最終章
セラ
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長年隣で戦って来た相棒の秘め事に触れる等とは誰が予想したか。厭、誰も予期していない。格言う私も平然を装いつつ、実は結構焦燥している。目の前のピット君は両頬をほんのり染め上げ、こちらを何故か睨みつけているし。彼も私も話さないから、自動的に沈黙が生まれている。気まずいったら、ありゃしない。こうしている間にも刻々と時間は流れている。可能ならば、早々と立ち去ってしまいたい。
『ピット君……?』
「セラちゃん。」
『あっハイ。』
名を呼ばれ、返答が思わず敬語になる。気まずくて沈黙を破ってみたものの、これと言って会話の中身は考えていなかった。必死に頭を働かせていたが、そんな私にピット君は深呼吸してゆっくり言い放った。
「僕、セラちゃんのことが、好きだ。」
『……うん、知ってる。』
「ええええッ?!」
私を好きだって?何を今更。私だってピット君が好きだ。でなかったら、毎日毎日共に戦い共に暮らしていない。相棒なのだから当然だ。逆にこの時間を使って迄、告白すべきなのだろうか。私は首を傾げた。改めて言葉にするのも時には大事だし、以心伝心出来る芸当を持ち合わせていないし気持ちを伝え合うのが互いには欠かせない。そんなの分かりきっている。その思いを口にすれば、驚愕を示す彼の態度。意外だったらしい。何とも失礼極まりない。共に戦えば、自然に分かって来るだろう。
『なにを今更。好きじゃなかったら一緒にいないよ?相棒さん。これからもよろしくね。』
「……。そう、きたか……。」
改めて言葉にしてくれたから、自身の嘘偽りのない思いを口にする。けれど、私の言葉を耳にした途端ピット君が盛大に溜息をついた。後頭部に手を回し、苦笑いを浮かべている彼の態度に唇を尖らせる私。少々、苛立ってしまった。折角、ランチ前に思いの丈を言葉にしたのに反応が薄いと思う。寧ろ落胆している気がする。果たして、気のせいか。
「セラちゃん。キミは、恋するオンナノコによくアドバイスしているよね。」
『?うん。だって見ててもどかしいし。なんとかしてあげたいって思うじゃない?』
「だったら、僕にもその答えをください。」
『……えっ?』
「何度だって言うよ。キミが好きだ。セラちゃん。」
そう言って目の前の君はにこりと笑んだ。その両頬には、ほんのり紅葉を散らして。
清々しい表情であった。余りにも見受けない表情に私は戸惑い、やがてその場から立ち去ってしまう。その場で答えを出すのも容易い筈なのだ。なのに、口を閉ざしてしまった。彼から逃走する名目で、神殿内を直走る。向かうはキッチン。全速力で走っていたからか、キッチンの入り口が直ぐに視界へ入る。徐々に距離を狭めてはキッチンの入り口に入り、そのまましゃがみ込む。顔を両膝の間に埋め、第三者に見せまいとする。動悸がもの凄い。この動悸が走行に寄るものなのか、緊張に寄るものなのか判別が出来ない。それ程迄に動揺している。彼は両頬に紅葉を散らしていたが、今度は私が紅葉を散らせる番であった。異常であると認識したキッチンで調理をしていたイカロス達は、口々に私を心配する声を上げていたが今の私には誰の声も両耳に届かなかった。
懸命に準備を整えていたランチタイムは、あっという間に終わりを告げた。天気も良い、心地の好い風も吹いている。小鳥達は囀り、私達と戯れる。そんな、和やかで長閑な時間が流れていたのに。ついさっきの出来事が脳内をリフレインし、気持ちの収拾がつかなくなる。要因を作った張本人は思いの外ケロッとしており、隣に座るパルテナ様と会話を弾ませランチに手を伸ばしていた。私は美味しいランチを目の前にしているのに、食が余り進まずに終わってしまう。こうしている間でも、ピット君は私を想ってくれていたのだろうか。何も聞かず、駆け出してしまったから真意は不明だが、もしもそうであったならば彼は一途である。まさか夢にも思わないだろう。共に戦っている相棒の存在が、想いを膨らませていただなんて。ピット君は取り敢えず置いておこう。問題は、私の心境だ。正直ずっと相棒だと信じて疑わなかった人物が相手。それ以外に何かあるのだろうか。まるで、分からない。
「副隊長……?副隊長?!副隊長!!」
『……えっ?なに?』
どうやら私は考え事をしていたようだ。イカロスに名を呼ばれ、我に返る。今は、キッチンにてランチの後片付けに取り掛かっている最中だったのだ。考え事をしていたとしても、きちんと片付けられると思っていた。指摘される迄は。
「副隊長!どこに持っていくのです?!」
『え……っと、右に。あれ。なんでこっちにオーブンがあるの。』
「そっちは左方向です!」
思ったより動揺しているらしい。じゃなかったら指摘される通り、右の棚に仕舞う小物を左側へ持って行こうとはしないだろう。
『ピット君……?』
「セラちゃん。」
『あっハイ。』
名を呼ばれ、返答が思わず敬語になる。気まずくて沈黙を破ってみたものの、これと言って会話の中身は考えていなかった。必死に頭を働かせていたが、そんな私にピット君は深呼吸してゆっくり言い放った。
「僕、セラちゃんのことが、好きだ。」
『……うん、知ってる。』
「ええええッ?!」
私を好きだって?何を今更。私だってピット君が好きだ。でなかったら、毎日毎日共に戦い共に暮らしていない。相棒なのだから当然だ。逆にこの時間を使って迄、告白すべきなのだろうか。私は首を傾げた。改めて言葉にするのも時には大事だし、以心伝心出来る芸当を持ち合わせていないし気持ちを伝え合うのが互いには欠かせない。そんなの分かりきっている。その思いを口にすれば、驚愕を示す彼の態度。意外だったらしい。何とも失礼極まりない。共に戦えば、自然に分かって来るだろう。
『なにを今更。好きじゃなかったら一緒にいないよ?相棒さん。これからもよろしくね。』
「……。そう、きたか……。」
改めて言葉にしてくれたから、自身の嘘偽りのない思いを口にする。けれど、私の言葉を耳にした途端ピット君が盛大に溜息をついた。後頭部に手を回し、苦笑いを浮かべている彼の態度に唇を尖らせる私。少々、苛立ってしまった。折角、ランチ前に思いの丈を言葉にしたのに反応が薄いと思う。寧ろ落胆している気がする。果たして、気のせいか。
「セラちゃん。キミは、恋するオンナノコによくアドバイスしているよね。」
『?うん。だって見ててもどかしいし。なんとかしてあげたいって思うじゃない?』
「だったら、僕にもその答えをください。」
『……えっ?』
「何度だって言うよ。キミが好きだ。セラちゃん。」
そう言って目の前の君はにこりと笑んだ。その両頬には、ほんのり紅葉を散らして。
清々しい表情であった。余りにも見受けない表情に私は戸惑い、やがてその場から立ち去ってしまう。その場で答えを出すのも容易い筈なのだ。なのに、口を閉ざしてしまった。彼から逃走する名目で、神殿内を直走る。向かうはキッチン。全速力で走っていたからか、キッチンの入り口が直ぐに視界へ入る。徐々に距離を狭めてはキッチンの入り口に入り、そのまましゃがみ込む。顔を両膝の間に埋め、第三者に見せまいとする。動悸がもの凄い。この動悸が走行に寄るものなのか、緊張に寄るものなのか判別が出来ない。それ程迄に動揺している。彼は両頬に紅葉を散らしていたが、今度は私が紅葉を散らせる番であった。異常であると認識したキッチンで調理をしていたイカロス達は、口々に私を心配する声を上げていたが今の私には誰の声も両耳に届かなかった。
懸命に準備を整えていたランチタイムは、あっという間に終わりを告げた。天気も良い、心地の好い風も吹いている。小鳥達は囀り、私達と戯れる。そんな、和やかで長閑な時間が流れていたのに。ついさっきの出来事が脳内をリフレインし、気持ちの収拾がつかなくなる。要因を作った張本人は思いの外ケロッとしており、隣に座るパルテナ様と会話を弾ませランチに手を伸ばしていた。私は美味しいランチを目の前にしているのに、食が余り進まずに終わってしまう。こうしている間でも、ピット君は私を想ってくれていたのだろうか。何も聞かず、駆け出してしまったから真意は不明だが、もしもそうであったならば彼は一途である。まさか夢にも思わないだろう。共に戦っている相棒の存在が、想いを膨らませていただなんて。ピット君は取り敢えず置いておこう。問題は、私の心境だ。正直ずっと相棒だと信じて疑わなかった人物が相手。それ以外に何かあるのだろうか。まるで、分からない。
「副隊長……?副隊長?!副隊長!!」
『……えっ?なに?』
どうやら私は考え事をしていたようだ。イカロスに名を呼ばれ、我に返る。今は、キッチンにてランチの後片付けに取り掛かっている最中だったのだ。考え事をしていたとしても、きちんと片付けられると思っていた。指摘される迄は。
「副隊長!どこに持っていくのです?!」
『え……っと、右に。あれ。なんでこっちにオーブンがあるの。』
「そっちは左方向です!」
思ったより動揺しているらしい。じゃなかったら指摘される通り、右の棚に仕舞う小物を左側へ持って行こうとはしないだろう。