Love the darkness -3-
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「どこ行くんじゃ承太郎」
ジョセフが声をかけたので、承太郎が私たちに背を向けてどこか行こうとしていることに気が付いた。
「ポルナレフが遅いんで探してこようと思ってな。すでに敵のスタンド使いに襲われている可能性だってある」
「む…」
「それと、さっきも行ったが俺の名前を呼ぶんじゃねーぜ」
私たち以外は誰もいないけど、みんな緊張してるように見える。
この街がどうにも不気味なせいだ。
活気がなさすぎるし、変な死体だってあった。
声をかけてくれたホテルのお婆さんも完全には信用できないということで、承太郎は宿帳に偽名を書いた。
「あのポルナレフだ。してやられることはないと思うが…確かに探した方がいいかもしれない」
「そうじゃな…ネーナのこともあるしのぉ」
ジョセフはまだ根に持ってる。のりくんが頷いて、承太郎もそれに首を振ってから動き出した。
私は反射的に席を立って承太郎と手を繋ぎながら横に並んだ。
「私も行く!ポルナレフが心配だもん」
「駄目だ。お前はじじぃとここにいろ。わざわざ敵がいるかもしれない外をうろつくこたぁねーだろう」
「探しに行くなら、承太郎も1人になるから危ないよ」
私はもしものことがあっても隠れられるから。
そう念押ししたらみんな確かに、と納得してくれた。承太郎は強いけど知らない間に1人で戦って大怪我してるから、2人も心配なんだろう。
「…ついてくるなら離れるなよ」
私が手をぎゅううと握ってるからか、承太郎も負けない強さで握り返してきた。
この街が怖くて、私が緊張してるのをきっとわかってるんだと思う。
怖かったから…なんとなくだけど、やっぱり承太郎の近くにいたかった。
「うん…。行こう、Qちゃん」
「おばけじゃねーんだよ」
真顔の私と苦虫を噛んだみたいな顔の承太郎を、残る2人が微笑ましく見送ってくれた。Q太郎って書いたの自分のくせに…。
それからしばらくして、私と承太郎は無事に元の部屋に帰ってきた。
怪我したポルナレフと気絶したホテルのお婆さんを連れて。
「それでね、すごかったんだよ!スタープラチナが襲ってきた街の人たちを一気に殴り飛ばしてね!オラオラって!めっちゃたくさんいたのに一瞬で!」
「わかったわかった」
「速すぎて見えなかった!」
始めて間近でスタープラチナのオラオラッシュを見た私は大興奮していた。
事の顛末の説明はもう3周目に入っていて、ジョセフは聞き飽きたのかやれやれと呆れてる。
「それに、お婆さんの霧のスタンドを一気に吸い込んだんだよ!攻撃が当たらないなんて誰にも倒せないって、みんな絶望してたのに!あ、スタンドが霧みたいだから、殴っても当たらないの!」
「スタープラチナだからできた技だな」
ポルナレフに応急処置をしながら、のりくんは嬉しそうにうんうんと頷いてくれる。
「そんなことよりさっさと俺にも包帯をよこしやがれ。俺が足を刺されたのが見えなかったのかよ」
「そうだった!ごめんね、ポルナレフがべろに穴開いてたから、死んじゃうと思って慌ててた…」
「傷を付けた場所を操るスタンドとは…なんと恐ろしい」
承太郎を座らせて手当てを始める私の横でジョセフが唸る。
「……それで、操られて…どこを舐めさせられてたって?」
「だぁーかぁーらぁぁ!!ゴホンっ、ゴホ!ゴホンっ!!」
それからしばらくジョセフとポルナレフのベンキバトルが繰り広げられることになった。
私は傷を見るのが怖いので急いで承太郎のふくらはぎの怪我にダークネスを貼り付けてから、とにかく包帯でぐるぐるぎゅうぎゅう巻きにした。ダークネスが傷を塞いでくれるのがわかって良かったなぁ。
「…ありがとよ」
思ったより近くから声がして顔を上げた。承太郎はなんだか嬉しそうだったので、私もますます機嫌が良くなった。
「痛くない?大丈夫?」
「ああ。歩くのに問題はなさそうだ」
「あのね承太郎」
「なんだよ」
「スタープラチナ見たい」
「……。」
ひと段落ついて待ってましたと言わんばかりに詰め寄ったら、承太郎は露骨に嫌そうな顔をした。まるで私がお願いするのをわかっていたみたいだった。
「戦い終わったばっかでわざわざ出すか」
「駄目?もう一回ちゃんと見たいなぁって思って」
「なんだよ、ちゃんと見るって。必要あるか?」
「かっこいいのに〜!ムキムキで!悟空みたいで!」
「ただのスタンドだろ」
「見たいなぁ〜。すごくクールだよね。笑ったりするのかなぁ」
「……。」
「かっこよかったなぁ。スーパーマンみたいだった!」
「あの、リカ……もうその辺で」
のりくんが何か焦って私に手を伸ばしてる。かっこいいスタープラチナに想いを馳せていた私は気付いていなかった。
「いい加減にしろうるせーな!出さねぇっつってんだろ!!」
「?!」
急に怒られたショックで固まった私をよそに、承太郎は立ち上がってずんずん窓の方に歩いて行ってしまった。
その背中からは不機嫌が滲み出ていて、誰も触れようとはしない。さすがに気まずくて私はあわあわしていた。
「な、なんで…?すごい怒ってるじゃん…!スタープラチナが見たかっただけなのに……」
「いやー…うん……いろいろあるのさ、男には」
ぽんと私の肩を叩いてからのりくんが承太郎のところに行った。2人で何か話してる。男の子同士の話だからきっと私は入れないな。
ちら、と承太郎がこっちを振り向いた気がしたので目を合わせないようにした。
「………リカ、てめぇもこっちに来て見てみろよ」
「………。」
「来ねーならこっちから行くがいいんだな」
(怖っ!)
低くなった声に慌てて窓の方に駆け寄る。
じっと見られてるのがわかったので今度は目を合わせた。相変わらずの綺麗な深い緑色の目の中に、私がすっぽり収まっていた。
「……ごめんね?」
「謝んじゃねぇ。何もわかってねーくせによ」
視線をそらした承太郎に合わせて窓の外を見たら、街は荒廃してほとんどなくなっていた。
びっくりして承太郎の手を握ったら、やっぱり強めに握り返してくれた。