Love the darkness -3-
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「ほんっといろんなところを通ってきましたよね……脳の中とか夢の中とか」
「ん?夢?」
「あ、そうか……。みんな覚えてないんでしたね…」
海岸沿いに近くの道まで歩きながら、のりくんが独り言のように漏らした言葉でとたんに質問攻めが始まった。
のりくんはみんなの圧に圧倒されながら、一緒に倒した『死神』のスタンドについて説明した。
あの時一緒に飛行機に乗せた赤ちゃんが本体だったこと。眠ると夢の中で襲ってくるスタンドで、起きたら何もかも忘れてしまっていること。眠るときにスタンドを出していた者だけが戦うことができ、記憶も残るってこと…。
あの時のりくんがおかしくなっちゃったわけじゃなかったって段々分かってくると、いなかったアヴドゥル以外のみんなはバツの悪そうに顔を歪めた。
「ほんっっとーーにすまん!花京院!俺が浅はかだった!まさかあんな赤ん坊がスタンド使いだとはこれっぽっちも思わずに…!!」
両手を合わせて謝るポルナレフにのりくんはやめてくださいと手を振る。爽やかな微笑みにはわだかまりなんてなくて、みんなますますのりくんの実力を認めたみたいだった。
承太郎も嬉しそうににやりとしながら帽子のツバをぎゅっと下ろした。
「おかしいと思ったぜ。この図太い花京院がストレスなんかでおかしくなっちまうわけがねぇ」
「ああそうさ。それに、『死神』と戦ったとき夢にダークネスを持ち込んだリカもいてくれたからね。厳密には1人じゃなかったんだ」
「おおそうか!お前は夜中わしらのことを守ってくれとるもんなぁ〜えらいぞぉリカ!」
「ほとんど何にもしてないけどね…」
ジョセフに頭をぐりぐり撫でられながら、夢の中でのことを思い出していた。どっちかっていうとアイスたくさん食べて1人で良いように騙されてただけなんだけど…。
そして同時に承太郎とのことも思い出してとんでもなく恥ずかしい気分になってきた。
「リカは大きくなっていたよね?」
「?!…………はい……」
わざとなのか何なのかしれっと暴露するのりくんに内心叫びつつ頷くしかできない。
「大きく?巨大化してたってことか?」
「いや、成長してたんですよ…高校生ぐらいに」
「マジか!なんだよ〜覚えときたかったなぁそりゃあ〜!」
「とても美人さんになってましたよ」
「おおーっ!!」
のりくんとポルナレフが勝手に盛り上がり始めたので、私は恥ずかしくてむすっと頬を膨らませたままもくもくと歩いてた。
背中にはいつも通り承太郎の視線が突き刺さる(なんかもう慣れてきた)。ちょっと振り向いたら立ち止まって顎に手をやり何か考えてるみたいだったので、不思議になって私も立ち止まった。
「どうかしたのか承太郎?」
同じようにのりくんも立ち止まってくれていた。顔を上げた承太郎はどことなく晴々とした表情をしてる。
「いや…そういうことかと思ってよ。どうにも最近成長したこいつが夢に出てきやがるんで、どうしたもんかと思ってたんだ。スタンドのせいだったってわけか。納得だぜ」
「………。」
「……。」
「?なんだよ」
私には承太郎が何を言ってるのか分からなかった。のりくんと顔を合わせたら、国家機密を聞いたぐらいのノリで冷や汗を浮かべてる。のりくんが1人で動揺してるので承太郎も不思議そうに首をひねった。
のりくんは極めてゆっくりと承太郎のそばに寄ると、ぽんとその肩を叩いて耳元で口を割った。
「承太郎……その……さっきも言ったが、スタンドを夢に持ち込んでなかった君は…『死神』との戦いでリカが成長した姿になったのを忘れているんだ」
「ん?」
「だから最近君が夢でそういうリカを見ているのは、『死神』のスタンドとは全く関係がない…」
「……。」
「そこで先ほどの発言だが……そうすると君は自発的にリカが高校生になったのを夢に見ているだけってことになるんだが……そういうことで良かったかい?」
(のりくん何言ってるんだろ?)
セリフが長くて頭に疑問符浮かんでる私とは対照的に、承太郎は肩にのりくんの手を乗せたまま完全に止まった。何なら立ったまま気絶?灰になった?ぐらい止まっている。
それから一筋こめかみに汗を流して、やっと意識を取り戻した。
「………良く……ねぇな」
「だよね」
「さて何の話をしてたかな」
うゔん!と咳払いして歩き出した承太郎にのりくんも続く。
「なんだったかなぁー…あっ!!そういえば承太郎!君最近夢とか見たりする?!」
「疲れて爆睡してるもんでちっとも見てねぇ」
「ですよねぇぇー」
2人の中で何かが解決したらしい。
そのままざくざく砂を踏んで歩き始めた2人を少し見送って、私も後を追いかけた。
「急げよリカ。お前が最後尾だと置いてかれるぞ」
振り返った承太郎が「ほれ」って手を差し出してくれる。その大きな手を取って早歩きで隣にくっついた。置いてかれたくない。私も2人に混ざって話したい。
見上げる承太郎の顔はまだ遠くて、承太郎は私が見てるのに気付かなかった。いつも感じる視線がなくて寂しかったから手を何度か引っ張って承太郎の気を引いた。
「私も夢に承太郎が出てきたことあるよ」
「…。」
「承太郎の家でみんなでリバーシしたの」
「…お気楽でいいな。てめーの頭ん中はよ」
「ふっ」
それからのりくんと承太郎は揃ってくすくす笑っていた。
ぎゅうって握りしめてくる承太郎の手を、私もできるだけしっかり握り返した。