第6章 黒いピット(後編)
セラ
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気を失っているセラちゃんを両腕で抱きかかえ、ブラピは僕の目の前から飛び立った。彼女を守る…約束しておきながら僕は彼女を守りきれず、ブラピに連れ去られるのを許してしまった。下唇を噛みしめる。約束を交わした彼女の表情が、脳裏に浮かんでは消えている。あの時浮かべていた彼女の微笑みが。
「どうやら最初の噴水広場に向かったようです。追いかけましょう」
「(セラちゃん!絶対に君を助けるから!!)」
一体、私はどうしてしまったんだろう。記憶が曖昧ではっきりしない。私は一体どうしていたのだろう。神器を持って、パルテナ様の命でピット君と共にブラピ君を追いかけて……。神殿の廃墟で彼とぶつかり合って……その後は?ピット君とパルテナ様は?二人はどうなってしまったのだろう。ピット君……パルテナ様……
「セラちゃ…!!セラちゃん!!!!」
「セラ!!セラ!!!」
『!!ピット君!!パルテナ様!!』
「気がついたみたいだな」
『!!ブラピ君……』
そうだ。私はピット君を援護しようとして…でも、ブラピ君にそれを遮られて。自分の中に根付いた疑問を明らかにするため問いかけた直後私は意識を手放した。未だに、私が納得できる答えは聞いていない。思いきり睨みつけて、警戒心剥き出しに神器を構えようとするが、自分の手に神器を所持していない事実に気づく。
『神器がない……』
「お前が持ってた神器は、ここにはない。どこかに落としたらしいな」
『……私を連れ去ってどうするつもりなの?ピット君の動揺を誘おうって魂胆なのかしら?』
「フッ。そんなまどろっこしい真似なんてしなくても、俺はあいつに勝てる。必要ない」
『じゃあ、どうして……』
次の瞬間、ブラピ君は私との距離を詰めてきた。突然の出来事に驚愕する。後退しようとするものの、身体は言うことを聞いてはくれず彼との距離は僅か5センチにも満たない所まで縮まる。彼の手が私の顎に触れる……
「セラ。俺と行動を共にしないか?」
『えっ……?』
「俺だったら、お前を危険な目に遭わせたりしない。絶対にお前を守り抜く……絶対にセラを誰にも渡したりはしない。冥府軍にもな」
『ブラピ君……。気持ちは嬉しいけど、私はパルテナ軍親衛副隊長だから貴方と一緒にはいられないわ。自分が選んだ運命から目を逸らしたくないの。』
「そうか、なら仕方ない。セラ、お前を倒す……この手でな。」
『(また……悲しそうな顔)』
自分の思い通りにならない返答を私からもらった彼は、神器を振りかざし私をまっすぐと見据える。私を倒そうとしているのに、彼の表情は悲しそうで……今にも泣いてしまいそうな……そんな哀愁が漂っていた。『どうして、私よりも辛そうな顔をしているの?』いつの間にか私は声に出していた。自分が感じた疑問を。両目を見開き、驚愕しているブラピ君。彼の悲痛な叫びが私の耳に届く。
「どんなに願ったって、お前は俺を一番に選んではくれない!!」
『ブラピ君……(彼が悲しそうなのはそれが理由なの?』
「俺はいつもお前を想っているのに!!」
振りかざした神器が、私目掛けて降りて来る。私が所持していた神器は、ここにはない。反撃すら敵わない。私を倒そうとしている彼の表情は、辛そうな苦しそうなもの。言葉を失う……
『……』
「……セラちゃん!!」
「セラ!!」
「?!」
『ピット君!!パルテナ様!!』
静寂が包まれる中で、聞き慣れた声が耳に届く。聞き慣れた声がする方向を見遣れば、ピット君が私達に向かって駆けて来るのが見える。次の瞬間、ピット君が私の元へ駆け寄りブラピ君の手に寄って倒されそうになっている私を全力で救出してくれた。彼のお陰で私は絶体絶命の危機を回避する。
「セラちゃん!大丈夫?!どこも怪我してない?!」
『うん!大丈夫!ピット君が助けに来てくれたもの!』
「セラちゃん……ごめん。セラちゃんから離れないって約束しておきながら、危険な目に遭わせちゃったね」
『でも、助けに来てくれたじゃない。私は信じてたよ?ピット君が助けに来てくれるって!』
「セラちゃん……」
「……ちっ」
私を救出した直後、ピット君が申し訳なさそうに私に謝ってきた。心から心配したと言わんばかりの悲しそうな表情のピット君。先程悲しそうな表情を浮かべていたブラピ君の姿と重なって見えた。自然と憂いを帯びた表情へと変化してしまう自身の表情。何かを決意したかのようにピット君は私から離れ、立ち尽くしているブラピ君に向かい合う。どこか怒気を含んでいる真剣な表情を見せ、神器を強く握りしめて。ブラピ君も、所持していた神器の矛先を私からピット君へと変化させ静かに戦闘態勢に入った。
「「勝負だ!!」」
ピット君とブラピ君の最終決戦が今、始まりを告げた。
「来いよ!女神のフンめ!!」
「なんだって?」
「いつまでも女神の言いなりになって、なんの疑問も持たずに戦う。そんな日々に不満はないのか?ン?」
「断じてそんなものはないね!絶対だ!」
『(言いたいこと言っちゃってぇ〜!)』
凄まじい戦いが勃発している。ピット君もブラピ君も、一歩も譲らずに神器同士が幾度も搗ち合い、その度に衝撃波が起こる。先程まで身体は言うことを聞いてくれずに、身動きが取れずにいたが飛行できる力はなんとか取り戻した。私は今、二人に戦いの邪魔にならないようおに飛行しながら二人の戦いを見つめている。神器なしでは、反撃しようにも敵わない。もどかしい気持ちを引きずる。やっぱりさっき、一発くらい引っ叩いていればよかったかな。会話の流れからして、パルテナ様の悪口を言っちゃってるし。
「真実の魔鏡は本当のことを見せるって言うぜ。で あれば、この俺の存在自体がお前の本心の表れだろうよ」
「お前にはわからないよ。一生わからない!!僕はパルテナ様の慈愛を尊敬するし、少しでも力になりたいんだ!真実を見せるなんてウソだ!名前からくる暗示に過ぎない!!そう簡単に騙されるか!!」
「ムキになるのは図星だからって言うぜ」
「また理屈を!!」
射撃攻撃を繰り出しているブラピ君に対しうまく回避し、ピット君は彼に打撃を加えようとダッシュで接近しようと試みるが、上空に逃げられてしまう。同フィールドに存在するのならば、彼の動きぐらいは止められるかもしれない。というのも、彼らが戦うフィールドは二段に分かれ大きな円で構成されている。フィールドの構成をうまく活用すれば、ブラピ君に攻撃を加えられ勝機が見えても来るだろう。私も上空からならば彼に少しのダメージを加えさせられるかもしれない。そうと決まれば自分が企てた作戦を実行すべきだ。そうと決まれば善は急げ。空中にて浮遊する彼に向かって、飛行するスピードを加速させる。
『ブラピ君!覚悟ォ!』
「なにッ?!セラ!!うわあぁ!!」
「セラちゃん!」
『忘れないで。たとえ神器がなくても、私だって戦えることを』
「ぐッ!そのようだな。さすが俺が見込んだ女だ」
私から攻撃されると思わなかったのか、私から見てブラピ君は隙だらけだった。神器を喪失しているため、多大なダメージを与えるのは難しかったが彼の動きを封じるのに成功したと思う。察しの通り、私はブラピ君に攻撃を加えた。背中から蹴り倒したのだ、思いきり力を込めて。私が蹴り倒した反動でブラピ君が怯んだ。彼に向かって射撃をしながら再度接近してくるピット君。隙を与えず、接近したと思えば彼はすかさず打撃を連続で繰り出している。ダメージを受け、自分の身を庇い距離を取るブラピ君。
「どうやら最初の噴水広場に向かったようです。追いかけましょう」
「(セラちゃん!絶対に君を助けるから!!)」
一体、私はどうしてしまったんだろう。記憶が曖昧ではっきりしない。私は一体どうしていたのだろう。神器を持って、パルテナ様の命でピット君と共にブラピ君を追いかけて……。神殿の廃墟で彼とぶつかり合って……その後は?ピット君とパルテナ様は?二人はどうなってしまったのだろう。ピット君……パルテナ様……
「セラちゃ…!!セラちゃん!!!!」
「セラ!!セラ!!!」
『!!ピット君!!パルテナ様!!』
「気がついたみたいだな」
『!!ブラピ君……』
そうだ。私はピット君を援護しようとして…でも、ブラピ君にそれを遮られて。自分の中に根付いた疑問を明らかにするため問いかけた直後私は意識を手放した。未だに、私が納得できる答えは聞いていない。思いきり睨みつけて、警戒心剥き出しに神器を構えようとするが、自分の手に神器を所持していない事実に気づく。
『神器がない……』
「お前が持ってた神器は、ここにはない。どこかに落としたらしいな」
『……私を連れ去ってどうするつもりなの?ピット君の動揺を誘おうって魂胆なのかしら?』
「フッ。そんなまどろっこしい真似なんてしなくても、俺はあいつに勝てる。必要ない」
『じゃあ、どうして……』
次の瞬間、ブラピ君は私との距離を詰めてきた。突然の出来事に驚愕する。後退しようとするものの、身体は言うことを聞いてはくれず彼との距離は僅か5センチにも満たない所まで縮まる。彼の手が私の顎に触れる……
「セラ。俺と行動を共にしないか?」
『えっ……?』
「俺だったら、お前を危険な目に遭わせたりしない。絶対にお前を守り抜く……絶対にセラを誰にも渡したりはしない。冥府軍にもな」
『ブラピ君……。気持ちは嬉しいけど、私はパルテナ軍親衛副隊長だから貴方と一緒にはいられないわ。自分が選んだ運命から目を逸らしたくないの。』
「そうか、なら仕方ない。セラ、お前を倒す……この手でな。」
『(また……悲しそうな顔)』
自分の思い通りにならない返答を私からもらった彼は、神器を振りかざし私をまっすぐと見据える。私を倒そうとしているのに、彼の表情は悲しそうで……今にも泣いてしまいそうな……そんな哀愁が漂っていた。『どうして、私よりも辛そうな顔をしているの?』いつの間にか私は声に出していた。自分が感じた疑問を。両目を見開き、驚愕しているブラピ君。彼の悲痛な叫びが私の耳に届く。
「どんなに願ったって、お前は俺を一番に選んではくれない!!」
『ブラピ君……(彼が悲しそうなのはそれが理由なの?』
「俺はいつもお前を想っているのに!!」
振りかざした神器が、私目掛けて降りて来る。私が所持していた神器は、ここにはない。反撃すら敵わない。私を倒そうとしている彼の表情は、辛そうな苦しそうなもの。言葉を失う……
『……』
「……セラちゃん!!」
「セラ!!」
「?!」
『ピット君!!パルテナ様!!』
静寂が包まれる中で、聞き慣れた声が耳に届く。聞き慣れた声がする方向を見遣れば、ピット君が私達に向かって駆けて来るのが見える。次の瞬間、ピット君が私の元へ駆け寄りブラピ君の手に寄って倒されそうになっている私を全力で救出してくれた。彼のお陰で私は絶体絶命の危機を回避する。
「セラちゃん!大丈夫?!どこも怪我してない?!」
『うん!大丈夫!ピット君が助けに来てくれたもの!』
「セラちゃん……ごめん。セラちゃんから離れないって約束しておきながら、危険な目に遭わせちゃったね」
『でも、助けに来てくれたじゃない。私は信じてたよ?ピット君が助けに来てくれるって!』
「セラちゃん……」
「……ちっ」
私を救出した直後、ピット君が申し訳なさそうに私に謝ってきた。心から心配したと言わんばかりの悲しそうな表情のピット君。先程悲しそうな表情を浮かべていたブラピ君の姿と重なって見えた。自然と憂いを帯びた表情へと変化してしまう自身の表情。何かを決意したかのようにピット君は私から離れ、立ち尽くしているブラピ君に向かい合う。どこか怒気を含んでいる真剣な表情を見せ、神器を強く握りしめて。ブラピ君も、所持していた神器の矛先を私からピット君へと変化させ静かに戦闘態勢に入った。
「「勝負だ!!」」
ピット君とブラピ君の最終決戦が今、始まりを告げた。
「来いよ!女神のフンめ!!」
「なんだって?」
「いつまでも女神の言いなりになって、なんの疑問も持たずに戦う。そんな日々に不満はないのか?ン?」
「断じてそんなものはないね!絶対だ!」
『(言いたいこと言っちゃってぇ〜!)』
凄まじい戦いが勃発している。ピット君もブラピ君も、一歩も譲らずに神器同士が幾度も搗ち合い、その度に衝撃波が起こる。先程まで身体は言うことを聞いてくれずに、身動きが取れずにいたが飛行できる力はなんとか取り戻した。私は今、二人に戦いの邪魔にならないようおに飛行しながら二人の戦いを見つめている。神器なしでは、反撃しようにも敵わない。もどかしい気持ちを引きずる。やっぱりさっき、一発くらい引っ叩いていればよかったかな。会話の流れからして、パルテナ様の悪口を言っちゃってるし。
「真実の魔鏡は本当のことを見せるって言うぜ。で あれば、この俺の存在自体がお前の本心の表れだろうよ」
「お前にはわからないよ。一生わからない!!僕はパルテナ様の慈愛を尊敬するし、少しでも力になりたいんだ!真実を見せるなんてウソだ!名前からくる暗示に過ぎない!!そう簡単に騙されるか!!」
「ムキになるのは図星だからって言うぜ」
「また理屈を!!」
射撃攻撃を繰り出しているブラピ君に対しうまく回避し、ピット君は彼に打撃を加えようとダッシュで接近しようと試みるが、上空に逃げられてしまう。同フィールドに存在するのならば、彼の動きぐらいは止められるかもしれない。というのも、彼らが戦うフィールドは二段に分かれ大きな円で構成されている。フィールドの構成をうまく活用すれば、ブラピ君に攻撃を加えられ勝機が見えても来るだろう。私も上空からならば彼に少しのダメージを加えさせられるかもしれない。そうと決まれば自分が企てた作戦を実行すべきだ。そうと決まれば善は急げ。空中にて浮遊する彼に向かって、飛行するスピードを加速させる。
『ブラピ君!覚悟ォ!』
「なにッ?!セラ!!うわあぁ!!」
「セラちゃん!」
『忘れないで。たとえ神器がなくても、私だって戦えることを』
「ぐッ!そのようだな。さすが俺が見込んだ女だ」
私から攻撃されると思わなかったのか、私から見てブラピ君は隙だらけだった。神器を喪失しているため、多大なダメージを与えるのは難しかったが彼の動きを封じるのに成功したと思う。察しの通り、私はブラピ君に攻撃を加えた。背中から蹴り倒したのだ、思いきり力を込めて。私が蹴り倒した反動でブラピ君が怯んだ。彼に向かって射撃をしながら再度接近してくるピット君。隙を与えず、接近したと思えば彼はすかさず打撃を連続で繰り出している。ダメージを受け、自分の身を庇い距離を取るブラピ君。