第24章 三つの試練(後編)
セラ
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どれだけ私は意識を失い、眠り続けていたのだろうか。体力を回復させる一環だったのか、身体の神経全体に信号を送り心身共に休息させたのだと思う。食べもので回復もしたし、既に戦える態勢ではあるものの瞼が言うことを聞いてくれず、起きて行動するのが敵わずにいる。何度も何度も戦いを繰り広げているがあと一歩の所で眠気が勝利を治めてしまう。私は、ディントスから大事な役割を仰せつかった筈だが……ピット君はどの辺りにいるのだろう。意識はあるのだが、眠気が勝利を治めている今状況すら飲み込めていない。
「……い。セラ、起きろ。おい、セラ。もうちょっとで出番だぜ?」
「眠り続けているのか、セラは。」
「あぁ、そうらしいな。」
何故か至近距離で聞き覚えのある声が聞こえたと同時に、頬を手の甲で何度も叩かれている。痛みはない。実にソフトだ。瞼は言うことを聞いてはくれないものの、意識ははっきりしているから会話が成立しているのさえ鮮明に聞こえて来る。この声の主は、マグナと魔王ガイナスだ。話の流れからして二人はディントスに呼ばれ、私と同じくピット君の対戦相手らしい。私達は、この時ばかりは彼の敵なのだ。そんな面白そうな展開に私だけが取り残されるのでは物凄く勿体無いし、只切ない。再度、眠気と戦ってみる。瞼が思うように開いてくれない。力の浪費がそれだけ激しかったのだろうか。格闘し、勝利するのは果たしてどちらか。
「まーた眠り姫さんかよ、セラは。」
「では、王子のキスが必要だな。」
「(……王子の、キス……か。)」
『……もーう、ふたりして。私が聞いていないことをいいことに!好き勝手言っちゃってぇ!』
「ワリぃ、ワリぃ。」
「ジョーダンだ。」
二人は私が傍で聞いていないと思っていたのだろうが、実はバッチリ聞こえていた。瞼がなかなか強情で、一度は敗れたものの今度はやっと勝利を治められた私は瞼をぱっちり開き、上体を起こし二人に反論してみる。まさかそこで二人も私が起きるとは思いも寄らなかったのか顔を見合わせいつもの調子で謝ってくれた。魔王ガイナスとは一度戦ったから分かるけれどあの時の敵意は全く感じられず、マグナさんとの会話もそうであるが和気藹々としているのが伝達される。あの時の殺気はもう、ない。あの戦いが無駄ではなかったと感じた瞬間だ。ガイナスと戦っていなければ、一生救い出せなかった。そう考えると、本気で戦っていて良かったと思う。でなければ、こんな和やかな雰囲気が作られてほっこりしたりも出来なかっただろうに。まぁ、私の場合危うくガイナスに冥府界に送られそうになったけど。ほっこりした笑みから一変、嫌な記憶を蘇らせ苦笑いを浮かべている最中マグナさんが話題を切り出してきた。
「思ったよりも、はやく会えたな。」
『そうね。マグナさん。もっと時間がかかると思ってたわ。』
マグナさんの言葉で、はっとする。言われてみれば、そんな会話も交わした気もして慌てて話を合わせてみるが彼は私の不審な仕草に疑念の目を向けたりせず口角を上げていた。正直マグナさんにでもそんな表情を浮かべられるのか、なんて失礼極まりない感想を心中で述べている。戦闘時では絶対見せないであろう柔らかい表情。
「いつからロリコンになったのだ?マグナ。」
「バッ……!そんなんじゃねぇよ。」
『?』
こんな表情を見せる人物だっただろうか。首を傾げていれば、透かさずガイナスからの指摘。端で聞いていた私は、言葉の意味が分からず更に首を傾げてしまう。だがガイナスから指摘されたのが的を射ていたのか、珍しくマグナさんに焦りが窺えた。こんなので動揺する彼は、なかなかレアケースだ。私に至っては、さっぱり分からずに居る。
「とにかく。得物の調子はチェックしとけよ。」
茶化すガイナスにマグナさんは背を向けて、お決まりの台詞を言い放ち会話を強制的に終了させた。そんなに触れられたくなかったのだろうか。こちらとしては、初めて見せるマグナさんの表情に嬉しさも混ざっていたが。会話を強制的に終了させたマグナさんの後ろ耳が此見よがしに真っ赤だったのを見逃さなかった。
「……い。セラ、起きろ。おい、セラ。もうちょっとで出番だぜ?」
「眠り続けているのか、セラは。」
「あぁ、そうらしいな。」
何故か至近距離で聞き覚えのある声が聞こえたと同時に、頬を手の甲で何度も叩かれている。痛みはない。実にソフトだ。瞼は言うことを聞いてはくれないものの、意識ははっきりしているから会話が成立しているのさえ鮮明に聞こえて来る。この声の主は、マグナと魔王ガイナスだ。話の流れからして二人はディントスに呼ばれ、私と同じくピット君の対戦相手らしい。私達は、この時ばかりは彼の敵なのだ。そんな面白そうな展開に私だけが取り残されるのでは物凄く勿体無いし、只切ない。再度、眠気と戦ってみる。瞼が思うように開いてくれない。力の浪費がそれだけ激しかったのだろうか。格闘し、勝利するのは果たしてどちらか。
「まーた眠り姫さんかよ、セラは。」
「では、王子のキスが必要だな。」
「(……王子の、キス……か。)」
『……もーう、ふたりして。私が聞いていないことをいいことに!好き勝手言っちゃってぇ!』
「ワリぃ、ワリぃ。」
「ジョーダンだ。」
二人は私が傍で聞いていないと思っていたのだろうが、実はバッチリ聞こえていた。瞼がなかなか強情で、一度は敗れたものの今度はやっと勝利を治められた私は瞼をぱっちり開き、上体を起こし二人に反論してみる。まさかそこで二人も私が起きるとは思いも寄らなかったのか顔を見合わせいつもの調子で謝ってくれた。魔王ガイナスとは一度戦ったから分かるけれどあの時の敵意は全く感じられず、マグナさんとの会話もそうであるが和気藹々としているのが伝達される。あの時の殺気はもう、ない。あの戦いが無駄ではなかったと感じた瞬間だ。ガイナスと戦っていなければ、一生救い出せなかった。そう考えると、本気で戦っていて良かったと思う。でなければ、こんな和やかな雰囲気が作られてほっこりしたりも出来なかっただろうに。まぁ、私の場合危うくガイナスに冥府界に送られそうになったけど。ほっこりした笑みから一変、嫌な記憶を蘇らせ苦笑いを浮かべている最中マグナさんが話題を切り出してきた。
「思ったよりも、はやく会えたな。」
『そうね。マグナさん。もっと時間がかかると思ってたわ。』
マグナさんの言葉で、はっとする。言われてみれば、そんな会話も交わした気もして慌てて話を合わせてみるが彼は私の不審な仕草に疑念の目を向けたりせず口角を上げていた。正直マグナさんにでもそんな表情を浮かべられるのか、なんて失礼極まりない感想を心中で述べている。戦闘時では絶対見せないであろう柔らかい表情。
「いつからロリコンになったのだ?マグナ。」
「バッ……!そんなんじゃねぇよ。」
『?』
こんな表情を見せる人物だっただろうか。首を傾げていれば、透かさずガイナスからの指摘。端で聞いていた私は、言葉の意味が分からず更に首を傾げてしまう。だがガイナスから指摘されたのが的を射ていたのか、珍しくマグナさんに焦りが窺えた。こんなので動揺する彼は、なかなかレアケースだ。私に至っては、さっぱり分からずに居る。
「とにかく。得物の調子はチェックしとけよ。」
茶化すガイナスにマグナさんは背を向けて、お決まりの台詞を言い放ち会話を強制的に終了させた。そんなに触れられたくなかったのだろうか。こちらとしては、初めて見せるマグナさんの表情に嬉しさも混ざっていたが。会話を強制的に終了させたマグナさんの後ろ耳が此見よがしに真っ赤だったのを見逃さなかった。