Love the darkness -3-
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二の腕にすっぱりと一文字に傷が入って、そこから一瞬遅れで血が吹き出した。
久しぶりの散髪で髪の毛綺麗にしてもらったのに最悪。
刀のスタンドに私の攻撃を“覚えられてた”せいだった。わかんない。ポルナレフが操られてるもんだから本気じゃなかったからかも。
「リカ!!」
地面に倒れると同時に承太郎が叫んだ。でも、傷が痛すぎて動けないし返事もできない。
初めて『勝てないかも』って思って焦ったし、承太郎が捨て身の攻撃であえて刀を深くお腹に刺した瞬間、頭の中が真っ白になった。
「…リカっ!おい…リカ!しっかりしろ!!」
今ジョースターさんを呼んだから、とポルナレフが私の体を揺らしてる。
「承太郎の止血をしてやってくれ!!」
言われてやっと世界がはっきりした。どうやら承太郎が敵を倒した後も、私はじっと地面に座り込んでいたらしい。体は震えてるし冷や汗もすごい。
「がはっ!」
「じょ、承太郎!」
少し離れたところで血を吐いた承太郎に手を伸ばしたけど、その手は上がらなかった。それで私も怪我してるのを思い出してそっちを見たら、ダラダラと鮮血が流れ続けている。またサァ、と体温が下がっていくのがわかった。力が入らない。腕を一閃切られた私でこうなんだから、承太郎はどれだけ。
「…いいや、リカ…。先に自分の傷の手当てをしろ。休んでりゃあ俺はまだ保つ」
息は乱れてるし声は小さい。今までで1番疲れているのは明らかだった。
「しかし、ダークネスがいなけりゃできねぇ作戦だったがな…」
「その通りだぜ承太郎ーッ!自ら腹を刺されるなんざ!これがサムライ魂ってやつか…」
2人の会話がどこか遠い。
私は立ち上がってふらふらそこに近付いた。ボロボロ両目から涙が溢れてくるから視界も悪くて、頭の中はママとパパとお別れしたあの日の光景が蘇ってた。
私を見た2人は少しぎょっとしてから顔を見合わせた。
「痛てぇのか。だから先に自分の手当てを…」
「痛くない」
泣きっぱなしですぐに承太郎のお腹にダークネスを貼り付けて、ポルナレフの傷にも同じように止血した。
「全然痛くないよ…私なんて…」
ボロボロの2人を見たらすごく怖くなってきて、私は地面に膝をついてから出来るだけそっと、でも、絶対に離れないようにぎゅっと承太郎の首にしがみついた。
私の様子がおかしいことにさすがに気付いたみたいで、2人はまた顔を見合わせている。
「死なないでね、承太郎……。しなないで。私のことおいてかないで」
「……リカ」
優しく承太郎が私の背中を撫でて、ポルナレフはさっきからずっとぽかんと口を開けている。
「………俺は?」
ようやく発せられた一言に私も承太郎も何も言わなかったので、ひどく沈黙した。
それから私は気を失っていたらしい。
目が覚めたら病室のベッドの上だった。
新聞を読んでたアヴドゥルに腕の調子を聞かれた後、何故早くダークネスで治療しなかったんだと怒られた。
「だって、承太郎の怪我が酷かったから…」
フラッシュバックする血まみれの姿。また動悸がしてきた。
「……承太郎は?」
「隣の部屋にいる。傷は塞がっているがまだ眠ったままだ。よほど疲れたんだろう…強敵を前によくがんばったな。…俺のいない間にお前も成長……ってリカ!どこへ行く!?」
布団をひっくり返してベッドから飛び降りた。一目散に隣の部屋に駆け込む。誰もいない。反対側の隣だった。回れ右して再びダッシュで自分の病室を通り過ぎる。アヴドゥルが「急に動き回るな!」って怒鳴ったけど無視して隣の扉を開けた。
「承太郎!!」
「リカ」
承太郎は目を覚ましていた。半身を起こしてジョセフとポルナレフと何か話してた。私の勢いに2人はぎょっとして口を閉じている。
「やれやれ…痛くないんじゃなかったのか?いきなり寝こけやがって…肝が冷えたぜ」
にやりとして帽子をかぶりなおす姿は、最後に見た時より顔色も良くて心底ほっとした。
そしたらまたダバァと涙が溢れてきた。
「うっ…うっ……うわぁーーーーんっっ!!」
「おっと」
すぐに駆け寄ってベッドに飛び乗った私を承太郎はちゃんと受け止めてくれる。肩に顔を埋める私の頭に頬を押し付けた。
「なんであんなことしたの!!死んじゃうかと思った!あんなに血が出て!ううううう…!!」
「だから、それはさっきも言ったがダークネスがいるのを計算に入れてのことだぜ」
「うわぁぁぁぁん!!!」
「……ちとやりすぎたな。すまん」
私を抱えなおしてため息をつく承太郎。どんな表情してるのかはわかんないけど。
「すーぐ謝りおったぞ」
「だから俺は?」
泣いてるのと承太郎の匂いに安心してたのとで2人のリアクションに答えることはできなかった。
「よぉリカ」
強い力でぎゅうってされたまま顔を覗き込まれたから、距離がすごく近い。生命力を取り戻したグリーンの瞳は活き活きと輝いていた。そこには小さい子供みたいにポロポロ涙を流し続ける私が映っている。
「お前そんなに俺が死ぬのが嫌か」
「うっ…なんで?なんでそんなこと言うの…?うぅっ…!嫌…っ!絶対嫌……承太郎が死ぬなら代わりに私が死ぬぅ…!」
「そーかそーか。…ふっふっふっふ」
「笑わないで。私ほんきだからね」
「そりゃいいな。こっちもお前に死なれちゃ困るんでな…お互い頑張るしかねぇようだ」
ふふふふふ。って承太郎は意味深に笑い続けていた。私は今はただ、承太郎が無事にそばにいてくれることが嬉しくて、ひたすらフィット感のある逞しい体を味わっていた。
「じょ、ジョースターさん……俺は何故だかとんでもなく恐ろしいもんを見てる気分がしてきたぜ……ゴクリ」
「奇遇だなポルナレフ……わしもちょうど今同じことを思ったところじゃよ…わしの孫はなんて孫だ……ゴクリ」
笑ってるのは承太郎だけだった。
遅れて病室にやってきたアヴドゥルに怒られるまで、承太郎は私を膝に乗っけたままご機嫌だった。