最終章
セラ
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まだ分からないじゃないか。とは思ったものの、喉迄出かかりそのまま飲み込んだ。幸先悪いし、余り考えないようにはしていたのだが振られる可能性もない訳ではなかった。理由は至って単純明快だ。告白しようとしている相手は、相棒や仲間としての身分領域を越えないからである。僕にとってセラちゃんと言う名の彼女は、恋情や愛情で形成されており従って彼女を守らなければ。だなんて思いも生まれて来るのだ。反対に彼女にとってピットと言う名の僕は、友情……この一択のみだ。敢えて別の選択肢を挙げるのならば、仲間や相棒。お陰で進展する気配すら見せなかった。良い雰囲気になったとしても気付かれないか、第三者に邪魔されるか、どちらかだ。誰も聞いていないから、この場を以って言わせてもらうが彼女を守備する存在が後を絶たない。明らかにこれ等が要因となっている。僕もその中に含まれているが、彼女を守るのに目を光らせていなければ変な輩が周囲に彷徨いてしまうのだ。こちらは気が気ではない。イカロスが言ったような結果に終わるかもしれない。だが、誰かも分からない存在に彼女を奪われてしまうぐらいならば自分が奪ってしまおうと考えた。余裕がないと言われてしまえばぐうの音も出ない。事実、その通りだからだ。正直、結末はどうなるか。太陽の如く光り輝き、照らしてくれるのは一体何処の誰に対してなのか。彼女の思惑は、今の誰にも読み解けなかった。
・・・
洗濯物を干し終えた私は、修復作業を懸命にしてくれている皆のために美味しいランチとデザートを作ってあげようと神殿に踵を返した刹那、偶然にも神殿とは別の方向に歩行するブラピ君の姿を発見してしまう。彼は、冥府の王ハデス戦後共にエンジェランドへ帰還した。何日間か滞在していたブラピ君。彼が来てくれてピット君も心做しか嬉しそうにしていたし、何より神殿の修復作業を手伝ってくれたりもした。そんな彼が何処かへ歩行している。妙に気になって、彼に気配を察知されないように気を遣いながら物陰に隠れつつ、彼の行き先を確かめようとした。我ながら良い尾行術だ。いつの間にか、探偵スキルが身に着いていたらしい。内心、喜ぶ。
「出てこいよ、セラ。バレバレだぜ。」
『……。あはは。やっぱり?』
しかし、それは糠喜びに過ぎなかった。気配を消し、事の様子を窺っていたのだが即座にばれてしまう。残念な心境で口から出てきたのは溜息。少々納得出来ないが、見破られたからには出て来ない訳にも行かない。渇いた笑いでごまかし、ブラピ君の数歩後ろで立ち止まる。私達の間に心地の好い風が吹き抜ける中、彼がこの場から飛んで行ってしまいそうな……そんな予感が自身を襲った。
『でも、よくわかったね。バレないようにしてたんだけどなぁ。』
「わかるぜ。おまえのことだからな。」
『うーん。そういうものかなぁ。』
けれどブラピ君の羽翼にはもう、パンドーラの残存魔力は宿していない。つまりは、自力で飛行出来ないのだ。此処から飛び去るには誰かの助力が必要。天使ではなく、パルテナ様に能力が匹敵する神でないと彼の羽翼に飛翔の奇跡は宿せない。この場から飛び去ってしまう事態を危惧していたが、考えれば考える程不可能であると分かって安堵の溜息を吐く。長きに渡る戦いも終わりを告げたのだし、この機会にピット君もブラピ君も変な蟠りを取っ払うべきだと思う。此処何日か、生活を共にして消えつつあるのでは。と勝手に私は感じ取っている。
「セラ。」
『なあに?』
「俺と行動を共にしないか?」
『また、そのおさそい?』
「あぁ。これで最後だ。」
二人の間柄に変化が見えつつあるのは、とても喜ばしい。ブラピ君が浄化される運命も、ピット君があの時ブラピ君を身を呈して迄助けない道も、きっと用意されている筈だった。いずれも二人は無視をして運命を撥ね退け、この場に存在している。その事実が、傍観している者にとって心を温かくさせるぐらいだ。運命が許す限り、離れなければ良いとさえ思う。自身がそんな感情に支配されているだなんて想像もつかないだろう。目の前の人物は、真剣な面持ちで以前にも耳にしたお誘いを持ち掛けてくる。一瞬脈が速く打つものの、答えなんて考える間もなく当に決しているのが本当の気持ち。今更、趣向を変化させる気は毛頭ない。幾ら永遠の平和がこの世に齎されても、戦闘の場が訪れないとも限らない。彼の言う“最後”なる言葉が気がかりだったけれど、自身を支配している本当の気持ちを唇に込めて目の前の彼にそっと伝える。
『ブラピ君。私は、パルテナ軍親衛副隊長セラなの。ここを離れる気はないわ。気持ちは嬉しいんだけど……。』
「……いや、わかってたさ。セラの気持ちぐらいは。おかげで踏ん切りがついた。カンシャするぜ。」
『……ブラピ君?』
「これで、心置きなくセラを奪えるな。」
『……?今、なんか言った?』
「いや、別に。」
・・・
洗濯物を干し終えた私は、修復作業を懸命にしてくれている皆のために美味しいランチとデザートを作ってあげようと神殿に踵を返した刹那、偶然にも神殿とは別の方向に歩行するブラピ君の姿を発見してしまう。彼は、冥府の王ハデス戦後共にエンジェランドへ帰還した。何日間か滞在していたブラピ君。彼が来てくれてピット君も心做しか嬉しそうにしていたし、何より神殿の修復作業を手伝ってくれたりもした。そんな彼が何処かへ歩行している。妙に気になって、彼に気配を察知されないように気を遣いながら物陰に隠れつつ、彼の行き先を確かめようとした。我ながら良い尾行術だ。いつの間にか、探偵スキルが身に着いていたらしい。内心、喜ぶ。
「出てこいよ、セラ。バレバレだぜ。」
『……。あはは。やっぱり?』
しかし、それは糠喜びに過ぎなかった。気配を消し、事の様子を窺っていたのだが即座にばれてしまう。残念な心境で口から出てきたのは溜息。少々納得出来ないが、見破られたからには出て来ない訳にも行かない。渇いた笑いでごまかし、ブラピ君の数歩後ろで立ち止まる。私達の間に心地の好い風が吹き抜ける中、彼がこの場から飛んで行ってしまいそうな……そんな予感が自身を襲った。
『でも、よくわかったね。バレないようにしてたんだけどなぁ。』
「わかるぜ。おまえのことだからな。」
『うーん。そういうものかなぁ。』
けれどブラピ君の羽翼にはもう、パンドーラの残存魔力は宿していない。つまりは、自力で飛行出来ないのだ。此処から飛び去るには誰かの助力が必要。天使ではなく、パルテナ様に能力が匹敵する神でないと彼の羽翼に飛翔の奇跡は宿せない。この場から飛び去ってしまう事態を危惧していたが、考えれば考える程不可能であると分かって安堵の溜息を吐く。長きに渡る戦いも終わりを告げたのだし、この機会にピット君もブラピ君も変な蟠りを取っ払うべきだと思う。此処何日か、生活を共にして消えつつあるのでは。と勝手に私は感じ取っている。
「セラ。」
『なあに?』
「俺と行動を共にしないか?」
『また、そのおさそい?』
「あぁ。これで最後だ。」
二人の間柄に変化が見えつつあるのは、とても喜ばしい。ブラピ君が浄化される運命も、ピット君があの時ブラピ君を身を呈して迄助けない道も、きっと用意されている筈だった。いずれも二人は無視をして運命を撥ね退け、この場に存在している。その事実が、傍観している者にとって心を温かくさせるぐらいだ。運命が許す限り、離れなければ良いとさえ思う。自身がそんな感情に支配されているだなんて想像もつかないだろう。目の前の人物は、真剣な面持ちで以前にも耳にしたお誘いを持ち掛けてくる。一瞬脈が速く打つものの、答えなんて考える間もなく当に決しているのが本当の気持ち。今更、趣向を変化させる気は毛頭ない。幾ら永遠の平和がこの世に齎されても、戦闘の場が訪れないとも限らない。彼の言う“最後”なる言葉が気がかりだったけれど、自身を支配している本当の気持ちを唇に込めて目の前の彼にそっと伝える。
『ブラピ君。私は、パルテナ軍親衛副隊長セラなの。ここを離れる気はないわ。気持ちは嬉しいんだけど……。』
「……いや、わかってたさ。セラの気持ちぐらいは。おかげで踏ん切りがついた。カンシャするぜ。」
『……ブラピ君?』
「これで、心置きなくセラを奪えるな。」
『……?今、なんか言った?』
「いや、別に。」