Love the darkness -3-
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「暑い!暑い暑い暑い暑い暑いよー!!」
「わかってんだよさっきから!何度も言うな余計暑くなんだろー!」
スタープラチナが開けた大穴の中で、私たちは砂漠の真ん中で暑さと戦っていた。
イライラしてるポルナレフに怒鳴られながら、私はペットボトルの水を一気飲みする。
夜の8時だっていうのにかんかん照りの太陽が60度で私たちを焦がしていた。
「おい。俺にも水くれ」
「いいよ」
承太郎に手を出されて、穴の中の影に手を突っ込んで新しいペットポトルを取り出す。
厳しい旅なので、地道に非常食とか飲み物をストックしてきて良かった。
ただここにいるだけで汗が止まらない私たちはここぞとばかりに水を飲みまくっている。おかげで脱水症状にはならずに済みそうだった。
「ほんとに敵って近くにいるの?」
「そうじゃなけりゃあ、これだけのパワーの説明がつかんのじゃが…」
そう言う経験豊富なジョセフを信じて、さっきからみんなで双眼鏡で潜んでるはずの敵を探してるんだけど……。
目を凝らしてみても、私にはひたすら砂漠とわずかな雑草が生えてるのしか見えてこない。
汗が目元を流れて手でぬぐった。目も開けてられないって、どんな暑さなのよ。カリフォルニアだってこんなに暑くはないよ。
服もべっしょりで気持ち悪いし、私はもう暑さにやけくそになっていた。
「う〜〜〜暑すぎるぅぅ…!服脱いじゃおうかな。脱いでいい?」
肌に張り付く服を引っ張りながら誰にでもなくぼやいたら、メキメキって硬いものが軋む音がしてきた。承太郎が持ってる双眼鏡だった。
「てめー何ふざけたこと言ってやがる!!それでも女かこの」
「あっあ〜〜〜駄目だよリカ!」
ストレスのせいかとたんにガルガルモードになった承太郎を背に、のりくんが私たちの間に割って入ってきた。
とんでもなく顔に汗をかいている。顔色はちょっと青い。暑いのになんで?
「暑いときに服を脱ぐのはナンセンスでね。まず汗を吸ってくれるものがなくなるので体温調節がうまくいかなくなる。湿った服は皮膚を守ってくれるし乾くときに水分と熱を上手く逃がしてくれるんだ。それに服を脱いでこの直射日光を浴びたら君の肌はあっという間にフライパンの上の卵みたいに焼けてしまうだろう。暑いときに服っていうのは本当に機能的なんだよ。だから無意味だと思っていても服を脱いだりするのはやめよう。絶対にやめておいた方がいい。脱いだら最後、敵の思う壺だ」
のりくんめっちゃ喋るじゃん!!
私はあっけに取られながら、この状況下でそこまで服の重要性を力説してくるなら絶対脱がない方がいいなって普通に思った。
のりくん頭良いし。なんか分からないけどめっちゃ焦ってるみたいだし…。
「………。」
「「「わーーーーっっ!!?」」」
悪戯心が芽生えて、しれっと腕を交差させて服を持ち上げる素振りをしたら、のりくんのみならずポルナレフとジョセフまですごく動揺した。
バキッと音がして、承太郎の双眼鏡がついにセパレートしてしまう。ふふふふふと意味深に笑い始める承太郎はすごく怖かった。
「そんなに脱ぎたきゃ脱ぎゃあいいじゃねーか。代わりに学ランで巻いてやるよてめーみたいな聞き分けねぇクソ女」
「ごめんなさい」
怖すぎたのですぐ謝った。承太郎に巻かれたら暑さの前に窒息死しそう。
「いやいやお前ら遊んでる場合じゃねーぞ!80度になってんじゃねーか!!」
ポルナレフが水をかぶりながら怒鳴り、私はみんなに新しいミネラルウォーターを配った。影の中は涼しいので水もなんとなく冷たいのだ!
「さっさと敵を見つけるぞ!!もう飽きたぜこの俺は!!」
「なんか余裕そうじゃなポルナレフ」
暑いけど割と余裕。
また双眼鏡で景色を眺めるみんなの後ろで私は地味に髪をアップに結ぶことにした。首出してたらちょっとは涼しくなるかなぁと思って。
「リカ。予備の双眼鏡あるか?」
「あったと思う」
ごそごそ影の中に手を突っ込んでそれを取り(某猫型ロボットの気分)、はいって声をかけて承太郎に手渡した。
振り向いた承太郎はなんかびっくりしてた。
あまりにじっと見られるのでなんだか照れる。
「な、何?」
「……いいや?なんでも出てくるなと思ってよ。ついでにタオルもありゃ尚更良いんだが」
「あっそうか!もっと早く出せば良かったね!」
「あるのか…」
もはや感心通り越して呆れてそうなつぶやきだった。
タオルを探すためにみんなからくるりと背中を向けて影を探る。いつ突っ込んだやつか覚えてないから探すのに時間がかかる。
なんか良くわかんないけど、承太郎はずっと私の背中を見てた。大きい影が背中にかかって暗かったからすぐにわかった。
「……良く今まで折れなかったな」
「?」
ぼそって漏らした声の方を少し省みたら、承太郎が困ったみたいに眉をひそめて自分の首をさすっていた。
「それにしてもさ、砂漠って広すぎだよね!景色一緒だしずーーっと合わせ鏡の中見てるみたい」
「合わせ鏡……」
「合わせ鏡…?」
「…合わせ鏡か…」
「合わせ鏡ねぇ……」
その直後みんなが爆笑し始めたときは本当にもうダメかもしれないと思って怖かった。