっと本気でそう言ってるんだって気付いて、あの日のディオの姿を重ねてしまった。
「ねぇ。リカもそう思いませんか?あの低俗な男のせいで無駄な時間をすごしたって」
「…ジョルノ。もう行こう?なんか騒ぎになってるし…ちょっと怖いから…」
「???」
飲み物はまだ残ってたけど、私はジョルノの袖を引っ張って少し強引にテーブルから離れて歩き始めた。
引かれるままとことこと私の後ろをついてくるジョルノは不思議そうにしている。
「…リカ?なんか怒ってます?」
「………人が苦しんでるの見て笑ってるなんて…」
なるべく後ろ頭を向けたままちらりと振り返った。ジョルノは驚きとショックを受けてるように目を丸くしている。
そんなの私の方がショックよ。
一般人に平気でスタンド使って傷つけて、楽しそうにしてるなんて…そんなの……そんなの。
阿鼻叫喚の真っ赤な夜を思い出した。ディオの輝く金髪だけが、その中でキラキラ輝いていた。
「でもリカ、あなたもあいつのせいで嫌な目にあったでしょ?出自までけなされて…自業自得だと思うことの何が悪いんです?」
確かに……ナンパを断ったら私にアジアの血が混ざってることで差別してきたけど…嫌な気分にはなったけど…。(それで一回席を離れたの。私もぶっ飛ばしそうなぐらいには怒っていたし。)
「今までもそういうことあったし…自分の身は自分で守れるから」
「僕が許せないんです。あなたに気安く声をかけてきた挙句、テーブルの下の足をカメラで写そうとしていた」
「…そうなの?」
急な新事実に思わず立ち止まってくるりとジョルノを見上げた。
ジョルノは嫌そうに咎めるみたいに顔をしかめている。そして急に癇癪を起こした子供のようにわめき始めた。
「ほら、やっぱり気付いてなかった!それに注射の痕だってたくさん付いていたでしょ!あいつ薬もやってる!あんな汚い奴らにあなたに近寄る権利なんてないんだ!虫唾が走るぐらいに不愉快なんですよ!いいですか!あんな奴と親切に会話してやる必要なんてないんだ!関わるのなんて無駄なんです!無駄だ何もかもが!僕らの間に入ってくる全てが無駄な存在なんですよ!」
「……。」
「せっかく、2人の世界を楽しんでいたのに……っ」
勢いよく喋り倒したと思ったら急にしょんぼりその場にしゃがみ込んでしまったジョルノに圧倒されて、私はしばらく唖然と動きを止めていた。
正直急に倫理観おかしくなるのも、無駄無駄言うのもやめてほしい…けど。
「……確かに、ちょっといい気味って思ったかも…」
「!」
ぱぁ、とジョルノの目が大きくなってキラキラ明るくなったら、私も嬉しくなっちゃうから。また甘やかしてしまった…ジョルノがディオみたいにならないように、ちゃんと見てあげなきゃいけないのに…。
(…大丈夫だよね…。)
さっきだって、結局は私のために怒ってくれてたんだもんね。私を守るために…。
のどがきゅっと締まったみたいだった。
子供のときディオに首絞められたの思い出したから。
「痛めつけて思い通りにしようとするなんて、駄目」
「…わかりました。なるべくしません。あなたの前では」
キリッと断言してるけど、全然反省してないよね?それ…。
私は呆れて空を仰いだ。
「…なんか、今ジョルノ嫌いかも」
「えっ……ど、どうして……!許してください、リカ」
「帰りたい…」
「ま、待って!あなたに嫌われたら生きていけません!」
私を引き止めようと手を伸ばしてついてくるジョルノと早足の私はちょっと目立ってたと思う。
その急に気弱になるのは誰に似たのよ。
おかしくなってちょっと笑った。
「よぉーーーブチャラティ」
「アバッキオか…どうした?」
「さっき街でリカの野郎を見かけたぜ」
「…そうか」
「なんか男子学生をひざまずかせてから金魚のフンみてーに背中にくっつけてたな」
「………。」
「…あいつ、なんか…アブネー女なんじゃねーか…?やっぱり……」
「……ああ、まぁ…そうだな……。そうだと思う」
その学生とやらに妙に同情してしまうブチャラティだった。