最終章
セラ
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我ながら気付かないものだ。自嘲気味に笑う。平然を装っている振りをしているものの、気が動転している。どうすれば、彼の言う答えを見つけられるのかも分からない。全てが不透明なのだ。こんな状態で自分も相手も納得出来る、そして物事が終着出来たりするのだろうか。
「副隊長。ここは我々がやっておきますので、どうぞお部屋でおやすみください。」
『でもそれじゃあ、みんなに悪いよ!』
「お気になさらず!難でしたら夕食も作りますので!」
『イカロス〜、ありがとうぅ!お言葉に甘えて、そうさせてもらうね。あっ!おフロのお湯、先にいただいてもいいかな。』
【どうぞ!どうぞ!】
正直今の私は、邪魔者以外の何ものでもなかった。不甲斐ないが、イカロス達からの態度で勘付いてしまう。これ以上、キッチンに入り浸っていたとしても彼等の妨害にしかならない。それでは自身の良心が呵責されるばかりだ。ここは、イカロス達の厚意に甘えようと思う。家事全般は久しく休んでいなかったからか、ちょっとした気分転換になれるかもしれない。温泉にでも浸かって気分をスッキリさせよう。後片付けを手伝っていた私は、全ての仕事をイカロス達に任せキッチンを後にした。気のせいか。イカロス達がこちらをチラチラ見つめている視線を一同に感じた。
「隊長……とうとう副隊長に想いを告げたのだな。ここまでの道のり、長かった……。」
「しかし、副隊長はまだ答えを出せていないみたいだな。」
「どういう答えをお出しになるのだろう。」
「答えによっては、我々も危ういなぁ。」
【ハァ……。】
キッチンにて後片付けをしつつも、夕食の支度に取り掛かるイカロス達。私がキッチンから立ち去る後ろ姿を見送りながらも、口々に私達二人を話題にしていたらしいイカロス。傍から見たら、たった一言でも話してしまえば今の関係性が崩れてしまいそうな…そんな危険さがあるのだろう。近いのに遠い。遠いのに近い。何方付かずな感情の二人を温かく見守っていたかったのに、まさか当事者になるなんて。
自室から愛用のお風呂道具を持ち、温泉へ向かう。神殿内の温泉は、それはそれは立派なもの。以前ピット君が着衣したまま入浴していたが、どちらで入るにせよ心身共に癒やしてくれる効力があるのは確かだ。イカロス達が快く了承してくれたし、パルテナ様もきっとお許しになられるだろう。温泉に浸かりながらであれば、心身共に癒やしてくれるし答えが導けるかもしれない。淡い期待を抱きつつ、温泉の中へ浸かっていたのだが…これと言って冴えた閃きは得られなかった。失敗である。
服に着替え、髪も乾かしたのに大して進展もしないまま時刻は夕食を知らせていた。こんなに悩んでいるのに、それらしき答えを見出せないのは何故なのだろう。ピット君に対して仲間意識で見つめていたいから。長年そう思い続けて来た年月は、そう簡単に払拭出来ない。変更出来ないのならば、自然に合点がいく。しかし、果たしてそれだけが理由なのだろうか。考えれば考える程、深みに嵌まる。このままだと一生答えを出せない状態で終わってしまいそうな勢いだ。それでは、せっかく意を決して気持ちを伝えてくれたピット君に顔向け出来ない。それでは、意味がないのだ。
『(分かってる。分かってるのに……。)』
夕食の時刻、食堂へ取り敢えず歩み始める。こういう状況であるし、食欲は殆どないが行かなければきっとパルテナ様は心配するだろう。ピット君だって、そうだ。誰にも迷惑はかけたくない。イカロス達には既に借りが出来てしまったが。今度、とびきり美味しいプリンでも作ってあげようと思う。食堂へ赴けばパルテナ様の姿は見えず、その代わりピット君とイカロス達が夕食に使用する食器を綺麗に並べていた。ふとした瞬間にピット君と目が合ってしまう。彼にそぐわない真剣な、それでいて切なさそうな表情を浮かべていた。両眼を大きく見開き、直ぐ様視線をずらしてしまう私はどういう顔を浮かべるべきなのか。戸惑う自身に彼は何も言わず、視線を逸らして手を動かしている。空間の中に流れるは、沈黙。
【(き、きまずい……。)】
間に挟まれているイカロス達は、きっとこう思っているだろう。言わずもがな、正解だ。かれこれピット君とは、半日ぐらい話をしていない。いきなり告白されて、以前みたいに話せるのならばそうしている。だが、片方に気持ちの変化があった。そう簡単に、気持ちを切り換えられたのならばどんなに楽か。私は、そんな器用な質ではないのだ。自然に口から零れ出たのは、何を隠そう溜息だった。沈黙と静寂が空間を包み、緊迫した雰囲気が次第に立ち籠めている。こんな場面で食事を摂取しても空虚だろう。その考えに行き着いた時には、何度目かの溜息をついて食堂を後にしようとしていた。互いが互いを気まずく思うのなら、一緒にいるべきではないのかもしれない。まさか何十年も隣にいて、こんな思いに駆られるなんて予想すらしていなかった。パルテナ様は私に酷な試練を与えてくださる。
「副隊長。ここは我々がやっておきますので、どうぞお部屋でおやすみください。」
『でもそれじゃあ、みんなに悪いよ!』
「お気になさらず!難でしたら夕食も作りますので!」
『イカロス〜、ありがとうぅ!お言葉に甘えて、そうさせてもらうね。あっ!おフロのお湯、先にいただいてもいいかな。』
【どうぞ!どうぞ!】
正直今の私は、邪魔者以外の何ものでもなかった。不甲斐ないが、イカロス達からの態度で勘付いてしまう。これ以上、キッチンに入り浸っていたとしても彼等の妨害にしかならない。それでは自身の良心が呵責されるばかりだ。ここは、イカロス達の厚意に甘えようと思う。家事全般は久しく休んでいなかったからか、ちょっとした気分転換になれるかもしれない。温泉にでも浸かって気分をスッキリさせよう。後片付けを手伝っていた私は、全ての仕事をイカロス達に任せキッチンを後にした。気のせいか。イカロス達がこちらをチラチラ見つめている視線を一同に感じた。
「隊長……とうとう副隊長に想いを告げたのだな。ここまでの道のり、長かった……。」
「しかし、副隊長はまだ答えを出せていないみたいだな。」
「どういう答えをお出しになるのだろう。」
「答えによっては、我々も危ういなぁ。」
【ハァ……。】
キッチンにて後片付けをしつつも、夕食の支度に取り掛かるイカロス達。私がキッチンから立ち去る後ろ姿を見送りながらも、口々に私達二人を話題にしていたらしいイカロス。傍から見たら、たった一言でも話してしまえば今の関係性が崩れてしまいそうな…そんな危険さがあるのだろう。近いのに遠い。遠いのに近い。何方付かずな感情の二人を温かく見守っていたかったのに、まさか当事者になるなんて。
自室から愛用のお風呂道具を持ち、温泉へ向かう。神殿内の温泉は、それはそれは立派なもの。以前ピット君が着衣したまま入浴していたが、どちらで入るにせよ心身共に癒やしてくれる効力があるのは確かだ。イカロス達が快く了承してくれたし、パルテナ様もきっとお許しになられるだろう。温泉に浸かりながらであれば、心身共に癒やしてくれるし答えが導けるかもしれない。淡い期待を抱きつつ、温泉の中へ浸かっていたのだが…これと言って冴えた閃きは得られなかった。失敗である。
服に着替え、髪も乾かしたのに大して進展もしないまま時刻は夕食を知らせていた。こんなに悩んでいるのに、それらしき答えを見出せないのは何故なのだろう。ピット君に対して仲間意識で見つめていたいから。長年そう思い続けて来た年月は、そう簡単に払拭出来ない。変更出来ないのならば、自然に合点がいく。しかし、果たしてそれだけが理由なのだろうか。考えれば考える程、深みに嵌まる。このままだと一生答えを出せない状態で終わってしまいそうな勢いだ。それでは、せっかく意を決して気持ちを伝えてくれたピット君に顔向け出来ない。それでは、意味がないのだ。
『(分かってる。分かってるのに……。)』
夕食の時刻、食堂へ取り敢えず歩み始める。こういう状況であるし、食欲は殆どないが行かなければきっとパルテナ様は心配するだろう。ピット君だって、そうだ。誰にも迷惑はかけたくない。イカロス達には既に借りが出来てしまったが。今度、とびきり美味しいプリンでも作ってあげようと思う。食堂へ赴けばパルテナ様の姿は見えず、その代わりピット君とイカロス達が夕食に使用する食器を綺麗に並べていた。ふとした瞬間にピット君と目が合ってしまう。彼にそぐわない真剣な、それでいて切なさそうな表情を浮かべていた。両眼を大きく見開き、直ぐ様視線をずらしてしまう私はどういう顔を浮かべるべきなのか。戸惑う自身に彼は何も言わず、視線を逸らして手を動かしている。空間の中に流れるは、沈黙。
【(き、きまずい……。)】
間に挟まれているイカロス達は、きっとこう思っているだろう。言わずもがな、正解だ。かれこれピット君とは、半日ぐらい話をしていない。いきなり告白されて、以前みたいに話せるのならばそうしている。だが、片方に気持ちの変化があった。そう簡単に、気持ちを切り換えられたのならばどんなに楽か。私は、そんな器用な質ではないのだ。自然に口から零れ出たのは、何を隠そう溜息だった。沈黙と静寂が空間を包み、緊迫した雰囲気が次第に立ち籠めている。こんな場面で食事を摂取しても空虚だろう。その考えに行き着いた時には、何度目かの溜息をついて食堂を後にしようとしていた。互いが互いを気まずく思うのなら、一緒にいるべきではないのかもしれない。まさか何十年も隣にいて、こんな思いに駆られるなんて予想すらしていなかった。パルテナ様は私に酷な試練を与えてくださる。