Love the darkness -5-
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その日リカは妙な光景を見た。
新しい憩いの場を開拓しようと普段行かないカフェのテラス席を楽しんでいた最中だ。
遠目の路肩に赤いセダンが停まっている。
そのセダンの周りを、さっきから長髪の男がぐるぐると何か探すようにあさっていた。
「………。」
あと1センチほどコーヒーがカップに残っているけれど、リカはおもむろにそれを置いて立ち上がった。どことなく人が寄りつかないそこにとことこ近づいていく。
「その車に乗ってた人、そこのお店に入っていったよ」
「!…」
アバッキオとの邂逅である。
背後からの声に振り向いたアバッキオはつい気を取られてじっとリカを見た。
単純に見栄えのせいでもあったし、少女から不思議な雰囲気を感じたからだ。それから少し見惚れてしまった自分に悔しくなって顔を歪めた。
「てめぇ、なんでわざわざ顔突っ込みに来た?関係ねぇだろ……どっか行ってろ」
「だって何か探してるみたいだから…警察の人でしょ?あなた」
「?!」
再び車に向き直って赤い車のタイヤを調べ始めところで地雷を踏まれ、アバッキオは再びぐるりとリカを見た。
普通自分のような男に睨まれたらどんなやつでも怯む。しかしリカは不思議そうにその場でこちらを見つめるだけ。妙なやつだな、とアバッキオは思った。
「なんでそう思った?」
「いかにも捜査してるって感じだから。知り合いに警官がいたからよく見てたの」
「そーかい。そいつは知らない奴に声をかけるなって教えてくれなかったのか」
「口酸っぱく言われてたよ。たくさん助けてくれたし…感謝してる」
「ならそいつのところに戻りな。俺は警察じゃねーしお前にゃ関係ねぇ」
「もういないの」
少女が少し眉根を寄せただけで立ち昇る悲壮感にアバッキオは悟った。おそらくその警官も殉死したのだろう。かつての親友を思い出して苦味が胸から喉を圧迫した。
「だから私も、困ってる人を助けようと思って」
にっこりしているリカにアバッキオは疲労を感じた。面倒くせぇしペースを握られるようで面白くねぇ。
「俺が困ってるように見えたってか?」
「見えたし、車ごそごそしててみんなを怖がらせてる」
確かに、周りに見えない壁でもあるかのように人が車とアバッキオを避けている。そこにリカが混ざってだいぶ目立っていた。
(ったく……目立たず証拠を押さえてこいって言われてんのに……クソが)
さっさとこの場を立ち去るべきだとアバッキオは判断した。しゃがんでいたのを立ち上がると、リカの肩口を掴んで数歩さらに下がった。
「てめーは失せろ。俺は別に困ってなんかねぇ」
それから自身のスタンド『ムーディ・ブルース』を発言させた。早く探し物を見つけて立ち去ろう。車のドアを殴って鍵を壊そうと思ったのだ。
リカは心の準備を全くしていなかったので、目の前にスタンドが現れて軽くパニックを起こしていた。
「わぁ、全身タイツ!」
パニックで思わず見たままの感想を口にしていた。それに同じく驚いたのはアバッキオである。掴んでいたリカの服を反射的にさらに固く握りしめた。
「てめー!スタンドが見えてやがるなッ!!?」
「みっ、見えてないです!」
「その返事がもう見えてんだよ!」
ということはこいつ、まさか組織の人間か!?
この赤いセダンの持ち主の仲間かもしれない。その可能性をまったく考えていなかった。もはやアバッキオの頭から捜査のことは抜けていた。リカを掴んだまま至近距離でがくがく揺さぶる。
「言え!!どこのチームの野郎だ!!」
「えっとえっと組織とか知らないです!」
「知ってんだよその口ぶりが!」
「か、簡単に教えるなって言われてるから……」
「誰にだ!」
「……ブチャラティ……」
「!?そんなわけあるかぁ!俺は何も聞いてねぇぞ!」
「え?」
「……えっ」
思わずお互い間抜けな声を出してしまった。
どうやらお互い、ブチャラティの知り合い=ブチャラティのチームであることを思いついたらしい。最も古株のアバッキオの心中は大忙しだった。単純に目の前の美女が組織の仲間であるなら誰だって嬉しいはずだ。しかしひょろひょろの女なんか自分の仲間に相応しくないとも考えていた。ムーディブルースを全身タイツ呼ばわりされたし……。
どうしたものかしばし呆けていると、後ろからバタム!キュルキュルキュル……!!と穏やかではない音が耳に刺さった。いつの間にか調べていた車に男が乗っている。奴は顔面蒼白で大量に汗をかいていたが、にやりと笑ってハンドルを思い切り捻った。
「危ねぇッ!!」
こっちに突っ込んできた車にアバッキオは咄嗟にリカごと倒れて難を逃れた。無関係(?)な少女まで一緒に轢かれるところだった。
車は猛スピードであっという間に逃げ去っていく。それを見送るしかないアバッキオに悔しさが滲んだ。
「クソが……っ!」
しかし彼の心を平常に戻したのはリカだった。元々アバッキオを手伝うつもりだったし、男が逃げた原因が少なからず自分にある気がして。わざわざ自分を庇って倒れてくれたアバッキオに正義の信念を感じていた。
「…『darkness』…」
アバッキオの体の隙間からすっと手を伸ばして逃げていく車に指を向けた。射程距離圏内。車の影にダークネスを挟ませた。
「お前今……何した?」
「私のスタンド…。これで車は追跡できるから、大丈夫」
耳元に吐息がかかってぞわぞわする。それで初めてアバッキオは自分がリカを押し倒しているのを思い出した。どうにも面倒なことになったがこれは間違いなく美味しい状況。
「てめーやっぱり……スタンド使いか」
「そう。…手伝おうと思ったんだけど…余計なことしちゃった」
「間違いねぇな。余計な仕事を増やしやがって…どう落とし前つけてくれんだ」
「とりあえず…車、追いかける?」
「……あーーーー………」
一度は取り逃したものの、目下の少女は車は追跡できると言っているし…あの男の面が割れている以上、どうせすぐに捕まるだろう。
何より状況的にやる気をなくしてしまっていた。今のアバッキオはどうしたらできるだけ長くこの体勢を保てるかなとか本能的なアレに理性が負けていた。リカのピンチである。
しかしそこに駆けつける1人の男がいた。
愛する女性のピンチを悟ったのだろう。いや、愛する街の住民たちに「若いカップルがもめちょるよー」と助けを求められ、なんかそんなことこの前もあった…と嫌な予感がしながらやってきたのは言わずもがなブチャラティその人である。
「もーいいから!離してよっ!」
「いいや駄目だね。てめーみてぇな怪しい女誰が逃すか!ブチャラティの知り合いってのも勝手に言ってるだけかもしれねぇ」
「だから!先に車!追いかけた方がいいんじゃないの?!」
「いいや、てめーの素性を調べるのが先だ!いいから大人しくしろ!」
たどり着いた路上で見た光景にブチャラティは頭を殴られたようなショックを受けた。
元警官の特性か、アバッキオが地面に伏せたリカの両手を背中で拘束し、馬乗りになっていた。瞬間メラメラと怒りが燃え上がり、ブチャラティは2人に近付きながら仲間に指を突きつけた。
「てめーアバッキオ!!今すぐそこをどけッ!彼女に乱暴するのはこの俺が許さねぇッ!!」
「うぉっ…」
突然向けられたものすごい気迫にアバッキオの手から力が抜ける。リカは急いで起き上がった。そして後頭部でアバッキオの顎を打った。
「ぐぅっ!!?ちくしょう!この…クソ女!!」
「いたい〜〜っっ!もうっ!どいてってば早く!!」
「いいから2人とも離れろ!はぁ……まったく…!なんてことだ…!」
アバッキオは顎をさすりながらヨロヨロと立ち上がった。目の前にはリカに手を差し伸べ優しく頭を撫でる上司の姿。親しげな光景にアバッキオは狼狽えた。
「どーなってやがるブチャラティ!そいつはスタンド使いだッ!俺はそんな奴知らねぇ!お前らどーゆう関係なんだッ?!」
「どういうって……彼女は……」
ブチャラティは守るようにリカの肩を抱き寄せたまま言い淀んだ。まだ頭が痛むのか涙目で見上げてくるリカがとんでもなく愛しい。けれどそんな感情アバッキオの前で曝け出すのはとてもじゃないが出来なかった。なんとなく…自分の人間らしさというか青年らしさをアバッキオに知られるのは…長い付き合いだけれど気恥ずかしい。1人の女性を愛するという概念があまりないのだ…ギャングには。
リカの肩を離して咳払いしながら姿勢を正した。
「…紹介する前に揉め事を起こすなんて思っちゃいなかったが…新しいチームメイトだよ。リカは俺たちの仲間だ」
「なにぃ?!」
仲良くしろよ、と何度目になるかわからないが釘を刺す。アバッキオは受け入れがたいのかわなわなと震えていて、リカも思い切り顔をしかめていた。
「私、ちょっと無理かもしれない。彼、人の話聞かないしすぐ手を出すし…」
「あぁ?!こっちこそ無理だわてめーみたいな余計なことに首突っ込んでくるバカ女」
「…あっ!見て!服が破れてる!地面に押し倒されてたから!この服気に入ってたのに!」
「自業自得なんだよ!」
「弁償してほしい!」
「うるせーほざいてろ!」
「ほんと無理なんだけど!この人絶対モテないでしょ!」
「っ?!ブチャラティ!認めねぇからなこの俺はッ!!絶対に!!」
ぎゃあぎゃあと口喧嘩を始める2人にどこか新鮮さを覚える。リカがこんなにもムキになって誰かと言い争うなんて、ブチャラティの記憶にはない。ちょっとアバッキオが羨ましくなってしまった。
「わかったから。2人とも、もう少し離れるんだ」
いつの間にか至近距離で顔を突き合わせている2人の間に入り距離を取らせる。
ブチャラティを挟んで2人はまだ威嚇し合っていた。
色々と前途多難だ……どうしたものか、ひとまずため息しか出ないブチャラティであった。
新しい憩いの場を開拓しようと普段行かないカフェのテラス席を楽しんでいた最中だ。
遠目の路肩に赤いセダンが停まっている。
そのセダンの周りを、さっきから長髪の男がぐるぐると何か探すようにあさっていた。
「………。」
あと1センチほどコーヒーがカップに残っているけれど、リカはおもむろにそれを置いて立ち上がった。どことなく人が寄りつかないそこにとことこ近づいていく。
「その車に乗ってた人、そこのお店に入っていったよ」
「!…」
アバッキオとの邂逅である。
背後からの声に振り向いたアバッキオはつい気を取られてじっとリカを見た。
単純に見栄えのせいでもあったし、少女から不思議な雰囲気を感じたからだ。それから少し見惚れてしまった自分に悔しくなって顔を歪めた。
「てめぇ、なんでわざわざ顔突っ込みに来た?関係ねぇだろ……どっか行ってろ」
「だって何か探してるみたいだから…警察の人でしょ?あなた」
「?!」
再び車に向き直って赤い車のタイヤを調べ始めところで地雷を踏まれ、アバッキオは再びぐるりとリカを見た。
普通自分のような男に睨まれたらどんなやつでも怯む。しかしリカは不思議そうにその場でこちらを見つめるだけ。妙なやつだな、とアバッキオは思った。
「なんでそう思った?」
「いかにも捜査してるって感じだから。知り合いに警官がいたからよく見てたの」
「そーかい。そいつは知らない奴に声をかけるなって教えてくれなかったのか」
「口酸っぱく言われてたよ。たくさん助けてくれたし…感謝してる」
「ならそいつのところに戻りな。俺は警察じゃねーしお前にゃ関係ねぇ」
「もういないの」
少女が少し眉根を寄せただけで立ち昇る悲壮感にアバッキオは悟った。おそらくその警官も殉死したのだろう。かつての親友を思い出して苦味が胸から喉を圧迫した。
「だから私も、困ってる人を助けようと思って」
にっこりしているリカにアバッキオは疲労を感じた。面倒くせぇしペースを握られるようで面白くねぇ。
「俺が困ってるように見えたってか?」
「見えたし、車ごそごそしててみんなを怖がらせてる」
確かに、周りに見えない壁でもあるかのように人が車とアバッキオを避けている。そこにリカが混ざってだいぶ目立っていた。
(ったく……目立たず証拠を押さえてこいって言われてんのに……クソが)
さっさとこの場を立ち去るべきだとアバッキオは判断した。しゃがんでいたのを立ち上がると、リカの肩口を掴んで数歩さらに下がった。
「てめーは失せろ。俺は別に困ってなんかねぇ」
それから自身のスタンド『ムーディ・ブルース』を発言させた。早く探し物を見つけて立ち去ろう。車のドアを殴って鍵を壊そうと思ったのだ。
リカは心の準備を全くしていなかったので、目の前にスタンドが現れて軽くパニックを起こしていた。
「わぁ、全身タイツ!」
パニックで思わず見たままの感想を口にしていた。それに同じく驚いたのはアバッキオである。掴んでいたリカの服を反射的にさらに固く握りしめた。
「てめー!スタンドが見えてやがるなッ!!?」
「みっ、見えてないです!」
「その返事がもう見えてんだよ!」
ということはこいつ、まさか組織の人間か!?
この赤いセダンの持ち主の仲間かもしれない。その可能性をまったく考えていなかった。もはやアバッキオの頭から捜査のことは抜けていた。リカを掴んだまま至近距離でがくがく揺さぶる。
「言え!!どこのチームの野郎だ!!」
「えっとえっと組織とか知らないです!」
「知ってんだよその口ぶりが!」
「か、簡単に教えるなって言われてるから……」
「誰にだ!」
「……ブチャラティ……」
「!?そんなわけあるかぁ!俺は何も聞いてねぇぞ!」
「え?」
「……えっ」
思わずお互い間抜けな声を出してしまった。
どうやらお互い、ブチャラティの知り合い=ブチャラティのチームであることを思いついたらしい。最も古株のアバッキオの心中は大忙しだった。単純に目の前の美女が組織の仲間であるなら誰だって嬉しいはずだ。しかしひょろひょろの女なんか自分の仲間に相応しくないとも考えていた。ムーディブルースを全身タイツ呼ばわりされたし……。
どうしたものかしばし呆けていると、後ろからバタム!キュルキュルキュル……!!と穏やかではない音が耳に刺さった。いつの間にか調べていた車に男が乗っている。奴は顔面蒼白で大量に汗をかいていたが、にやりと笑ってハンドルを思い切り捻った。
「危ねぇッ!!」
こっちに突っ込んできた車にアバッキオは咄嗟にリカごと倒れて難を逃れた。無関係(?)な少女まで一緒に轢かれるところだった。
車は猛スピードであっという間に逃げ去っていく。それを見送るしかないアバッキオに悔しさが滲んだ。
「クソが……っ!」
しかし彼の心を平常に戻したのはリカだった。元々アバッキオを手伝うつもりだったし、男が逃げた原因が少なからず自分にある気がして。わざわざ自分を庇って倒れてくれたアバッキオに正義の信念を感じていた。
「…『darkness』…」
アバッキオの体の隙間からすっと手を伸ばして逃げていく車に指を向けた。射程距離圏内。車の影にダークネスを挟ませた。
「お前今……何した?」
「私のスタンド…。これで車は追跡できるから、大丈夫」
耳元に吐息がかかってぞわぞわする。それで初めてアバッキオは自分がリカを押し倒しているのを思い出した。どうにも面倒なことになったがこれは間違いなく美味しい状況。
「てめーやっぱり……スタンド使いか」
「そう。…手伝おうと思ったんだけど…余計なことしちゃった」
「間違いねぇな。余計な仕事を増やしやがって…どう落とし前つけてくれんだ」
「とりあえず…車、追いかける?」
「……あーーーー………」
一度は取り逃したものの、目下の少女は車は追跡できると言っているし…あの男の面が割れている以上、どうせすぐに捕まるだろう。
何より状況的にやる気をなくしてしまっていた。今のアバッキオはどうしたらできるだけ長くこの体勢を保てるかなとか本能的なアレに理性が負けていた。リカのピンチである。
しかしそこに駆けつける1人の男がいた。
愛する女性のピンチを悟ったのだろう。いや、愛する街の住民たちに「若いカップルがもめちょるよー」と助けを求められ、なんかそんなことこの前もあった…と嫌な予感がしながらやってきたのは言わずもがなブチャラティその人である。
「もーいいから!離してよっ!」
「いいや駄目だね。てめーみてぇな怪しい女誰が逃すか!ブチャラティの知り合いってのも勝手に言ってるだけかもしれねぇ」
「だから!先に車!追いかけた方がいいんじゃないの?!」
「いいや、てめーの素性を調べるのが先だ!いいから大人しくしろ!」
たどり着いた路上で見た光景にブチャラティは頭を殴られたようなショックを受けた。
元警官の特性か、アバッキオが地面に伏せたリカの両手を背中で拘束し、馬乗りになっていた。瞬間メラメラと怒りが燃え上がり、ブチャラティは2人に近付きながら仲間に指を突きつけた。
「てめーアバッキオ!!今すぐそこをどけッ!彼女に乱暴するのはこの俺が許さねぇッ!!」
「うぉっ…」
突然向けられたものすごい気迫にアバッキオの手から力が抜ける。リカは急いで起き上がった。そして後頭部でアバッキオの顎を打った。
「ぐぅっ!!?ちくしょう!この…クソ女!!」
「いたい〜〜っっ!もうっ!どいてってば早く!!」
「いいから2人とも離れろ!はぁ……まったく…!なんてことだ…!」
アバッキオは顎をさすりながらヨロヨロと立ち上がった。目の前にはリカに手を差し伸べ優しく頭を撫でる上司の姿。親しげな光景にアバッキオは狼狽えた。
「どーなってやがるブチャラティ!そいつはスタンド使いだッ!俺はそんな奴知らねぇ!お前らどーゆう関係なんだッ?!」
「どういうって……彼女は……」
ブチャラティは守るようにリカの肩を抱き寄せたまま言い淀んだ。まだ頭が痛むのか涙目で見上げてくるリカがとんでもなく愛しい。けれどそんな感情アバッキオの前で曝け出すのはとてもじゃないが出来なかった。なんとなく…自分の人間らしさというか青年らしさをアバッキオに知られるのは…長い付き合いだけれど気恥ずかしい。1人の女性を愛するという概念があまりないのだ…ギャングには。
リカの肩を離して咳払いしながら姿勢を正した。
「…紹介する前に揉め事を起こすなんて思っちゃいなかったが…新しいチームメイトだよ。リカは俺たちの仲間だ」
「なにぃ?!」
仲良くしろよ、と何度目になるかわからないが釘を刺す。アバッキオは受け入れがたいのかわなわなと震えていて、リカも思い切り顔をしかめていた。
「私、ちょっと無理かもしれない。彼、人の話聞かないしすぐ手を出すし…」
「あぁ?!こっちこそ無理だわてめーみたいな余計なことに首突っ込んでくるバカ女」
「…あっ!見て!服が破れてる!地面に押し倒されてたから!この服気に入ってたのに!」
「自業自得なんだよ!」
「弁償してほしい!」
「うるせーほざいてろ!」
「ほんと無理なんだけど!この人絶対モテないでしょ!」
「っ?!ブチャラティ!認めねぇからなこの俺はッ!!絶対に!!」
ぎゃあぎゃあと口喧嘩を始める2人にどこか新鮮さを覚える。リカがこんなにもムキになって誰かと言い争うなんて、ブチャラティの記憶にはない。ちょっとアバッキオが羨ましくなってしまった。
「わかったから。2人とも、もう少し離れるんだ」
いつの間にか至近距離で顔を突き合わせている2人の間に入り距離を取らせる。
ブチャラティを挟んで2人はまだ威嚇し合っていた。
色々と前途多難だ……どうしたものか、ひとまずため息しか出ないブチャラティであった。