Love the darkness -3-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は今、真っ暗な中に隠れている。
両手に持った蛍光色に光るブレスレットが少しだけ顔と景色を照らしていた。
不思議な光でずっと見ていたい。ここにいたら、時間の流れもおかしくなっちゃってるみたいだった。
そのうちガラガラって玄関が開く音がして、私の耳にも少し聞こえていたんだけど、わざと聞こえていないふりをした。
だってまだ、この魔法みたいな世界に浸っていたいんだもん。
足音が聞こえて、それは何かを探してるようにいくつかの部屋を出入りした。
「………リカ?」
小さく呟かれた名前に反射的に行かなきゃと思ったけど、やっぱりやめた。手元のブレスレットを眺めることの方が大事だった。宝石みたいで、いつまでだって眺めていられる。
足跡が近くに戻ってきて、今度はぼそぼそと会話する声が漏れ聞こえてくる。片方の声が高くて弾けるような可愛らしいものだったので、ホリーさんと会話してるのはすぐに分かった。
きっと私がどこにいるのか聞いてるに違いない。残念だけど、すぐに見つかるようなところにはいないのよ。
「リカ」
まだ私を捜索してるらしい。
さっきより近くから声がして私は余計に隠れるようにして身を小さくした。
だって見つかったら、絶対に怒られるし、馬鹿にされるもん。でも今は、真っ暗なここが私の宇宙なんだよ。
駄菓子屋さんで買ってもらったこの光るブレスレット、本当に綺麗で可愛い……。
パキッて折ったらこんなに光るの、不思議すぎるんだけどぉ!
「…リカ!」
急に勢い良く扉を開けられて、目の前の人物越しの部屋の電気が眩しすぎた。
びくっとなりながら反射的に顔をしかめたら、すぐに頬をつねられた。
「てめぇ〜〜〜、人がこんなに呼んで返事もしやがらねぇとは……学校で何も学んでねぇようだな、あぁ?」
「邪魔しないでよぉ!今集中してるんだから!」
「こんなところに延々入ってちゃあ、熱中症になるぜ」
承太郎は完全に呆れていた。呆れるついでに手で中を仰ぐようにしてくれる。その風すらめちゃくちゃ涼しくて気持ち良くなっちゃうぐらい、中は熱がこもっていたようだ。
私がいたのは模様替え用に新しく買った、大きなクローゼットの中である。
「こいつはな、服をかけて片付けておくための箪笥だぜ。人間用じゃあねぇな」
「見てよこれっ。いっぱい、光ってるでしょ!こうやって並べて腕につけてたら、すっごい綺麗なの!9本ある!ホリーさんが買ってくれたんだよ!承太郎は何色が好きっ?」
とにかくプラスチックの光るブレスレットの感動を共有したくて、承太郎がむっとしてるのなんかおかまいなしにプレゼンを始めた。
「おい」
少し息苦しいなと思ってたら、承太郎はやっぱり不機嫌そうなまま私に両手を伸ばして頭を触ってきた。片手で髪をちょっと乱雑に解かされて、片手でおでこと髪の境目をぐいぐいとぬぐわれて、そこで初めて私は自分が濡れてるのに気が付いた。なんだかけっこう汗をかいている。そういえば帰ってから何も飲んでなかった。
自分でもあごのところの汗を手の甲で拭いて、じっとりしてる短パンから出てる太もものところを擦った。承太郎はぐいっと余計に私を引き寄せて、おでこにキスしてから頭のてっぺんにほっぺたを乗せた。重いし深々としたため息がかかって、そっちの方がよっぽど。
「熱いな」
「平気。ねぇ、承太郎も中で見てみてよ。ほんとに、すっごい明るいんだって」
「そりゃあ中がそんだけ暗いからだろ」
「そうなの?」
「…お前星がなんで光って見えるか知らねぇようだな。夜だからだぜ」
「……暗い方が光って見えるんだ」
今さらどんどん熱くなってきて、私は承太郎に甘えてわざとすり寄ってもたれかかった。
承太郎はおかしそうにくくって笑いながら私をクローゼットから引きずり出して、猫みたいに抱えた。力を抜いていたのでぽろぽろとブレスレットが床に落ちる。もう魔法みたいに光ってはいなかった。
「夜になったら、ダークネスで実験してみな」
「うん…」
「星は」
「星は」
「闇の中の方が」
「闇の中の方が」
「輝く」
「輝く」
そういえば、承太郎の首のところにも星があるね。
そう言おうと思って顔を上げたら、満足そうなグリーンの瞳と目が合った。本物の星みたいに輝いていた。
