Love the darkness -3-
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「おはよぉ〜……」
「コラリカ!顔を洗って髪ぐらいといてから出てきたらどうなんだ」
「……ねむい」
「あっ!ズボンに手を入れて腹なんか掻くんじゃない!」
朝イチでアブドゥルに小言をくらって洗面台に追いやられてしまった。
「早くしろ。後がつかえてる」
「髪もとかしてきなさいって言われてるの」
「ったく…急に3人も増えやがるから…」
後ろから現れた承太郎も寝起きっぽかった。学生帽を被ってない寝癖頭であくびを噛み殺してる。
「承太郎はいいよね。帽子かぶればいいんだから」
顔を拭いて化粧水をパタパタしてたら、承太郎はしびれを切らしたらしく鏡の周りからブラシを取り出した。
「パタパタパタパタ、いつまでかかんだ。そんなもんいるような年じゃねぇだろ」
「お肌のケアは若いうちから続けなきゃ」
「くだんねぇ」
文句言いながら後ろで私の髪をとかし始める。彼が持つ正確な動きのスタンドと同じで、案外丁寧に整えてくれた。大きくて温かい手に撫でられて気持ちいい。
「ほれ、もういいだろ。さっさと行け」
「楽ちんだった!ありがと!」
「占領されちゃ迷惑なんだよ」
「ホリーさんのお手伝いしてくるーっ」
「けっ」ってつまらなそうにしてるけど、態度とは反対に承太郎はちょっと笑ってた。
「今朝は朝ご飯の支度、お手伝いしてくれてありがとう、リカ」
「楽しかった!他にやることある?」
「そうねぇ…それじゃ、今シーツを洗濯してるから、終わったら一緒に干しましょうか!」
「オッケー!じゃあジョセフと遊んでくる〜」
ホリーさんにうふふと見送られ、ジョセフとアブドゥルとテレビを見たり勉強したり取っ組み合ったりして遊んだ。アブドゥルは頭が良くていつも算数を教えてくれるし、ジョセフはいつもジョークで私を楽しませてくれる。
「リカって、ボーイフレンドはいるの?」
「たくさんいるよ」
「あらぁそうなの…。どんなタイプが好み?」
「トム=クルーズ」
「あらぁ……全然承太郎とは違うのね…」
洗い終わったシーツをホリーさんと干しながらおしゃべり。残念そうにため息をつくホリーさんが不思議だった。
「なんで承太郎が出てくるの?」
「はっ!待って!今承太郎と通じ合ったのを感じたわ!あ〜リカのこと考えてる〜早く可愛いリカに会いたいって学校でそわそわしてるわ〜」
「してねーよ」
「きゃああああ!!?」
廊下をのしのし歩いてきた承太郎は血まみれのお兄さんを抱えてた。
ホリーさんのこてこてのアイムファインサンキューを聞いてから一緒に茶室に向かう。
「その人、スタンド使い?」
「ああ。厄介な相手だったぜ。もっとも、この俺の敵じゃあなかったがな…」
「(…承太郎もめっちゃ怪我してるじゃん…)2人とも早く手当てしないとだね」
「おい、てめぇ…何か言いたそうだな」
「承太郎すごい!強い!」
「いいか言っとくがな…この傷はわざとだ。あえて喰らってやったんだ」
「さすが承太郎!すごい!」
「馬鹿にしてんのか?」
やばい、そろそろスタンドでゲンコツとかされそう…。焦ってたら承太郎に抱えられてる学生さんが苦しそうに唸ったので、私たちは茶室に急いだ。
「入るねー」
新しいアイテム、肉の芽についてのなんやかんやがあってからしばらく。
その肉の芽のせいでディオのいいなりになっていた花京院典明さんがまともな人に戻った。
承太郎がものすごい集中力で彼の肉の芽をきれいに引っこ抜いたからだ。
「君は…確か」
ふすまをノックして開けると、花京院さんは布団から半分起き上がって私を出迎えてくれた。頭に包帯巻いてるけど、なんだか高貴な雰囲気。
「ご飯持ってきたの。たくさん食べて早く元気にならなきゃ」
「本当に…不思議な人たちだ。あなたたちの家族を僕は殺そうとしたのに」
(私は家族じゃないけどね)
花京院さんの傍らにご飯を乗せたお盆を置いて、私もそばに座った。
「これね、私が作ったの」
指差した小皿にはちょっと崩れたハート型の卵焼きが乗ってる。
両手で頬杖をついて「食べてね?」って首を傾げたら、花京院さんは少し考えるように下を向いてから、「いただきます」って微笑んだ。
「そうだ、リカ。…あの時、反射的に起きあがろうとした僕を押さえ込んだのは君だろう?」
いきなり一食全部食べるのはきつかったのか、途中で一息ついたところで花京院さんに話しかけられた。
私は育ちの良さそうな綺麗な食べ方の花京院さんを見ながら頷いた。
「だって、動いたら死ぬって言ってたから」
「驚いたよ。背中から影に縫い止められて」
「ごめんね。びっくりした?」
「いいや…何故だか、誰かに抱きしめられてるみたいな温かさを感じて…安心したんだ」
君のおかげで僕はこうして生きている。ありがとう。
ペコリと頭を下げられて意外だった。すごく、プライドが高そうな感じなのに。
「けれど…誰も君の功績に気付いていなかったようだ」
「承太郎が集中してたから、邪魔しないようにしたの」
もしあそこで私が「ダークネス!!」とか気合いで叫んで、承太郎の手がブレたら全てが台無しだったもんね。
「…君はとても、思慮深く素敵な子だ」
「ありがとう」
「それに、料理が上手い」
ぱくりと私の卵焼きを食べてくれたから、私も嬉しくて笑った。
「花京院さんは王子様みたいだね」
「それはとても…光栄です、姫君」
目を伏せて微笑むさまは繊細でかっこよかった。アブドゥルは言わずもがな、ジョセフや承太郎とも全然違う優しさに私は感動していた。
「…今夜暇でしょ?私とおままごとしてくれる?お人形ごっこでもいいよ」
「僕でよければ」
「ジョセフは下手くそなの。全然王子様じゃない」
「そうかな。君の王子様になら誰だってなりたがると思うけど」
この人絶対モテるじゃん!!
眩しい笑顔に見惚れてたら急に襖が開いた。ばぁんと音を立てたそれに油断しまくっていた私は大きく肩を跳ねさせた。
「おい、リカ…なんでてめぇがここにいる?飯はじじいが持ってくことになってただろうが」
「ジョセフ疲れたって言って寝ちゃったよ」
「年寄りか」
真後ろで私を見下ろす承太郎は、ちょっと視線を泳がせてる花京院さんと、減ったご飯のお盆を順番に見てから小さく息をついた。不機嫌そうで嫌になる。
「そいつが俺たちの味方だって保証はねぇんだ。1人でヘラヘラ近付くな」
「花京院さん良い人よ」
「…簡単だなてめぇはよ」
「ふふ、う、ごほっ、ごほ!」
「「……。」」
花京院さんが何故か急にむせた。訝しげに呼吸を整える彼を見ていた承太郎は、やっぱり矛先を私に向けていた。
「ところで、おふくろがお前の卵焼きを味見してやれってうるせーんだが…食うまで黙りそうにないんだ、あのアマ」
「もうないよ。ジョセフとアブドゥルが全部食べたよ」
「はぁ?普通全員分取っとくだろーが」
「承太郎が先にお風呂入るって行っちゃったから…」
「ほぉ。それでついさっきまで敵だった野郎の飯が豪華になったってワケか」
ギラっと帽子のつばから鋭い眼光を光らせる承太郎。視線の先の花京院さんはいつの間に食事を再開したのか、私の卵焼きをお箸で摘んでた。
「……。」
一呼吸置いてそれをぱくりと食べた。承太郎はちょっと揺れた。
「てめっ、良い度胸してんじゃねーか」
「たくさん食べて早く元気になろうと思ってね。リカにおままごとに誘われているし」
「…フン」
何がどう通じ合ったのか分からないけど、2人ともニヤリと微笑んでいた。雨降って地固まる的な?2人の顔を見比べて、私も何故だか嬉しくなった。