最終章
セラ
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長年縛られていた言わば呪いに悩まされていたのだ。それが解放された喜びは、何にも変え難いだろう。しかし、名残惜しさも彼女の中に芽生えてしまう。従って彼女は綺麗な涙を流していたのだ。そんな姿を見つめ、私は再度セラを抱きしめた。少しでも複雑な感情が和らぐように。私に抱きしめられた彼女は、戸惑いながらも優しく美しい涙を流していた。ここ迄セラに大切に想われていたあの力は幸せだったと思う。優しくセラを抱きしめセラをあやしながらも、そんな思いに支配されていた。
・・・
感情のコントロールがうまくいかない。パルテナ様から離れ、私は今神殿内へと歩き出しキッチンへと距離を狭めている。話は聞いていると思うが、私はパルテナ様の奇跡で漸く強大な力を封印するのに成功した。この場だからこそ心中を話すが、ずっとあの力を疎ましく思っていた。引き離せるものならば、とっとと引き離してしまいたい…とも。天使として、心に留めてはいけない思いだ。頭では分かっているのに、どうしても振り払えなかった。されどこの力が発動されないと分かった瞬間、どうか。喜びの裏側には明らかに悲しみの感情が混同していた。あんなに望んでいたのにも関わらず、使用されないと分かれば名残惜しくなる。随分勝手なのではないか。封印される間際、あの力が私に言い放った言葉が頭から離れてくれない。
ーーおれを忘れて、幸せになれよ。セラ。
流れそうになる涙を手の指ではじき、キッチンへと向かう。大分時間がかかってしまったが、味付けには充分時間がある。この分ならば間に合いそうだ。気持ちを切り替えて、少し遅めのランチにしよう。外は、天気も良く風が心地好い。外で食べるにはうってつけだ。イカロス達は、最後の味付けを仕上げるべく私を待ってくれているだろう。自然にも両足の歩幅が開き、早歩きになる。順調にキッチンへと向かっていたのだが、そんな折道中の間に壁に背を凭れ何処か遠くを見つめているピット君を見つめた。やっぱり二人は似た者同士だ。ブラピ君と行動が何処となく似ている。
『ピット君?』
「……!あっセラちゃん。」
このまま素通りするのも可能だったが、それは私の中で躊躇われた。何をするでもなく、彼の名を呼ぶ。然すれば、こちらを振り向き嬉々とした表情を向けてくれた。誰かを待っていたのか、はたまた別の意図があるのか…どうかは分からない。真意は不明だ。彼がここにいるのは、修復作業でも終わったのだろうか。
『ピット君。修復作業が終わったなら、こっちを手伝って?きょうは、外でランチを食べようと思うの。』
「……。」
『ちょっとピット君?聞いてる?』
外でランチを食べる目的を遂行しようとイカロス達は懸命に準備をしてくれている。一刻も早く、私もその準備に荷担しなければならない。それなのにピット君は私の提案を聞いているのか何なのか、返事も碌に返してくれず無言を貫いている。彼の行動が今日程読めなかった日はない。多忙であるのならば、無理強いはしないが何とも分かりにくい反応である。彼の意図が読めず、難しい顔をして首を傾げてしまったがそんな場合ではないのだ。
『じゃあね、ピット君。またランチに。』
分かりきっていたが、答えは行き着かず。呆れにも似た溜息をつき、彼にそう言い残してこの場を去ろうとする。先程も言ったが、私には大事な役割が残っているのだ。ここで、油を売っている訳には行かない。彼の思惑も見えないからと歩き始めた刹那ピット君が慌てて右手で自身の左手を掴み動きを制止した。
「待って!セラちゃん!」
『ピット君。さっきからなんなの?』
「ハデス戦の前に言ったよね。“キミに伝えなければならないことがある”って。」
『そ、そういえば……そんなハナシもしたわね。』
決して、忘れていたのではない。歩行するのを右手で制止され、くるりと彼へ向き直る。ピット君は私を待っていた。彼の言う“伝えなければならないこと”を私へ伝えるために。しかし、思い当たる節はない。彼が私に懺悔の告白をする理由がまるでないのだ。そんなに彼は追い詰められていたのだろうか。言葉にしてくれれば、私だってピット君の為に色々思案するのに。思ったのだが、パルテナ様は知っているのだろうか。厭、知らない筈はない。月桂樹から映像を介して様子を窺っているだろう。
『まさか、おやつのプリンを一個じゃなくて、二個食べちゃったっていう懺悔の告白じゃぁ……。』
「ち、ちがうよ!」
『あ、ちがうのね。』
今迄の記憶を此見よがしに遡らせてみたが、やはり何も該当しなかった。不審がる私。試しにピット君へ告白の内容を問い掛けてみるが、正解しなかった。益々頭を悩ませる。
・・・
感情のコントロールがうまくいかない。パルテナ様から離れ、私は今神殿内へと歩き出しキッチンへと距離を狭めている。話は聞いていると思うが、私はパルテナ様の奇跡で漸く強大な力を封印するのに成功した。この場だからこそ心中を話すが、ずっとあの力を疎ましく思っていた。引き離せるものならば、とっとと引き離してしまいたい…とも。天使として、心に留めてはいけない思いだ。頭では分かっているのに、どうしても振り払えなかった。されどこの力が発動されないと分かった瞬間、どうか。喜びの裏側には明らかに悲しみの感情が混同していた。あんなに望んでいたのにも関わらず、使用されないと分かれば名残惜しくなる。随分勝手なのではないか。封印される間際、あの力が私に言い放った言葉が頭から離れてくれない。
ーーおれを忘れて、幸せになれよ。セラ。
流れそうになる涙を手の指ではじき、キッチンへと向かう。大分時間がかかってしまったが、味付けには充分時間がある。この分ならば間に合いそうだ。気持ちを切り替えて、少し遅めのランチにしよう。外は、天気も良く風が心地好い。外で食べるにはうってつけだ。イカロス達は、最後の味付けを仕上げるべく私を待ってくれているだろう。自然にも両足の歩幅が開き、早歩きになる。順調にキッチンへと向かっていたのだが、そんな折道中の間に壁に背を凭れ何処か遠くを見つめているピット君を見つめた。やっぱり二人は似た者同士だ。ブラピ君と行動が何処となく似ている。
『ピット君?』
「……!あっセラちゃん。」
このまま素通りするのも可能だったが、それは私の中で躊躇われた。何をするでもなく、彼の名を呼ぶ。然すれば、こちらを振り向き嬉々とした表情を向けてくれた。誰かを待っていたのか、はたまた別の意図があるのか…どうかは分からない。真意は不明だ。彼がここにいるのは、修復作業でも終わったのだろうか。
『ピット君。修復作業が終わったなら、こっちを手伝って?きょうは、外でランチを食べようと思うの。』
「……。」
『ちょっとピット君?聞いてる?』
外でランチを食べる目的を遂行しようとイカロス達は懸命に準備をしてくれている。一刻も早く、私もその準備に荷担しなければならない。それなのにピット君は私の提案を聞いているのか何なのか、返事も碌に返してくれず無言を貫いている。彼の行動が今日程読めなかった日はない。多忙であるのならば、無理強いはしないが何とも分かりにくい反応である。彼の意図が読めず、難しい顔をして首を傾げてしまったがそんな場合ではないのだ。
『じゃあね、ピット君。またランチに。』
分かりきっていたが、答えは行き着かず。呆れにも似た溜息をつき、彼にそう言い残してこの場を去ろうとする。先程も言ったが、私には大事な役割が残っているのだ。ここで、油を売っている訳には行かない。彼の思惑も見えないからと歩き始めた刹那ピット君が慌てて右手で自身の左手を掴み動きを制止した。
「待って!セラちゃん!」
『ピット君。さっきからなんなの?』
「ハデス戦の前に言ったよね。“キミに伝えなければならないことがある”って。」
『そ、そういえば……そんなハナシもしたわね。』
決して、忘れていたのではない。歩行するのを右手で制止され、くるりと彼へ向き直る。ピット君は私を待っていた。彼の言う“伝えなければならないこと”を私へ伝えるために。しかし、思い当たる節はない。彼が私に懺悔の告白をする理由がまるでないのだ。そんなに彼は追い詰められていたのだろうか。言葉にしてくれれば、私だってピット君の為に色々思案するのに。思ったのだが、パルテナ様は知っているのだろうか。厭、知らない筈はない。月桂樹から映像を介して様子を窺っているだろう。
『まさか、おやつのプリンを一個じゃなくて、二個食べちゃったっていう懺悔の告白じゃぁ……。』
「ち、ちがうよ!」
『あ、ちがうのね。』
今迄の記憶を此見よがしに遡らせてみたが、やはり何も該当しなかった。不審がる私。試しにピット君へ告白の内容を問い掛けてみるが、正解しなかった。益々頭を悩ませる。