Love the darkness -3-
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ダークネスを伝って夜の空を駆けている間、私の頭の中には存在しないはずのディオとの思い出が蘇っていた。
今よりもずっと、あどけなさの残る少年みたいな姿。
拗ねたり怒っていたり、いじわるそうに笑ってたり……それから、子供の私でもわかるぐらい…愛しそうにこっちを見つめていた。
あなたを残して死んでごめんね。
切なくて泣けてくる。
でもそれは、私じゃない。……私の思い出じゃない。
「ごめんなさい……やっぱり、一緒には行けない……。だって、そんなことしたら…きっと承太郎が悲しむと思うから」
そう呟くと同時に頭の中が一瞬真っ白になった。ひときわ高いビルを飛び越えて別のビルの屋上に着地したら、開けた視界に2人が戦ってるのが見えた。
私は承太郎の名前を呼ぼうとした。のに、瞬きする一瞬もないまま突然承太郎が地面の石畳みに吹っ飛ばされて叩きつけられていた。
「?!なんで…っ」
のりくんのときと同じだ…。ディオの能力なのかもしれないけど、それが何なのかまったくわからない。ただ、承太郎が起き上がるのも苦労するほどダメージを負っているんだってことと、私のダークネスじゃあこの戦いに間に合わないってことだけははっきりわかった。
(負けちゃう……!承太郎が…っ)
怖くてがくりと膝が崩れ落ちた。手をついたら肩から震えている。
ふと気づいたら、空中にいたディオがいなくなっていた。これから何が起こるのか想像も出来なくて、どうすればいいのって何度も自分に問いかけた。承太郎のこと助けたい。守りたいよ。最悪のことが頭をよぎる。一緒にいられなくなるなんて、絶対に嫌なのに…!
『……どうして、間に合わないなんて思うんだ?』
「え?」
声が聞こえて後ろを振り返る。誰もいない。
でもその声は確実に私の中に響いていた。
『お前はまだ、その力の半分も使いこなせていないのに』
また頭の中で何かが白く輝いてスパークした。
『信じるんだ。何でも出来るって』
そうして目を開けたら、本当に何でも出来るんだってことがわかっていた。
たぶん、もっと前から…きっとわかってた。
一緒にいれば、絶対誰にも負けないってこと。
それからは、全てのことが一瞬で同時に起こった。
大きな波の音がして、私のいるビルの背後の影から巨大なクジラが飛び上がった。真っ黒で、見知った形をしている。あの時承太郎が買ってくれたお守りのクジラと同じ形をしていた。
空に昇ったクジラは海の中を悠々と泳ぐみたいに空気を掻いてどんどん進んでいく。
もう日は沈んでて辺りは暗いのに、クジラが泳いだ後は夜が全部削り取られてて、青空から陽が差し込んでいた。
曲がりくねりながら地面が照らされて、承太郎が今、押し潰されそうになっているロードローラーの一部にも光が宿った。その時、光の中で承太郎が確かに私を見たのを感じた。
私、ここにいるよ。ちゃんと一緒にいる。それを伝えたくて立ち上がった。
顔を上げたら、今度は承太郎がロードローラーの上にいて、ディオにスタープラチナの拳を叩き付けていた。
吹っ飛ばされたディオの体が半分ぐらい、ダークネスのクジラが作った陽だまりをかすめて崩壊した。どこかから飛び出してきた私の妹が、最後にディオの手を取って、一緒に消え失せた。それを見届けた瞬間、本当に全部終わったんだって私の中で何かが切れた。体の一部が剥がれ落ちて抜け出たような感覚。きっと私の魂から、私じゃない誰かが去っていったんだ。
光と闇が混ざり合う空を見上げたら、私によく似た人がディオの手を引いてどこかに昇っていこうとしている。もう私や承太郎のことなんて振り返りもしないディオは、憑き物が落ちたみたいに邪悪さが消えて、あどけなさの残る少年の無邪気な顔をしていた。私にそっくりな人は私に微笑みかけてから、ゆっくりディオと共に煙みたいに光の中に溶けて消えた。
「………あっ。承太郎!」
幻想的でどこか神々しくも見える2人の最後を見届けてから、私はふと思い出して屋上から身を乗り出した。
承太郎はふらついてるけどゆっくりロードローラーの上から降りてきた。それから自分の上着を脱いでディオの残る亡骸にばさりと被せる。
(…何してんの?)
承太郎が生きててすごく嬉しいし安心したけど、行動が奇妙すぎてちょっと不気味。
ふぅーーー、と長いため息をついてから、承太郎が顔を上げてこっちを見た。清々しい澄んだ瞳がきらりと輝いて、私をその中に閉じ込めると小さく笑った。
「……リカ。」
呼ばれたのがわかったので慌ててダークネスで下に降りて彼の元に走った。ずいぶん久しぶりに名前を呼ばれた気がして、嬉しすぎて自分も怪我してるの忘れちゃうぐらい。
だって、私が急いであげないと、承太郎の方がボロボロに怪我してるのにこっちに歩いてきてるから。
ダークネスの階段を駆け降りて地面に飛び降りると、私はすぐに承太郎のところに走った。
「承太郎!……あっ」
戦いのあとで崩壊した石畳みにつまづいてしまった。だって早く行かなきゃって思うのに体が思うようについてきてくれない!
こけちゃうと思って目を閉じたら、たくましくて温かい体に抱き止められた。承太郎が一瞬で私のところに移動してきていた。
…どういうこと?さっきまで5mは先にいたのに。
でもそんなことどうだっていい。また会えてすごく嬉しかった。
「ごめんね……ごめんなさい、承太郎。あの時逃げたりして」
最初に湧き上がったのは、さらわれる前にケンカしちゃったことへの罪悪感だった。たぶんずっと、謝りたかったんだと思う。殺されるかもって思ってたから、最後がケンカ別れなんて絶対に嫌だった。
「心配してくれてるだけだったのに、ごめんなさい」
承太郎は片膝をついてたんだけど、私が改めて抱きついたら簡単に押されて地面に座ってしまった。当たり前だよね。こんなに怪我してるんだから。でも、私がいれば大丈夫だからね。のりくんもきっと無事でいる。みんなきっと無事でいる。だって、みんなのどんな傷も私が全部塞ぐから。
「………そうだな。」
承太郎は倒れかけたくせに私のことは離さなかった。ぐっと自分の首元に私の顔を引き寄せて体が全部触れ合ってる。血と汗に混ざって安心する承太郎の匂いを吸い込んだ。
承太郎の鼻先が私の首筋をかすめてぞくってした。
「お前の言う通り、確かに後悔したよ。もうあんな思いをするのは2度とごめんだな」
「うん…。あのね承太郎、ディオと私は」
妹とのことや、どうしてさらわれたのかをちゃんと説明しなくちゃと思った。
だけど、全然話すことは出来なかった。
私の言葉は全部承太郎に飲み込まれてしまったから。
だって唇が重なってる。私のに。
「…???」
何してんのこんなときにって思ったけど、気持ち良いしどきどきするし、とても自然なことに思えたから、目を閉じて受け入れた。
やがてゆっくり離れてから、至近距離で見つめ合う。承太郎の瞳に映る私は、自分でもちょっとびっくりするぐらい大人っぽく見えた。
「…お前とディオがどんな関係だったのかなんてことは、今は聞きたくねぇな」
「?……わかった」
「わかってなさそうだから言っておくぜ。もう二度とお前を手放すことはしねぇ。あんな風に後悔したくないからな…。だからディオだろうがなんだろうが俺には関係がないということだ。これから俺たちの間に、誰が現れようとな…」
承太郎は言い聞かせるように間近で人差し指を私に突き付けてくるけど、やっぱりよく分からなかった。よく分からないまま、私はさっきの感触を思い出して何となく自分の唇を手の甲で拭いた。承太郎はちょっと不満そうに顔をしかめている。
「さっき、キスした?」
「………したな」
「ねぇ。ジョセフに怒られるよ、また」
「…そうだといいんだがな」
「?」
承太郎がふらふら立ち上がろうとするので支えながらダークネスを傷口に貼り付けた。
どうやらあえてディオの体を残したらしい。
承太郎から話を聞きながら、急いでスピードワゴン財団を呼んだ。
今よりもずっと、あどけなさの残る少年みたいな姿。
拗ねたり怒っていたり、いじわるそうに笑ってたり……それから、子供の私でもわかるぐらい…愛しそうにこっちを見つめていた。
あなたを残して死んでごめんね。
切なくて泣けてくる。
でもそれは、私じゃない。……私の思い出じゃない。
「ごめんなさい……やっぱり、一緒には行けない……。だって、そんなことしたら…きっと承太郎が悲しむと思うから」
そう呟くと同時に頭の中が一瞬真っ白になった。ひときわ高いビルを飛び越えて別のビルの屋上に着地したら、開けた視界に2人が戦ってるのが見えた。
私は承太郎の名前を呼ぼうとした。のに、瞬きする一瞬もないまま突然承太郎が地面の石畳みに吹っ飛ばされて叩きつけられていた。
「?!なんで…っ」
のりくんのときと同じだ…。ディオの能力なのかもしれないけど、それが何なのかまったくわからない。ただ、承太郎が起き上がるのも苦労するほどダメージを負っているんだってことと、私のダークネスじゃあこの戦いに間に合わないってことだけははっきりわかった。
(負けちゃう……!承太郎が…っ)
怖くてがくりと膝が崩れ落ちた。手をついたら肩から震えている。
ふと気づいたら、空中にいたディオがいなくなっていた。これから何が起こるのか想像も出来なくて、どうすればいいのって何度も自分に問いかけた。承太郎のこと助けたい。守りたいよ。最悪のことが頭をよぎる。一緒にいられなくなるなんて、絶対に嫌なのに…!
『……どうして、間に合わないなんて思うんだ?』
「え?」
声が聞こえて後ろを振り返る。誰もいない。
でもその声は確実に私の中に響いていた。
『お前はまだ、その力の半分も使いこなせていないのに』
また頭の中で何かが白く輝いてスパークした。
『信じるんだ。何でも出来るって』
そうして目を開けたら、本当に何でも出来るんだってことがわかっていた。
たぶん、もっと前から…きっとわかってた。
一緒にいれば、絶対誰にも負けないってこと。
それからは、全てのことが一瞬で同時に起こった。
大きな波の音がして、私のいるビルの背後の影から巨大なクジラが飛び上がった。真っ黒で、見知った形をしている。あの時承太郎が買ってくれたお守りのクジラと同じ形をしていた。
空に昇ったクジラは海の中を悠々と泳ぐみたいに空気を掻いてどんどん進んでいく。
もう日は沈んでて辺りは暗いのに、クジラが泳いだ後は夜が全部削り取られてて、青空から陽が差し込んでいた。
曲がりくねりながら地面が照らされて、承太郎が今、押し潰されそうになっているロードローラーの一部にも光が宿った。その時、光の中で承太郎が確かに私を見たのを感じた。
私、ここにいるよ。ちゃんと一緒にいる。それを伝えたくて立ち上がった。
顔を上げたら、今度は承太郎がロードローラーの上にいて、ディオにスタープラチナの拳を叩き付けていた。
吹っ飛ばされたディオの体が半分ぐらい、ダークネスのクジラが作った陽だまりをかすめて崩壊した。どこかから飛び出してきた私の妹が、最後にディオの手を取って、一緒に消え失せた。それを見届けた瞬間、本当に全部終わったんだって私の中で何かが切れた。体の一部が剥がれ落ちて抜け出たような感覚。きっと私の魂から、私じゃない誰かが去っていったんだ。
光と闇が混ざり合う空を見上げたら、私によく似た人がディオの手を引いてどこかに昇っていこうとしている。もう私や承太郎のことなんて振り返りもしないディオは、憑き物が落ちたみたいに邪悪さが消えて、あどけなさの残る少年の無邪気な顔をしていた。私にそっくりな人は私に微笑みかけてから、ゆっくりディオと共に煙みたいに光の中に溶けて消えた。
「………あっ。承太郎!」
幻想的でどこか神々しくも見える2人の最後を見届けてから、私はふと思い出して屋上から身を乗り出した。
承太郎はふらついてるけどゆっくりロードローラーの上から降りてきた。それから自分の上着を脱いでディオの残る亡骸にばさりと被せる。
(…何してんの?)
承太郎が生きててすごく嬉しいし安心したけど、行動が奇妙すぎてちょっと不気味。
ふぅーーー、と長いため息をついてから、承太郎が顔を上げてこっちを見た。清々しい澄んだ瞳がきらりと輝いて、私をその中に閉じ込めると小さく笑った。
「……リカ。」
呼ばれたのがわかったので慌ててダークネスで下に降りて彼の元に走った。ずいぶん久しぶりに名前を呼ばれた気がして、嬉しすぎて自分も怪我してるの忘れちゃうぐらい。
だって、私が急いであげないと、承太郎の方がボロボロに怪我してるのにこっちに歩いてきてるから。
ダークネスの階段を駆け降りて地面に飛び降りると、私はすぐに承太郎のところに走った。
「承太郎!……あっ」
戦いのあとで崩壊した石畳みにつまづいてしまった。だって早く行かなきゃって思うのに体が思うようについてきてくれない!
こけちゃうと思って目を閉じたら、たくましくて温かい体に抱き止められた。承太郎が一瞬で私のところに移動してきていた。
…どういうこと?さっきまで5mは先にいたのに。
でもそんなことどうだっていい。また会えてすごく嬉しかった。
「ごめんね……ごめんなさい、承太郎。あの時逃げたりして」
最初に湧き上がったのは、さらわれる前にケンカしちゃったことへの罪悪感だった。たぶんずっと、謝りたかったんだと思う。殺されるかもって思ってたから、最後がケンカ別れなんて絶対に嫌だった。
「心配してくれてるだけだったのに、ごめんなさい」
承太郎は片膝をついてたんだけど、私が改めて抱きついたら簡単に押されて地面に座ってしまった。当たり前だよね。こんなに怪我してるんだから。でも、私がいれば大丈夫だからね。のりくんもきっと無事でいる。みんなきっと無事でいる。だって、みんなのどんな傷も私が全部塞ぐから。
「………そうだな。」
承太郎は倒れかけたくせに私のことは離さなかった。ぐっと自分の首元に私の顔を引き寄せて体が全部触れ合ってる。血と汗に混ざって安心する承太郎の匂いを吸い込んだ。
承太郎の鼻先が私の首筋をかすめてぞくってした。
「お前の言う通り、確かに後悔したよ。もうあんな思いをするのは2度とごめんだな」
「うん…。あのね承太郎、ディオと私は」
妹とのことや、どうしてさらわれたのかをちゃんと説明しなくちゃと思った。
だけど、全然話すことは出来なかった。
私の言葉は全部承太郎に飲み込まれてしまったから。
だって唇が重なってる。私のに。
「…???」
何してんのこんなときにって思ったけど、気持ち良いしどきどきするし、とても自然なことに思えたから、目を閉じて受け入れた。
やがてゆっくり離れてから、至近距離で見つめ合う。承太郎の瞳に映る私は、自分でもちょっとびっくりするぐらい大人っぽく見えた。
「…お前とディオがどんな関係だったのかなんてことは、今は聞きたくねぇな」
「?……わかった」
「わかってなさそうだから言っておくぜ。もう二度とお前を手放すことはしねぇ。あんな風に後悔したくないからな…。だからディオだろうがなんだろうが俺には関係がないということだ。これから俺たちの間に、誰が現れようとな…」
承太郎は言い聞かせるように間近で人差し指を私に突き付けてくるけど、やっぱりよく分からなかった。よく分からないまま、私はさっきの感触を思い出して何となく自分の唇を手の甲で拭いた。承太郎はちょっと不満そうに顔をしかめている。
「さっき、キスした?」
「………したな」
「ねぇ。ジョセフに怒られるよ、また」
「…そうだといいんだがな」
「?」
承太郎がふらふら立ち上がろうとするので支えながらダークネスを傷口に貼り付けた。
どうやらあえてディオの体を残したらしい。
承太郎から話を聞きながら、急いでスピードワゴン財団を呼んだ。