第6章 黒いピット(前編)
セラ
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「実力が互角ではやりにくかろう。加勢してやる、ピットを倒せ。…そして、セラを私の目の前に差し出すのだ」
『………っ』
「へっ笑わせてくれる」
「何だと?」
「他人の剣を振りかざそうとする奴に舞い降りる翼はない。先ずはお前等から始末してやるぜ!」
「…?様子がおかしいな」
「あんなキザなキメ台詞、とても僕には言えないからなぁ」
『そもそも、ピット君はそういうキャラじゃないしね!』
「いや、そういう事ではなくてだな」
「すみませんね。ウチのものが鈍くって」
メデューサは狡賢い企みをブラックピット君に提案するが、彼は応じずその企みを一蹴した。提案された彼にとっては得する筈なのに、冥府軍を敵に回し彼は今、自分が手にしている神器で向かって来る魔物達を一掃している。ブラックピット君の態度に不審を抱くメデューサ。そういえば彼は、パンドーラの命令に背きパンドーラに攻撃していた。それは、飛翔の奇跡が欲しかったからなのかもしれないけれど、彼は…自分自身の為に動いている。そんな印象を受ける。
「ブラックピットは、真実の魔鏡から生まれ出た筈だが…。何故冥府軍になっていない?」
「もしやあの時…。まだコピーが不完全の時に鏡を割ったからかも」
「そういう事か…!」
真実の魔鏡から生まれたのに彼は、冥府軍になってはいない。その絡繰りが漸く分かった。パルテナ様の言葉に納得したと言わんばかりの声を発するメデューサ。冥府軍でもパルテナ軍でもないブラックピット君は、誰からの指図も受けずに自分の意志で今、行動している。じゃあ、あの時彼がパンドーラから私を助けたのも…自分の意志で?私を助けても彼には何のメリットも生まれない筈なのに…どうして?向かって来る冥府軍を、神器で薙ぎ払いながら考察してみる。けれど一向に答えは見えないままだ。
「ブラックピットは冥府軍ではない…。倒さなくても良いと言う事でしょうか」
「しかしブラックピットは邪念に満ち、破壊衝動が暴走しています」
「……そうですね」
「今のままでは、目に触れるものを手当たり次第攻撃する事でしょう」
「…ならばやはり倒すしか…」
「彼はピット自身から出たものです。ピットの悪い心なのかもしれません。しかも、元々存在しなかったものです。存分に戦うとよいでしょう」
「了解です!理屈では分かっていても、何かやりにくいんですよね」
『(やっぱり倒すしか方法がないのかな…)』
答えは見えないまま、パルテナ様とピット君の会話に耳を傾ける。冥府軍ではない彼、だけどパルテナ様は“倒す”と言う選択を私達に託して来た。脳裏には彼が一瞬だけ私に見せた悲しそうな表情が浮かんでは消えている。パルテナ様の命は必ず熟すけれど、何処か複雑な感情が押し寄せている…倒す以外に妙案があるのならば、それに縋りたい。だが、もし存在するのならば既にパルテナ様が見つけているだろう。やっぱりそんな都合良くいかない…単なる絵空事に過ぎないのだろうか…?
『(いざ、倒すってなったら…私は、ブラックピット君に止めを…刺せるのかな…?)』
もしかしたら、躊躇ってしまうかもしれない。
「魔物を増やす真実の魔鏡を破壊した訳ですが、これで冥府の軍勢も減っていくのでしょうか?」
「ある程度は抑制出来るでしょうけど…」
『元から絶たなきゃ駄目?』
「多分」
「メデューサと共に復活した冥府の軍勢、謎が多いですね」
『本当そう。浄化しても浄化しても数知れず向かって来るし…』
「何処で生まれ、どう増えているのか。普通に魂を持つ生き物ではない様ですが」
広大な荒れ地上空を飛行しながら、私達の話題は冥府の魔物について。前方には奇跡なしですいすい飛行しているブラックピット君の姿。
「出生を探るのも課題なんでしょうかね?」
「それよりも打倒メデューサですね。災いの元凶ですから。しかし、ブラックピットを放っておくと危険です。追撃しましょう」
『(出来る事ならば戦わずに済ませたかったけれど…)』
覚悟を決めなくちゃ、駄目みたい。
広大な荒れ地上空を飛行していたが、徒然と並ぶ山々が自身の両眼に飛び込んで来る。物淋しい雰囲気が印象的で、私とピット君は物淋しく並ぶ山々を越える。時折、ブラックピット君がピット君を狙撃して来るけれど、私には一切危害を加える様子はない。パルテナ様の話に寄ると、彼は邪念に満ち溢れ、破壊衝動が暴走しているそうなのだが…。苦笑いを浮かべていると、隣で何故か不機嫌そうにしているピット君と目が合った。
『………っ』
「へっ笑わせてくれる」
「何だと?」
「他人の剣を振りかざそうとする奴に舞い降りる翼はない。先ずはお前等から始末してやるぜ!」
「…?様子がおかしいな」
「あんなキザなキメ台詞、とても僕には言えないからなぁ」
『そもそも、ピット君はそういうキャラじゃないしね!』
「いや、そういう事ではなくてだな」
「すみませんね。ウチのものが鈍くって」
メデューサは狡賢い企みをブラックピット君に提案するが、彼は応じずその企みを一蹴した。提案された彼にとっては得する筈なのに、冥府軍を敵に回し彼は今、自分が手にしている神器で向かって来る魔物達を一掃している。ブラックピット君の態度に不審を抱くメデューサ。そういえば彼は、パンドーラの命令に背きパンドーラに攻撃していた。それは、飛翔の奇跡が欲しかったからなのかもしれないけれど、彼は…自分自身の為に動いている。そんな印象を受ける。
「ブラックピットは、真実の魔鏡から生まれ出た筈だが…。何故冥府軍になっていない?」
「もしやあの時…。まだコピーが不完全の時に鏡を割ったからかも」
「そういう事か…!」
真実の魔鏡から生まれたのに彼は、冥府軍になってはいない。その絡繰りが漸く分かった。パルテナ様の言葉に納得したと言わんばかりの声を発するメデューサ。冥府軍でもパルテナ軍でもないブラックピット君は、誰からの指図も受けずに自分の意志で今、行動している。じゃあ、あの時彼がパンドーラから私を助けたのも…自分の意志で?私を助けても彼には何のメリットも生まれない筈なのに…どうして?向かって来る冥府軍を、神器で薙ぎ払いながら考察してみる。けれど一向に答えは見えないままだ。
「ブラックピットは冥府軍ではない…。倒さなくても良いと言う事でしょうか」
「しかしブラックピットは邪念に満ち、破壊衝動が暴走しています」
「……そうですね」
「今のままでは、目に触れるものを手当たり次第攻撃する事でしょう」
「…ならばやはり倒すしか…」
「彼はピット自身から出たものです。ピットの悪い心なのかもしれません。しかも、元々存在しなかったものです。存分に戦うとよいでしょう」
「了解です!理屈では分かっていても、何かやりにくいんですよね」
『(やっぱり倒すしか方法がないのかな…)』
答えは見えないまま、パルテナ様とピット君の会話に耳を傾ける。冥府軍ではない彼、だけどパルテナ様は“倒す”と言う選択を私達に託して来た。脳裏には彼が一瞬だけ私に見せた悲しそうな表情が浮かんでは消えている。パルテナ様の命は必ず熟すけれど、何処か複雑な感情が押し寄せている…倒す以外に妙案があるのならば、それに縋りたい。だが、もし存在するのならば既にパルテナ様が見つけているだろう。やっぱりそんな都合良くいかない…単なる絵空事に過ぎないのだろうか…?
『(いざ、倒すってなったら…私は、ブラックピット君に止めを…刺せるのかな…?)』
もしかしたら、躊躇ってしまうかもしれない。
「魔物を増やす真実の魔鏡を破壊した訳ですが、これで冥府の軍勢も減っていくのでしょうか?」
「ある程度は抑制出来るでしょうけど…」
『元から絶たなきゃ駄目?』
「多分」
「メデューサと共に復活した冥府の軍勢、謎が多いですね」
『本当そう。浄化しても浄化しても数知れず向かって来るし…』
「何処で生まれ、どう増えているのか。普通に魂を持つ生き物ではない様ですが」
広大な荒れ地上空を飛行しながら、私達の話題は冥府の魔物について。前方には奇跡なしですいすい飛行しているブラックピット君の姿。
「出生を探るのも課題なんでしょうかね?」
「それよりも打倒メデューサですね。災いの元凶ですから。しかし、ブラックピットを放っておくと危険です。追撃しましょう」
『(出来る事ならば戦わずに済ませたかったけれど…)』
覚悟を決めなくちゃ、駄目みたい。
広大な荒れ地上空を飛行していたが、徒然と並ぶ山々が自身の両眼に飛び込んで来る。物淋しい雰囲気が印象的で、私とピット君は物淋しく並ぶ山々を越える。時折、ブラックピット君がピット君を狙撃して来るけれど、私には一切危害を加える様子はない。パルテナ様の話に寄ると、彼は邪念に満ち溢れ、破壊衝動が暴走しているそうなのだが…。苦笑いを浮かべていると、隣で何故か不機嫌そうにしているピット君と目が合った。