Love the darkness -5-
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「ミスタ!あんたは大地獄っ」
「へ?」
アジトでブチャラティが来るのを待っている間の出来事。
突如リカに指を突きつけられてミスタは面食らった。大地獄とは穏やかではない。
リカは目を細めて何やら妖しい様相だ。
「日本の占いよ……天国・地獄・大地獄…死んだらどこに行くのかわかるの…ミスタ、あんたは……大地獄!」
「だああっ!何度も言うなってぇ!」
「フーゴも大地獄っ!」
「人をいきなり地獄に落とすなんて…失礼ですねあなた」
狼狽えるミスタに比べてフーゴはいかにも馬鹿馬鹿しいといった感じでまた本を読み始めた。
「ア・バ・ッ・キ・オだから…えーっと、はい!あんたも地獄行き!」
「ふざけんな!なんでそんな地獄率高ぇんだよ!」
「リカ!俺は俺はーッ?!」
「ナ・ラ・ン・チャ、だから……えーっと、あ!やっぱりナ・ラ・ン・チ・ヤで地獄行き!」
「嘘だろぉぉおお!!?」
「ぜ、全員かよぉ…」
膝をついてショックを受けているナランチャを見てミスタがごくりと唾を飲み込んだ。謎の日本式占いを駆使するリカに畏怖を覚える。まるで本当にそうなることを予見されているように思えるのだ。
「仕方ないよね。これ、何回やっても結果は同じだから。私にはどうすることも出来ないの」
リカはさめざめとため息をつくが、どこかうすら笑いを浮かべているようにも見える。
「うわぁぁ!嫌だぁーッ!リカ!そんなこと言わずにもう一度占ってくれぇーッ!!地獄になんか行きたくねぇよぉおお!!」
「落ち着いてくださいナランチャ。彼女、指を使って何か数えている。…おそらく日本語の音の数で」
ガチャリとドアが外から開いて、全員反射的に押し黙った。
なんだか騒がしいなと思いながらアジトにやってきたブチャラティが中を覗くと、膝を折ったナランチャがリカの足にすがりつき、それを呆れた感じでフーゴが見ていて、アバッキオとミスタは何か狼狽えているようだった。
「……??…何してるんだ、お前たち」
「聞いてくれよブチャラティィ!!リカが日本の占いをやったんだ!俺たちは全員地獄に落ちる運命なんだぁぁあ!!」
「その前に…女性の足にしがみ付いてるのは感心しないな、ナランチャ」
「え?あ……ご、ごめんよブチャラティ」
「私に謝ってよ」
「え?……。」
結局リカには何も言わないままナランチャは椅子に座り直した。ちょっと納得いかないリカである。
「なぁリカ。その占い、ブチャラティにも試してみてくんねぇか。もしかしたらよー、俺たちゃ仲良く地獄行きかもな。俺たちがギャングだってことを神様はちゃーんとわかってるのかもしれねぇ」
「ただの指占いですよそれ」
神妙な面持ちのミスタに謎を解いたフーゴが声をかけたが、笑いを吐き出しながらアバッキオがその肩を掴んで止めた。
「(まぁいいじゃねーかフーゴ。あのブチャラティが地獄行きって言われた時の反応…少しばかり気になるぜ)」
「えーっと、ちょっと待ってね……ブ・チャ・ラ・ティ・イ、だから…天国、地獄、大地獄…天国、じ…………ブチャラティは大天国」
「おいてめぇふざけんな!なんだ急に大天国って!なかっただろそんなん!」
割と真面目にイラっとしたようだ。食ってかかるアバッキオにリカはちょっと焦っていた。
ブチャラティには世話になっているし、ギャングだけど聖人みたいに優しくて懐が深い。そんな彼に地獄行きだなんて手遊びでも言えない。
「(大天国……日本にはそういう概念があるのか?)」
椅子に座って成り行きを見守っていたブチャラティは、リカを囲んで仲間たちが楽しそうにしていることに思わず笑みを浮かべた。皆の心を優しくほどいてくれる彼女のような人は、きっと大天国に行くのだろう。と同時にナランチャなんて母か姉のように彼女を慕っているので、不用意に触ったりしないように教えないととと少し苦くも思った。
「ねぇ。気にしないでね。ブローノは天国に行くんだからね」
「え」
気がつくとブチャラティが眉間にシワを寄せていたので、気分を悪くしたかもと思いリカは焦った。苦肉の策で名前の方を取ったら4文字で天国に行ける。
「マジにわからねぇ。どういうルールのゲームなんだ…納得できねぇ」
「リカのルールでしょ」
呆れるアバッキオとすまし顔のフーゴの声は遠かった。ブチャラティにとっては皆が何をそんなに天国だ地獄だと騒いでいるのかはどうでもよくて、ただ今しがたリカに名前を呼ばれた瞬間時が止まったように感じられた。どう呼ばれたって自分は自分なのに。おかしなくらい彼女を近くに感じて、特別な響きがした。
こちらを覗き込んでくるリカは少し不安そうに眉を下げて瞳を揺らしている。もう一度、ちゃんと顔を見ながら名前を呼んでもらえたら。想像したら愛しさが込み上げた。それはブチャラティにとってとても特別な関係に思えたからだ。
「…何を揉めているのかと思ったら……。馬鹿馬鹿しい。俺たちギャングが天国なんか行けるわけないだろう」
「それならよぉー!全員で地獄でのし上がってやろうぜぇぇ!」
ナランチャが急に復活した。ブチャラティと仲間たちがいたら、彼はどこにいたって関係がないのだろう。
「君も一緒に来るよな?リカ」
急に名指しされてリカは焦った。
ブチャラティがふいに見せる微笑みが苦手だ。
全部丸ごと受け入れて許してくれそうな慈愛に満ちた眼差しだった。たぶんこの感じで告白とかしたら相手は一発KOだと思う。
「私、行かない」
悔しくて反抗してみた。ブチャラティはそれでも嬉しそうに微笑んでいる。
「そうか。それは……残念だな」
「行かないからね」
「わかったよ」
「本当に?話聞いてる?」
「はいはい」
「行かないってば!」
「寂しくなるな」
「………っ、天国なら、別にいいけど……!」
「……死んで一緒に天国行くって……夫婦みたいだなぁ」
「「「………。」」」
ぽつりとしたナランチャの一言に全員が押し黙った。
「ぐへぇっ!?!」
いたたまれなくなってしまって、とりあえずダークネスでナランチャに一発入れてから私はアジトを後にした。
「ジョ・ル・ノ・ジョ・バ・ア・ナ」
「…何してんです?リカ」
次の日図書館でジョルノにも名前占いをやってみた。顔が近いのが気になるけど、心の中で天国地獄大地獄を唱えながら指をなぞる。
「天国だね、ジョルノも」
「?……。」
「気にしないで」
「いえ…僕も常々思っていたんです。リカがいるところ…それこそが天国なんじゃあないかって」
「なんか……みんな変だね」
思っていたリアクションと違ったらしい。ジョルノは綺麗な微笑を崩して、少しつまらなさそうにしていた。