Love the darkness -3-
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「じょ、承太郎ーーーッ!!リカはッ、リカはどこ行った!!?」
館の聞き込みを続けていたポルナレフがそう怒鳴りながら戻ってきた時、承太郎の心は未だ苛立ちの中にあった。その名を聞けば聞くほど、先ほどの自分の言動を責めてしまう。
『自分も子供だから子供達に聞いてみる』。
リカはそう言っていただけだったのに。
どうしても、彼女が自分から離れていくのが気に食わなかったのだ。反抗されてどうしようもなく焦ってしまった。
いつの間にか、リカがそばにいなくては落ち着かない精神状態に陥っていた。
「…あの我儘な野郎なら今はいないぜ。広場のガキどもに聞き込みに行くそうだ」
まるで自分の人形を手放さない子供のように思えた。罰が悪くなり、承太郎は帽子を深く被ってそっけなく答える。それとほとんど同時にがっしとポルナレフに肩を掴まれ驚いた。
「すぐに追いかけるんだッ!!あいつを1人にしちゃあならねぇッ!!」
そんなことは言われなくてもわかっているし、そうしているつもりだ。ただ肝心のリカが言うことを聞かないだけで。
鬼気迫るポルナレフに叱られているようで、承太郎はふてくされ気味に視線を逸らす。
しかし段々違和感を覚えた。
この旅では皆んなが皆彼女を特別可愛がっているが、今回のポルナレフの慌てようはそれとは違うものだった。
「アレッシーだよ!俺は何故今まですっかり忘れていたんだ…ッ!あの時は小さくなっていて、リカのことも誰だか分からなかったから……だから聞き流してしまったんだッ!!」
「…おい、ポルナレフ」
「とにかくあいつから目を離すなッ!!もうディオの野郎はすぐそこなんだぜーーッ!!!」
「待ちな。さっきから…一体、何の話をしている?」
何が何やらさっぱりわからなかったが、ディオの名前が出たとたん動悸が激しくなってきた。ポルナレフは話している時間も惜しいというように承太郎の肩口を掴み上げたまま、彼に指を突きつける。
「アレッシーの野郎はディオにリカを無傷で攫ってくるように命令されていた!!!あいつはディオに狙われているんだぁーーッ!!!」
「!!」
頭をガツンと打ち付けられたような衝撃が走った。
考えるよりも先に店を出てその姿を探そうと承太郎の足は踏み出している。しかしその肩を再び、ポルナレフではない手が掴んで動きを止めさせた。
「ジジィ…」
「今の話本当か?ポルナレフ」
「ああ、間違いねぇ!奴は自分に手出しできない、ディオに連れてくるように言われてるからってな…!あの時リカは確かにそう言っていたぜ…!」
「…っ、なんということだ…!!」
狼狽するジョセフを見て、承太郎には伝わるものがあった。
ディオに殺されたというリカの両親……連れ去られた妹…そしてたった1人残されたリカをディオと因縁のあるジョースター家が引き取った。
舌打ちとともに肩に乗るジョセフの手を降ろさせる。予想外に力のこもったその手にジョセフは驚いた。
「このクソジジィが…ッ。何か知っていて隠していやがったな」
ぎりぎりと締め上げられる手と煌々と燃え上がる瞳にジョセフは観念して低く唸った。視線を逸らしても貫かれそうなほどだった。
「確信は……なかったんじゃ……!だが、リカは…ッ、あの子はおそらくディオの……!」
「だが、あいつとディオの間に何があろうとどうだって良いぜ」
承太郎は語り出すジョセフを待たずにその手を離すとくるりと仲間に背を向けた。
ジョセフは拍子抜けしてぽかんとしていて、代わりにアヴドゥルが引き止めるように手を伸ばす。
「ど、どうだっていいだと?!承太郎!」
帽子のツバを引き締めて振り返る彼には迷いがない。
「例えそれが運命だとか、宿命だとか言われようがな……あいつがディオに狙われているだと?聞くだけで反吐が出るぜ…今最も重要なのは、今すぐあいつを捕まえてこの空条承太郎の1番近くに置いておくことだ…それを邪魔するってんなら、俺は必ずディオを止める。そして…」
承太郎に迷いはなかった。たった今なくなったのだ。
初めてその姿を目にしたときから。
一緒に旅をして共に戦う中で育ってきた。
彼女が笑うと自分も笑うことが出来るし、辛そうに顔を歪めているのを見たら、自分も胸を締め付けられるようだった。
何故こんなにも惹きつけられるのか分からない。初めての情熱だった。それは自分でも怖くなるほどの。
きっと、魂が求めているのだと思う。
リカは癒しであり守るべき存在であり、そして闇を取り込み承太郎の世界を照らす光だった。
もはや彼女なしでは自分の人生は成立しないと、承太郎は己の魂でそれを確信していた。
「リカを連れて日本に帰る」
断言すると、承太郎は皆を置いて店を飛び出した。すぐ近くにいるはずだ。あの丘の上の子供達に混ざって楽しそうに話しているはず。
そういや少しばかり喧嘩をしていたな。まだ拗ねているだろうから、後でフォローしとかなきゃあな。
妙な動悸を覚えながら走った。すぐに会えると思っていた。