最終章
セラ
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「……セラちゃん。」
『!』
「……僕は、キミらしい答えが出るのを……ずっと、待ってるから。」
自室へと踵を返した刹那、背後から聞き慣れた声と彼らしい言葉が確かに耳を掠めた。彼からの嘘偽りのない思いが妙に心へ響いて温かくなるのを感じる。いつだって、そうだ。隣にいてほしい時や悩みや悲しみを抱えてしまった時。いつも彼はそこにいてくれた、何も言わずに。実は、パルテナ様よりも一緒にいる時間が長いのではと実感させられるぐらいに。少し、答えが出かかった気がした。他の人達とは相違する感情。それをピット君に抱いている気さえする。されども、まだ確信は得られない。彼の言葉で、動きを遮られてしまったが再度歩行し始める。と同時に少々顔を後ろへ背け、彼の言葉に対して肯定の意を込めて首を縦に頷いた。その際ピット君の表情は見えず仕舞いであったが、いつもの表情へ戻っていたに違いない。
『(ハーブティーでも飲もうかな。)』
食堂を後にした私は、真っ直ぐ自室へと歩いている。だが気分を落ち着かせたいし、ハーブティーでも飲みたい。そう思った時には、キッチンへ方向転換させていた。我ながら、機転を利かせるのが早い。お気に入りのティーポットとティーカップでティータイム。この羅列を聞くだけで、気持ちも高ぶる。先程、夕食に使用する食器を並べていたから今頃はイカロスお手製の夕食を摂っているだろう。今迄一度も食卓にいなかった前歴がなかったから、今回のケースが本当に初めてだ。出来るのならば、皆でワイワイ他愛のない会話を繰り広げつつ食事しているのがあるべき姿なのだろうが、余りの出来事に空腹感にすら襲われない。以前人々の恋路を応援するべく、相談に乗った際そんな内容が宙を飛び交い理解に苦しんだがこの状態を言うのだと初めて知る。記憶を遡らせてみては、今になって知る事実に罪悪感が芽生えてしまった。
キッチンでティーポットにハーブを入れて、湯を注ぐ。一分二分蒸らし、ハーブを取り除きはちみつを投入。お気に入りのティーカップとハーブティーが冷めないようにポットへティーコゼーを被せる。これで準備万端。あとは自室に持っていくだけ。ハーブティーのお供にクッキーはどうだろう。幸いにも戸棚の可愛らしい箱に数枚入っていた。ハーブティーを飲んで、気持ちを落ち着かせる筈がいつの間にか目的が変わっていないか等と突っ込みを入れられそうだがそこは笑ってスルーして頂きたい。ティーポット、ティーカップ。そしてお供のクッキー。それ等を持って、自室へ移動する。思ったより、食欲はあるらしい。
『(ピット君への、キモチ……か。)』
ティーカップにハーブティーを注ぎ、口へと持っていく。すぐさま、効力が得られたりしないが何処となく安堵している気もする。不思議だ。ほっと一息ついている。物事を考えると言うより、至福の時間を味わっている感覚。……危うく、目的を見失う所であった。ハーブティーもクッキーも美味しいけれど、頭を働かせなくては。
「セラ?部屋にいますか?入りますよ?」
『あっパルテナ様!』
……なんて思っていれば、パルテナ様の声と自室の扉を開くノックの音が。まさか、夕食も摂らずにクッキーを食べていたとパルテナ様が知ったら何と言うか恐ろしくて反射でクッキーを物陰に隠してしまう。パルテナ様がノックしたと同時に入ってくる強引さは、苦笑いを浮かべるしかない。少しの間でクッキーを隠すのに成功したが、いつ発見されてしまうか冷や汗が額から一滴伝う。
「セラ、どうしたのです。食堂に顔を出さないで。」
『……食欲が、ないんです。(ホントはクッキー食べちゃったけど。)』
自室へ入ってきた途端、自身を心配するパルテナ様の声が空間に飛び交う。視線をずらし、相応の返事を返すがクッキーをつまんでしまった事実に関してはとても言えそうにない。自身の返事を耳にした彼女は、驚きの表情を浮かべたかと思えば優しい微笑みへと一変。そのまま私の身体を優しく抱きしめてくれた。
「力を封印した後遺症でしょうか。言ってくれれば、おじやでも作るのに。」
『い、いえ!それだけは!おキモチだけで!』
パルテナ様の厚意はとても有り難かったが、さすがに彼女の作る食事を摂取する自信はなかった。焦りながらも丁重に断る。正直な心境、彼女の作る料理を食べるぐらいならば、自分でなんとかしたほうがましに思える。大変恐縮なのだが。
「なにか、あったのですか?」
『……。』
私の身体を離すと、パルテナ様は心配そうな表情を浮かべ優しく問い掛けてくれた。いつもの慈悲深さか、私に話を聞く態勢であると示されている。パルテナ様に身の上話をするのはさすがに気が引けたのだが、誰かに話せば話せば気持ちも軽くなるものだと何処かで耳にした。
『!』
「……僕は、キミらしい答えが出るのを……ずっと、待ってるから。」
自室へと踵を返した刹那、背後から聞き慣れた声と彼らしい言葉が確かに耳を掠めた。彼からの嘘偽りのない思いが妙に心へ響いて温かくなるのを感じる。いつだって、そうだ。隣にいてほしい時や悩みや悲しみを抱えてしまった時。いつも彼はそこにいてくれた、何も言わずに。実は、パルテナ様よりも一緒にいる時間が長いのではと実感させられるぐらいに。少し、答えが出かかった気がした。他の人達とは相違する感情。それをピット君に抱いている気さえする。されども、まだ確信は得られない。彼の言葉で、動きを遮られてしまったが再度歩行し始める。と同時に少々顔を後ろへ背け、彼の言葉に対して肯定の意を込めて首を縦に頷いた。その際ピット君の表情は見えず仕舞いであったが、いつもの表情へ戻っていたに違いない。
『(ハーブティーでも飲もうかな。)』
食堂を後にした私は、真っ直ぐ自室へと歩いている。だが気分を落ち着かせたいし、ハーブティーでも飲みたい。そう思った時には、キッチンへ方向転換させていた。我ながら、機転を利かせるのが早い。お気に入りのティーポットとティーカップでティータイム。この羅列を聞くだけで、気持ちも高ぶる。先程、夕食に使用する食器を並べていたから今頃はイカロスお手製の夕食を摂っているだろう。今迄一度も食卓にいなかった前歴がなかったから、今回のケースが本当に初めてだ。出来るのならば、皆でワイワイ他愛のない会話を繰り広げつつ食事しているのがあるべき姿なのだろうが、余りの出来事に空腹感にすら襲われない。以前人々の恋路を応援するべく、相談に乗った際そんな内容が宙を飛び交い理解に苦しんだがこの状態を言うのだと初めて知る。記憶を遡らせてみては、今になって知る事実に罪悪感が芽生えてしまった。
キッチンでティーポットにハーブを入れて、湯を注ぐ。一分二分蒸らし、ハーブを取り除きはちみつを投入。お気に入りのティーカップとハーブティーが冷めないようにポットへティーコゼーを被せる。これで準備万端。あとは自室に持っていくだけ。ハーブティーのお供にクッキーはどうだろう。幸いにも戸棚の可愛らしい箱に数枚入っていた。ハーブティーを飲んで、気持ちを落ち着かせる筈がいつの間にか目的が変わっていないか等と突っ込みを入れられそうだがそこは笑ってスルーして頂きたい。ティーポット、ティーカップ。そしてお供のクッキー。それ等を持って、自室へ移動する。思ったより、食欲はあるらしい。
『(ピット君への、キモチ……か。)』
ティーカップにハーブティーを注ぎ、口へと持っていく。すぐさま、効力が得られたりしないが何処となく安堵している気もする。不思議だ。ほっと一息ついている。物事を考えると言うより、至福の時間を味わっている感覚。……危うく、目的を見失う所であった。ハーブティーもクッキーも美味しいけれど、頭を働かせなくては。
「セラ?部屋にいますか?入りますよ?」
『あっパルテナ様!』
……なんて思っていれば、パルテナ様の声と自室の扉を開くノックの音が。まさか、夕食も摂らずにクッキーを食べていたとパルテナ様が知ったら何と言うか恐ろしくて反射でクッキーを物陰に隠してしまう。パルテナ様がノックしたと同時に入ってくる強引さは、苦笑いを浮かべるしかない。少しの間でクッキーを隠すのに成功したが、いつ発見されてしまうか冷や汗が額から一滴伝う。
「セラ、どうしたのです。食堂に顔を出さないで。」
『……食欲が、ないんです。(ホントはクッキー食べちゃったけど。)』
自室へ入ってきた途端、自身を心配するパルテナ様の声が空間に飛び交う。視線をずらし、相応の返事を返すがクッキーをつまんでしまった事実に関してはとても言えそうにない。自身の返事を耳にした彼女は、驚きの表情を浮かべたかと思えば優しい微笑みへと一変。そのまま私の身体を優しく抱きしめてくれた。
「力を封印した後遺症でしょうか。言ってくれれば、おじやでも作るのに。」
『い、いえ!それだけは!おキモチだけで!』
パルテナ様の厚意はとても有り難かったが、さすがに彼女の作る食事を摂取する自信はなかった。焦りながらも丁重に断る。正直な心境、彼女の作る料理を食べるぐらいならば、自分でなんとかしたほうがましに思える。大変恐縮なのだが。
「なにか、あったのですか?」
『……。』
私の身体を離すと、パルテナ様は心配そうな表情を浮かべ優しく問い掛けてくれた。いつもの慈悲深さか、私に話を聞く態勢であると示されている。パルテナ様に身の上話をするのはさすがに気が引けたのだが、誰かに話せば話せば気持ちも軽くなるものだと何処かで耳にした。