Love the darkness -3-
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「それで、砂で固まっちゃってたから、ホテルで髪を解いたらブラシが飛んでっちゃったでしょ?私、面白すぎて笑いが止まらなかったのよ。びよよ〜〜んって、天井まで飛んでいったんだもん。ポルナレフ、何が起きたか分かってなくてぽかーんとしてるから」
「そーいやそんなこともあったなぁ〜〜。あまりにもお前が笑ってるもんだから、ジョースターさんが『新手のスタンド攻撃かっ!?』って本気で疑っていたよなぁ」
「後から緊張感なさすぎるって怒られたんだよ」
その日の夜遅く、私とポルナレフは病院の休憩スペースで2人でおしゃべりをしていた。
長くてあっという間だった旅ももう終わり。
明日私たちは、それぞれの故郷に帰ることになる。
のりくんはケガの後遺症もあって早めに寝るため部屋に戻り、承太郎はその付き添い。
ジョセフはスピードワゴン財団の人と何かお仕事の話でいなくなり…。残った私とポルナレフは自販機でジュースを買ってからここでぐだぐだと旅の思い出を語り合っている。
「…ジョセフに聞いたの。赤ちゃんにされていたのに、ディオが私を捕まえようとしてたこと、思い出してくれてありがとう。ポルナレフ」
「そんなもん、当然じゃねぇか。俺にとっちゃあリカ、お前も妹みてぇなもんだからよ」
慈しむように私を見下ろしてるポルナレフの目は、潤んでキラキラしていた。
命がけの旅を終えて、私だってポルナレフのことを家族同然だって思ってる。なのに明日からは離れ離れにならなきゃいけない。
「元気にしていてね、ポルナレフ。…また会えるんだよね?残ってるディオの手下を倒さなきゃいけないんでしょ…私も手伝うから…いいでしょ?」
「うぅ〜〜ん……、ま、まぁなぁ…」
ポルナレフが歯切れが悪くなったのはジョセフと承太郎のせいだった。
私はずっとこの調子でポルナレフに会いたいと言い続けているのだけど、2人は私をまた戦いに巻き込むなんてありえないって怒ってしまったのだ。承太郎に「すっこんでな」って言われてムカっとしちゃった。
「だが、ディオの残党うんぬんを抜きにしても、俺はお前に会いに行くぜー!日本を案内してくれよな」
「うん!その時までに私、日本にすっごく詳しくなっておくからね!」
笑い合っていたけどずっと切なかった。
遠く離れ離れになるのも寂しいし、きっとすぐには会えないのがわかっているから。
「…今日はポルナレフの部屋で寝ようかな。あのね、お子様って思われてもいいの。寂しいからもっと話したいんだもん」
「えっ!あぁ……おぉん……まぁなぁ…」
下から顔を覗き込んだら、ポルナレフは逆に私を避けるようにそわそわと視線を泳がせた。
やがて動きを止めて私を優しい瞳で見下ろして、ポンと大きな手で頭を撫でてくれた。指の隙間から見えるポルナレフの優しくて頼もしいいたずらな笑顔が大好き。
「それじゃあ一緒に寝るか!…と言いたいところだが…よちよち歩きの2歳児じゃねーんだ。10歳のレディは1人で寝なくちゃあな」
「……うん、わかった」
言い聞かせるような優しい声色で、ほんとにお兄ちゃんみたい。
「はっ!!」
甘んじて頭を撫でられてたら、突然ポルナレフの手がピタリと動きを止めたので不思議になって顔を上げた。
ポルナレフは急に緊張してとんでもない汗を全身に浮かべている。
「ど、どうしたのポルナレフ…」
「しぃぃっ!リカ、動くんじゃあねーぜ。せ、背中にとんでもねぇ圧を感じる…殺気ってやつだぜ…まさか、新手のスタンド使いか?ディオの残党がすでにっ!!」
動くと攻撃されると言わんばかりに硬直してるポルナレフを置いといて、彼の背中側を首を伸ばして見てみた。それで私はますますポルナレフに呆れてしまった。
「敵なんかいない。承太郎がいるだけよ」
「えっ!?」
「ほら、ドアのとこ」
指差す私にならってポルナレフがようやく後ろを振り返った。と同時に休憩室に入ってきた承太郎が私たちに近づいてくる。ポルナレフはどっと疲れを感じたようにぐったり肩を落としていた。
つかつか私のすぐそばで立ち止まった承太郎は目つきが大変悪かった。
「てめぇ…リカ。俺はさっさと部屋に戻れと言ったはずだぜ。寝坊でもして飛行機の時間に間に合わなかったら、日本には連れて帰らねぇからな」
「だから今ポルナレフと寝ようかなって話をしてたの」
「ああ……聞こえていたぜ」
「だぁぁあ!!俺はちゃんと断ったからなっ!!承太郎ッ!」
「……。」
ポルナレフはやけに慌てていて、それを承太郎がさめざめ見つめていた。
ちゃんと断るって何?
承太郎とは普通に一緒に寝てるのに。
「何で駄目なの?」って聞こうと思ったけど、ポルナレフが人差し指を立てて「しぃぃ!」って必死に止めるから辞めておいた。
「花京院もじじぃもとっくに夢の中だ。俺たちも行くぜ」
「はぁい」
「ゴミを捨ててきな」
承太郎に言われてお菓子とジュースパーティのあとを片付けた。ぽいぽいとゴミ箱に放り込んでから待ってる2人を追いかける。
承太郎が私に手を伸ばしてたけど、私はそこじゃなくて隣のポルナレフにぎゅって抱きついた。
「ほんとに元気でね、ポルナレフ…ありがとう。大好きよ」
お腹に頭を押し付けたら、一気にじょわってポルナレフの目が涙でうるうるになってしまった。
「うぉぉん、リカ!お前こそ元気でいろよな!この承太郎にいじめられたらいつでも」
「行くぜ」
ポルナレフのたくましい両腕が私に回る前に、承太郎が私の首根っこを掴んで思い切り引っ張った。大きな体に押し付けられて、人質になったみたいな体勢である。
「てめぇ、承太郎!感動のシーンだぞ!邪魔ばっかりしやがって!」
「感動?めそめそしてるだけに見えるがな…」
承太郎はにやりとしていて、ポルナレフは涙目のまま笑ってた。
名残惜しかったけど、ずっとここにいるわけにもいかないから、承太郎が迎えに来てくれて良かったのかも。
私は承太郎に後ろから捕まえられたまま、ポルナレフにバイバイしたのだった。