Love the darkness -5-
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(困ったな………。)
カフェのテラス席に座って頬杖を付き、ブチャラティは悩んでいた。
これからここにやってくるであろう少女とのことについてである。
『くるであろう』としか言えないので確信しているわけではないけれど、彼女はこの時間にこの辺りにいることが多いから。特に約束しているわけではないのに待っているのである。
悪く言えば出待ち、軽いストーカー行為なのかもしれない。
「あっ、ブチャラティだぁー。またいるぅ。チャオチャオ〜」
軽く手を上げてこっちに歩いてくる彼女を見たとたん、辺りが光り輝いて見えるのだから重症だ。
「またとはなんだ。たまたま見回りの時間に君がここを通るんだろ」
「見回りしてないじゃん。優雅にティータイムしてるじゃん…」
「休憩ぐらいしちゃ悪いか?」
「全然いいよ!私もミルクティー飲もうっと」
「こっちに来て座るといい…。本当は会えるといいなと思って待っていたんだよ」
テーブルを挟んだ正面の椅子をずらしながらブチャラティがリカを呼んだ。
そうするとはつらつとした彼女が少し照れて大人しくなるものだから、普段言わないようなセリフも彼女の前では自然と口から出てしまう。
自分のせいで彼女が心を乱すのがおかしくてたまらないのである。
「ブチャラティといると、お姫様になった気分」
メニューを持ってきた店員にロイヤルミルクティーと新作のタルトを注文して、メニュー表を返していると突然言われた。
思わず固まった手からスタッフがメニュー表を引き抜く。乱されているのは自分の方かもしれない。
「どうぞごゆっくり」
過剰ににこにこと意味ありげな笑顔で去っていく顔馴染みのスタッフ。なんだか気まずい。リカは両手で頬杖をつきにこにことしている。
(困ったなぁ……。)
ブチャラティは浮ついた自分を反省した。
なかなかどうして、思った以上に彼女と過ごす時間が多いようで、いつの間にか街の人たちからお祝いムードで見られるようになってしまった。
別にそういうのじゃない、とは言い切れないけど、ただリカから目が離せなくて。彼女は不思議な人だ。ケンカが強いらしくて相変わらず子供や女性、お年寄りを馬鹿なチンピラから守っているみたいだし、そのせいでパッショーネから目を付けられている。
だからブチャラティがリカと共にいるようにしているのはある意味監視なわけで。パッショーネに害なす人間なら好きにさせておけない。
しかしブチャラティにとっては、共に弱きものを守ってくれる仲間のような存在だった。
「そういえば!イタリアにもスズメっているのね!日本の鳥だと思ってた。冬はまんまるくなって可愛いよねぇ〜!そう思わない?スズメ好き?」
運ばれたケーキをつついているリカはいつも通りどうともない会話を1人で展開している。
しかしそれに『うんうん』とやっているだけでブチャラティの心は癒されてしまうのだった。
「…ブチャラティも食べる?」
「っ、ああ、いや……やめておこう。今は甘いものの気分じゃないんだ」
差し出されたフォークに乗ったケーキから視線をそらした。
お散歩中のおばあちゃんたちの圧力を感じる。
「ブチャラティ、いいねぇ幸せそうで。リカちゃんほんとに美人だねぇ〜」
「ほんと、お似合いだよぉ〜。あんたもリカもいい子だから嬉しいねぇ〜」
「いやぁ…はは……」
否定しきれない自分も何か期待しているようで愚かだ。
「見て!ブチャラティ!スズメよ!おいでおいで〜これおいしいよぉ〜」
リカは足元にきたスズメにタルトのかけらを与えていた。
こういうときに限って話を聞いていないんだから。本当は聞いていて知らないふりをしているのだろうか。だとしたら、そういう関係を肯定してくれてるのか…?良くわからない。
「見て!大きいの持って行った!子供がいるのね!けなげで可愛い〜っ!」
頻繁に一緒にいるせいか、パッショーネの中でも一部がリカをブチャラティの女だと思ってしまっているようで。
おかげでちょっかいをかけてくる輩が減った反面、幹部のポルポに気に入られているブチャラティに一泡吹かせてやろうとリカを狙う奴らも出てくる。
しかし聞く話はそのどれもを彼女が返り討ちにしている話で。
職業上特別な相手を作ることをさけていたけれど、ときどき彼女となら本当に上手くいくかもしれないともんもんとするブチャラティである。
「ちゃんと見てる?ブチャラティ!」
「うわっ」
目の前で耳を引っ張られて思い切り動揺してしまった。好意を寄せる相手の可愛い顔が急に迫ってきたら、そりゃ誰だって驚く。
席に座り直して動揺を隠すために口元を手で覆った。じっと目を見つめると同じぐらいに見返してくる。綺麗で吸い込まれそうだった。
「そりゃあ…見てるさ。ちゃんと」
「ス・ズ・メ!」
「え」
違った。リカは気にしていないようで、またタルトをぽろぽろ分解させながらフォークでちまちまと食べ進めている。
「そういえばぁ、昨日観光客の女の人からお金すってる子がいた」
「見たのか?そりゃ観光の人は困っただろう」
「見た。それで、その子をめっちゃ煽ってやったら、ジェラート奢ってくれたの」
「あのな…そういうときは、近くの警察に相談するとか…」
「『共犯ですね』って言われちゃった。ブチャラティ、私のこと捕まえる?」
「まさか。俺は警察じゃないし…でも、君のことは捕まえといた方がいいかもな」
「ごめんなさい。でもちょっと、楽しかった」
悪戯に、それでいて嬉しそうに笑うこの子はきっとトラブルメーカーだ。
だからポルポまで彼女に興味を持って、俺に『一度連れてこい』だなんて言い出すんだ。
(本当に、…困った……。)
幹部の命令は絶対だ。
目の前の何も知らないリカを見て、少しだけその笑顔が憎らしくなったブチャラティである。
カフェのテラス席に座って頬杖を付き、ブチャラティは悩んでいた。
これからここにやってくるであろう少女とのことについてである。
『くるであろう』としか言えないので確信しているわけではないけれど、彼女はこの時間にこの辺りにいることが多いから。特に約束しているわけではないのに待っているのである。
悪く言えば出待ち、軽いストーカー行為なのかもしれない。
「あっ、ブチャラティだぁー。またいるぅ。チャオチャオ〜」
軽く手を上げてこっちに歩いてくる彼女を見たとたん、辺りが光り輝いて見えるのだから重症だ。
「またとはなんだ。たまたま見回りの時間に君がここを通るんだろ」
「見回りしてないじゃん。優雅にティータイムしてるじゃん…」
「休憩ぐらいしちゃ悪いか?」
「全然いいよ!私もミルクティー飲もうっと」
「こっちに来て座るといい…。本当は会えるといいなと思って待っていたんだよ」
テーブルを挟んだ正面の椅子をずらしながらブチャラティがリカを呼んだ。
そうするとはつらつとした彼女が少し照れて大人しくなるものだから、普段言わないようなセリフも彼女の前では自然と口から出てしまう。
自分のせいで彼女が心を乱すのがおかしくてたまらないのである。
「ブチャラティといると、お姫様になった気分」
メニューを持ってきた店員にロイヤルミルクティーと新作のタルトを注文して、メニュー表を返していると突然言われた。
思わず固まった手からスタッフがメニュー表を引き抜く。乱されているのは自分の方かもしれない。
「どうぞごゆっくり」
過剰ににこにこと意味ありげな笑顔で去っていく顔馴染みのスタッフ。なんだか気まずい。リカは両手で頬杖をつきにこにことしている。
(困ったなぁ……。)
ブチャラティは浮ついた自分を反省した。
なかなかどうして、思った以上に彼女と過ごす時間が多いようで、いつの間にか街の人たちからお祝いムードで見られるようになってしまった。
別にそういうのじゃない、とは言い切れないけど、ただリカから目が離せなくて。彼女は不思議な人だ。ケンカが強いらしくて相変わらず子供や女性、お年寄りを馬鹿なチンピラから守っているみたいだし、そのせいでパッショーネから目を付けられている。
だからブチャラティがリカと共にいるようにしているのはある意味監視なわけで。パッショーネに害なす人間なら好きにさせておけない。
しかしブチャラティにとっては、共に弱きものを守ってくれる仲間のような存在だった。
「そういえば!イタリアにもスズメっているのね!日本の鳥だと思ってた。冬はまんまるくなって可愛いよねぇ〜!そう思わない?スズメ好き?」
運ばれたケーキをつついているリカはいつも通りどうともない会話を1人で展開している。
しかしそれに『うんうん』とやっているだけでブチャラティの心は癒されてしまうのだった。
「…ブチャラティも食べる?」
「っ、ああ、いや……やめておこう。今は甘いものの気分じゃないんだ」
差し出されたフォークに乗ったケーキから視線をそらした。
お散歩中のおばあちゃんたちの圧力を感じる。
「ブチャラティ、いいねぇ幸せそうで。リカちゃんほんとに美人だねぇ〜」
「ほんと、お似合いだよぉ〜。あんたもリカもいい子だから嬉しいねぇ〜」
「いやぁ…はは……」
否定しきれない自分も何か期待しているようで愚かだ。
「見て!ブチャラティ!スズメよ!おいでおいで〜これおいしいよぉ〜」
リカは足元にきたスズメにタルトのかけらを与えていた。
こういうときに限って話を聞いていないんだから。本当は聞いていて知らないふりをしているのだろうか。だとしたら、そういう関係を肯定してくれてるのか…?良くわからない。
「見て!大きいの持って行った!子供がいるのね!けなげで可愛い〜っ!」
頻繁に一緒にいるせいか、パッショーネの中でも一部がリカをブチャラティの女だと思ってしまっているようで。
おかげでちょっかいをかけてくる輩が減った反面、幹部のポルポに気に入られているブチャラティに一泡吹かせてやろうとリカを狙う奴らも出てくる。
しかし聞く話はそのどれもを彼女が返り討ちにしている話で。
職業上特別な相手を作ることをさけていたけれど、ときどき彼女となら本当に上手くいくかもしれないともんもんとするブチャラティである。
「ちゃんと見てる?ブチャラティ!」
「うわっ」
目の前で耳を引っ張られて思い切り動揺してしまった。好意を寄せる相手の可愛い顔が急に迫ってきたら、そりゃ誰だって驚く。
席に座り直して動揺を隠すために口元を手で覆った。じっと目を見つめると同じぐらいに見返してくる。綺麗で吸い込まれそうだった。
「そりゃあ…見てるさ。ちゃんと」
「ス・ズ・メ!」
「え」
違った。リカは気にしていないようで、またタルトをぽろぽろ分解させながらフォークでちまちまと食べ進めている。
「そういえばぁ、昨日観光客の女の人からお金すってる子がいた」
「見たのか?そりゃ観光の人は困っただろう」
「見た。それで、その子をめっちゃ煽ってやったら、ジェラート奢ってくれたの」
「あのな…そういうときは、近くの警察に相談するとか…」
「『共犯ですね』って言われちゃった。ブチャラティ、私のこと捕まえる?」
「まさか。俺は警察じゃないし…でも、君のことは捕まえといた方がいいかもな」
「ごめんなさい。でもちょっと、楽しかった」
悪戯に、それでいて嬉しそうに笑うこの子はきっとトラブルメーカーだ。
だからポルポまで彼女に興味を持って、俺に『一度連れてこい』だなんて言い出すんだ。
(本当に、…困った……。)
幹部の命令は絶対だ。
目の前の何も知らないリカを見て、少しだけその笑顔が憎らしくなったブチャラティである。