Love the darkness -5-
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「っはぁーーーありえない。ほんとにありえないんだけど!」
「マジにありえねぇ。無理なんだよもう。絶対無理だわ」
一仕事終えてアジトに帰ってきたリカと
アバッキオはなんとも剣呑な雰囲気だった。
部屋の奥で新聞を読んでいたブチャラティが顔を上げる。
出会い頭に取り逃した赤い車を追いかけ、現場を押さえてくるように2人に命令していたのだが…。何がどうなっているのかわからず肩をすくませた。
「お前絶対向いてねぇよ。辞めろ今すぐ。そのスタンド組織向きじゃねぇわ」
アバッキオはむすっとしているリカに愚痴りながらテーブルについた。リカも疲れた様子を隠すことなく椅子に座る。ブチャラティはなんとなく声をかけそびれて黙ったまま2人を見守った。
「向いてないのはそっちでしょ…キュルキュルキュルキュルいってるかと思ったら車よりパワーないとか…また逃げられるとこだったじゃん」
言いながらリカはさっきまでの任務を思い出していた。
男が横流ししていた組織の麻薬を車のどこに隠しているのか探るため、ムーディブルースのリプレイを目撃することになったのだが。
なんだか古い音に合わせて男の動きが逆再生され、速くなったり遅くなったりしているのを見ていたらふざけてるとしか思えなくなったのだ。まるで謎のコンテンポラリーダンスをする中年太りのおじさん。
「…………(笑)」
「てめ笑ってんじゃねぇかよ!」
下を向いて手で顔を隠したまま震えるリカにアバッキオは怒りを覚えた。そして同時に先ほどまでの任務のことを思い出した。
おらぁぁぁぁ!という甲高い気合の掛け声と共に逃げようとする車の影を掴んでぶん投げたリカ。
真っ赤な車は影に引っ張られ街の古い柱時計に激突した。ぼごぉんという爆発音と共に投げ出される中年太りの男。ロケットのようだった。そして柱時計が大破して中からぶらんと出てきたおもちゃの鳩がクルックーと鳴いた。
咄嗟に口を押さえるアバッキオ。
「…………(笑)」
「何?何笑ってんの?感謝してよね私のおかげで麻薬も男も押さえることができたんだから!」
「いやマジで…爆発したのかと思った…何もかも」
「ふふふっ、違う違う!爆発なんかしないって…飛び出ただけでしょ、おじさんが…っ」
「お前ふざけんなマジで!普通飛び出ねぇんだよあんなデブ!」
「「(笑)」」
うっかり観察していたら2人して楽しそうに笑い始めた。初対面で無茶苦茶ケンカしていたがどうなっているんだろう。
ブチャラティはちょっと焦って咳払いで2人の気を引いた。さすがにブチャラティがいることはわかっていたので、2人はすぐに笑うのをやめてブチャラティの方を向いた。
「……で?見つけた男と麻薬はどうしたんだ?」
「darknessに沈めてあるよ。……重いから浮いてこないかもしれないけど」
「………。」
リカの発言と同時にアバッキオがくるりとブチャラティから背を向ける。絶対笑ってるなこいつ…とブチャラティは呆れた。
「爆発に巻き込まれて白い粉まみれのおっさんがな」
背を向けたまま便乗してリカをさらに笑わせている。
どうやらお互いの何かがお互いのツボにハマっているらしい。こんなにはっちゃけているアバッキオを見るのは珍しいし、涙まで浮かべて笑いをこらえているリカなんて初めて見た。
ブチャラティはアホだなぁと思う反面やはり焦っていた。付き合いは自分の方が長いはずなのに、アバッキオのおかげで知らないリカの姿を見ることになるなんて。
「まぁ……奴を捕まえたんならいいさ」
ついでに報復も終わっている気がする。
ブチャラティは畳んだ新聞をデスクに置いてリカに微笑んだ。
「麻薬チームに奴を引き渡したら、ゆっくりするといい。ケーキでもどうだ?」
「ケーキ!ケーキだってアバッキオ!なんにする?」
「俺か?……チーズケーキで」
「私もー!」
「…。」
アバッキオを誘ったつもりはないんだが。
哀愁を背負うブチャラティに気付いたアバッキオだったが、意味がわからず「なんだよ?」と怪訝に問いかけるに終わった。
「おいしいっ!ブルーベリーソース最高〜〜っ」
「バカお前、大事なのは生クリームだっての」
「いや、下のタルト生地だな」
結局仲良く3人でカフェでチーズケーキを食べていたら、街の人に「楽しそうでいいねぇ〜」なんてクスクス笑われた。