第25章 戦いに終止符を(後編)
セラ
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「いまじゃ!撃て!」
「『はぁぁぁぁッ!!』」
照準を合わせ、発射ボタンを力強く押した。然すれば、最大限に溜まっていた力は砲塔を通じて一気に解き放ち、まばゆい光を発してハデスへと直撃する。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
超強力なレーザーが、ハデスの身体を徐々に砕き打ち消して行く。強力なレーザーの前ではさすがのハデスも再生が出来ず、戦う余力さえもう……残っていない。
「まいった……!まいったなぁ。ここまでやるとはね……」
断末魔の叫びが周辺に響き渡ったと思えば、そう呟き光と共に全て消失して行ったハデス。再生も適わず、冥府の神は二人の天使と女神の手に寄って倒され、浄化されて行った。
夕刻。茜色の空を闇が覆い尽くそうとしていた景色は変化し、夕暮れ時に見せる太陽が沈む前に眩い光をこれでもかと言わんばかりに発光していた。太陽の光を見つめ、砲塔を捨て去り地上へゆっくり降り立つ天使二人。
「『ピース!』」
二人で背中合わせに思い切り満面の笑顔でピースサインを作る。そのサインはまさしく勝利と平和のVサイン。遅ればせながらも、喜びの感情が自身を支配する。それはまるで、漣のよう。その直後、聞こえて来る街の民の歓声。その歓声を耳にすると思う。戦いは勝利を治め、ついに終わりを告げたのだ、と。
「助かったんだ……。」
『ほんとうに、よかった……。』
俄には信じ難いが、街の民の歓声が全てを物語っている。歓声を耳に飛翔の奇跡で飛び立とうとするピット君。目を見開かせたが瞬時に平静を装い、後に続く私。人間達に見守られながら、飛行して行く天使二人。そんな折、ナチュレちゃんから唐突な質問が私達へ飛んで来る。
「ピット、セラ。そなたらに聞いても せんなきことかもしれんがの。」
「なんだ?」
『なぁに?ナチュレちゃん。』
「そなたらはなぜ人間の味方をしておるのじゃ。パルテナは神に近い生きものだからと言っていたが、それだけではどうにも納得できんのじゃ。」
街の岬から、街の住居上空から移動し飛行中だ。街の民に手を振りつつも、ナチュレちゃん等の会話に耳を傾けながら答えを考えてみる。人間の味方をする理由。余り、深く考えた試しがなかった。思想と言うものか。複雑でいて実は単純。ナチュレちゃんからしてみたら、理解に苦しむのも何となく頷ける。私利私欲で動いている印象を受けているからこそ、私達が人間達を助けている些細な疑問を投げ掛けているのだろう。でも私は、人間達が思ったよりも誰かを助けながら支え合って生きているのを知っている。
「人間たちは生きものの中で唯一“心”を持っているから。」
『それに、その心はなにより強いよね。』
「自然のものにも心はある。見えないだけじゃ。」
「そうか……。でも、人間は信仰心を持っている!神を信じ、敬うのは人間だけじゃないか。」
脳裏に思い浮かべるのは、今迄関わって来た人間の皆。マグナさんやガイナス、それに私を助けてくれた親子の三人。ナチュレちゃんが放った初期化爆弾に寄って、木の幹に搦め捕られたあの兵士さん。あとは、神々の皆。結果的に私達を助けてくれたメデューサ。
今、私達は街の神殿上空を飛行し徘徊している。様々な討論を耳に流している状態だが、この討論の行く末に果たして確かな答えが存在しているのだろうか。それすら、怪しい。
「「信ずるものは救われる」か。」
「あれだけ派手に戦っておいて信ずるも信じないもないですけどね。」
『それ、言っちゃいますか。』
「では“信仰”というのは何のためにあるのじゃ。自らが助かり幸せになりたいとか天に召したいという“欲”のためじゃろう?!」
質疑応答で済む筈が、激しい討論へと発展していっている。聞いている傍ら、思わず苦笑い。ナチュレちゃんの声音と口振りからして、相当人間達を毛嫌いしているのが嫌と言う程に伝達されて来る。彼女の言い分も一理あるだろう。神を崇め、敬うのは人間達の身勝手な欲に過ぎない。それでもその教えに従い、毎日を懸命に生きている人間が居るのも事実だ。賛否両論になりそうな勢い。もう、口出ししないのが賢明な判断なのではないかと思い始めている心境。
「たしかに……。見かたによっては、そうなのかも。」
「あっさり認めるんじゃの。」
「欲に生まれ、欲に生きる愚かで小さな怪物。まるで神様みたいだと思いませんか?」
「いやいや!神様のワガママっぷりには誰もかないませんよ!」
『そうそう。それに比べたらかわいいモノです。』
「そなたらにはつきあってられんのう。」
神殿の上空から鐘を鳴り響かせる塔を越えて話は発展していくが、ナチュレちゃんの呆れを含めた声音が両耳に届き、その時点で会話は終了してしまった。くすくす笑みを浮かべつつ、太陽の光に向かって飛行の軌道を修正する。ピット君の闘志に呼ばれたのか、何処から伴なく現れたブラピ君と合流した私達は三人並んで飛行中。太陽の輝かしい光へ向かって、真っ直ぐ突き進んで行くのであった。
平和が齎された今日と言う日付は、歴史的なページにそっと刻まれた。だけれど、隣で飛行中のピット君は信じてくれた人間達を助けられたからそれで良いと笑うのだろう。彼が身を呈して守り抜いた人間達の未来が、光で溢れていてほしい。彼の頑張りが、人間達の心に深く刻まれていてほしい……只管にそう、願うばかりだ。彼の勇姿を、忘れないでいてほしい。
(To be Continued……)
ーーーーーーー
実はまだ続きます。あとがきは次回の章で。
by虹
「『はぁぁぁぁッ!!』」
照準を合わせ、発射ボタンを力強く押した。然すれば、最大限に溜まっていた力は砲塔を通じて一気に解き放ち、まばゆい光を発してハデスへと直撃する。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
超強力なレーザーが、ハデスの身体を徐々に砕き打ち消して行く。強力なレーザーの前ではさすがのハデスも再生が出来ず、戦う余力さえもう……残っていない。
「まいった……!まいったなぁ。ここまでやるとはね……」
断末魔の叫びが周辺に響き渡ったと思えば、そう呟き光と共に全て消失して行ったハデス。再生も適わず、冥府の神は二人の天使と女神の手に寄って倒され、浄化されて行った。
夕刻。茜色の空を闇が覆い尽くそうとしていた景色は変化し、夕暮れ時に見せる太陽が沈む前に眩い光をこれでもかと言わんばかりに発光していた。太陽の光を見つめ、砲塔を捨て去り地上へゆっくり降り立つ天使二人。
「『ピース!』」
二人で背中合わせに思い切り満面の笑顔でピースサインを作る。そのサインはまさしく勝利と平和のVサイン。遅ればせながらも、喜びの感情が自身を支配する。それはまるで、漣のよう。その直後、聞こえて来る街の民の歓声。その歓声を耳にすると思う。戦いは勝利を治め、ついに終わりを告げたのだ、と。
「助かったんだ……。」
『ほんとうに、よかった……。』
俄には信じ難いが、街の民の歓声が全てを物語っている。歓声を耳に飛翔の奇跡で飛び立とうとするピット君。目を見開かせたが瞬時に平静を装い、後に続く私。人間達に見守られながら、飛行して行く天使二人。そんな折、ナチュレちゃんから唐突な質問が私達へ飛んで来る。
「ピット、セラ。そなたらに聞いても せんなきことかもしれんがの。」
「なんだ?」
『なぁに?ナチュレちゃん。』
「そなたらはなぜ人間の味方をしておるのじゃ。パルテナは神に近い生きものだからと言っていたが、それだけではどうにも納得できんのじゃ。」
街の岬から、街の住居上空から移動し飛行中だ。街の民に手を振りつつも、ナチュレちゃん等の会話に耳を傾けながら答えを考えてみる。人間の味方をする理由。余り、深く考えた試しがなかった。思想と言うものか。複雑でいて実は単純。ナチュレちゃんからしてみたら、理解に苦しむのも何となく頷ける。私利私欲で動いている印象を受けているからこそ、私達が人間達を助けている些細な疑問を投げ掛けているのだろう。でも私は、人間達が思ったよりも誰かを助けながら支え合って生きているのを知っている。
「人間たちは生きものの中で唯一“心”を持っているから。」
『それに、その心はなにより強いよね。』
「自然のものにも心はある。見えないだけじゃ。」
「そうか……。でも、人間は信仰心を持っている!神を信じ、敬うのは人間だけじゃないか。」
脳裏に思い浮かべるのは、今迄関わって来た人間の皆。マグナさんやガイナス、それに私を助けてくれた親子の三人。ナチュレちゃんが放った初期化爆弾に寄って、木の幹に搦め捕られたあの兵士さん。あとは、神々の皆。結果的に私達を助けてくれたメデューサ。
今、私達は街の神殿上空を飛行し徘徊している。様々な討論を耳に流している状態だが、この討論の行く末に果たして確かな答えが存在しているのだろうか。それすら、怪しい。
「「信ずるものは救われる」か。」
「あれだけ派手に戦っておいて信ずるも信じないもないですけどね。」
『それ、言っちゃいますか。』
「では“信仰”というのは何のためにあるのじゃ。自らが助かり幸せになりたいとか天に召したいという“欲”のためじゃろう?!」
質疑応答で済む筈が、激しい討論へと発展していっている。聞いている傍ら、思わず苦笑い。ナチュレちゃんの声音と口振りからして、相当人間達を毛嫌いしているのが嫌と言う程に伝達されて来る。彼女の言い分も一理あるだろう。神を崇め、敬うのは人間達の身勝手な欲に過ぎない。それでもその教えに従い、毎日を懸命に生きている人間が居るのも事実だ。賛否両論になりそうな勢い。もう、口出ししないのが賢明な判断なのではないかと思い始めている心境。
「たしかに……。見かたによっては、そうなのかも。」
「あっさり認めるんじゃの。」
「欲に生まれ、欲に生きる愚かで小さな怪物。まるで神様みたいだと思いませんか?」
「いやいや!神様のワガママっぷりには誰もかないませんよ!」
『そうそう。それに比べたらかわいいモノです。』
「そなたらにはつきあってられんのう。」
神殿の上空から鐘を鳴り響かせる塔を越えて話は発展していくが、ナチュレちゃんの呆れを含めた声音が両耳に届き、その時点で会話は終了してしまった。くすくす笑みを浮かべつつ、太陽の光に向かって飛行の軌道を修正する。ピット君の闘志に呼ばれたのか、何処から伴なく現れたブラピ君と合流した私達は三人並んで飛行中。太陽の輝かしい光へ向かって、真っ直ぐ突き進んで行くのであった。
平和が齎された今日と言う日付は、歴史的なページにそっと刻まれた。だけれど、隣で飛行中のピット君は信じてくれた人間達を助けられたからそれで良いと笑うのだろう。彼が身を呈して守り抜いた人間達の未来が、光で溢れていてほしい。彼の頑張りが、人間達の心に深く刻まれていてほしい……只管にそう、願うばかりだ。彼の勇姿を、忘れないでいてほしい。
(To be Continued……)
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実はまだ続きます。あとがきは次回の章で。
by虹
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