Love the darkness -3-
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部屋に戻るためにポルナレフと別れて承太郎と歩いてた。
ぎゅうと掴んでいた手がだんだん離れて、承太郎が自分の部屋の前で立ち止まる。
向かい合ったら「どうする?」って聞いてるみたいにちょっとだけ首を傾げてみせた。
「おやすみなさい」
こくりと頭を下げた私に変な顔をしてる。
「…1人で平気なのかよ」
「うん平気」
とぼとぼ歩いて隣の自分の部屋に戻った。背中に承太郎の強い視線を感じるけど無視してドアを閉める。鏡の中の真顔の私を見つめながら歯磨きして、すぐにベッドに潜り込んだ。
明日から新しい生活かぁ。
ホリーさんに会えると思ったらわくわくする。
承太郎やのりくんと日本で暮らせるのもすっごく楽しみ。
でもずっと、胸の中がもやもやして気分が悪い。
大きな物語が終わることを受け入れられていなかった。
普通の生活ってなんだっけ?
あんなに戦っていろんな人が死んじゃって怖い目にたくさん遭ったのに、私明日から普通にご飯食べてお風呂入ってテレビとか見て寝るの?学校行って勉強して友達と恋バナとかして笑ってるの?
ねぇだって。
アヴドゥルもイギーももういないのに。
「……っ」
いろんな思い出が蘇った。
でもやっぱりそれらは血生臭くてディオの残酷な微笑で締めくくられている。
もしかしたら、私がディオと一緒にいるって選んでたら、みんな死ななかったのかもしれない。
「うっ、うっ……うぁぁぁーー…!」
アヴドゥルとイギーのこと思い出して悲しくて怖くてどばっと涙が溢れてきた。
「うぅぅぅぅ…ぐすっ」
すぐに布団を投げ捨ててベッドから降りた。
だばだば泣きながらとことこ廊下を歩いて承太郎の部屋のドアを開けた。
承太郎はそこに立っていて、やっぱり変な顔してた。
「えぐ、えっ……うわぁぁあ、」
どすっと承太郎のお腹に顔をぶつけたらそのまま抱っこしてベッドまで運んでくれた。
器用に私を抱えたまま布団をめくって一緒にそこに潜り込む。
承太郎に抱きしめられたら安心する。もっと強くたっていいぐらい。なんにもわかんなくなるぐらいにしてほしい。
「ようやくめでたしめでたしって時になって、何をそんなに泣くのかわからねぇ」
「ディオがこわい」
「ああそうかい。この生きてる俺よりディオの野郎のことを考えてるってわけか」
「こわかったの」
ぐずぐずに泣いて髪が顔に貼り付いてた。
承太郎の指がびっくりするぐらいそっと髪を撫で上げたと思ったら、また口にちゅーされてた。細まるグリーンの瞳が優しすぎてそこに映る私はゆらゆら溶けて見えなくなった。
「時差のせいで数日は調子が出ないかもな」
「うん、出ない」
「お前海好きか。好きだって言っていたよな?」
「……好き」
「休みの日に連れて行ってやるよ。海でも水族館でも」
「水族館…」
「それから、トム・クルーズの映画も好きなだけ見れるな」
「…うん」
「なんもない日は……家で相撲とか見るかな。アイスでも買ってから」
「おもしろいの?」
「ああ。教えてやるよ」
「じゃあ、見る」
「仕方ねーから花京院も呼んでやるか。あいつがゲームを始めたら帰らなそうだが…どうするか」
「…そうかも」
「とまぁ…明日からの予定はそんなとこだが、どっかに泣くところがあるか?」
「………でも」
「お前がちゃんと生きねーと、化けて出るぜ」
「うふん」
急にアヴドゥルをおばけにしてしまったので泣きながら笑ってしまった。承太郎は頭のところにあるティッシュを取って、「やれやれだぜ」って息をついてから私の顔を拭いてくれた。
承太郎がいるから大丈夫だね。
なんとなく、はっきりそう思った私は安心して承太郎の胸元に擦り寄って目を閉じる。
長い髪をとかしてくれる優しくて温かい手の感触を味わいながら。
「離さないでね」
ひとしきり撫でつけてから大きな手が離れていくのが分かったので、反射的にそう漏らしていた。隙間があったらそこから空気が入ってきて、なんだか怖いんだもん。
すぐに私の腰に腕が回って、きつめに引き寄せられる。顔を上げたら、承太郎は私を見下ろしてて、なんだかちょっと笑ってた。
それがすごく嬉しそうだったから、照れてしまったのを承太郎の服に顔を埋めて誤魔化した。
「…言ったはずだぜ。お前は本当に、人の話を聞かねぇな…」
低い声でぼそぼそ言ってたけど、それからあくびして、承太郎はついに両目を閉じてしまった。
私ももう、起きてるのは諦めた(というか捕まえられてて身動き取れない)。
わざわざ言わなくても良かったのだ。
承太郎はたぶん、一度言ったことを守ってくれるだろう。
私、覚えてるんだよ。『絶対に離すことはしない』って言ってくれたこと。たぶんずっと、覚えてる。
「……。」
朝起きたら、承太郎は普通に私を離して背中を向けて寝ていた。起きて一番に「てめぇふがふがうるせぇんだよっ」だって。
…泣きすぎて鼻詰まってたのよ。