第24章 三つの試練(後編)
セラ
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ピット君にしては、仮にも三対一だから苦戦を強いられている。マグナさんとガイナスにはダメージを与えているが、私に至ってはノーダメージだ。彼がどうやってここの戦いを切り抜けるのか見ものである。集中的にマグナさんへ遠距離を保ち、攻撃を仕掛けるピット君。それを守備するかの如く、ガイナスもピット君に向かって追尾弾を放ち、彼からの反射射撃を撥ね返す魔法陣を張っている。ピット君は……と言うと、その対処を瞬時且つ素早くすべくマグナさんと距離を開きつつも、魔法陣が消滅したと同時に射撃での攻撃。視界一杯に二人の姿を捉えての激戦。実に鮮やかだ。最初は三対一であるし、こちらが有利かとも思っていたが彼を舐めると痛い目を見る。必ず形勢逆転させ、勝利をものとするのがピット君である。
とか何とか言っている内にマグナさん、お次はガイナスと倒されてしまった。残るはハンデをくれていたのか、殆んどノーダメージの私だけがフィールドに残る。もう少し傍観していたかったけれど、それは無理らしい。
「セラちゃん!僕はセラちゃんと戦いたくはない!おねがいだ。降参してくれ!」
『ダメだよ、ピット君。これはピット君のためでもあるの。だから……降参してあーげない!』
微笑みを浮かべつつ自身の言葉が言い終わるのと同時に、ピット君へ放つ溜め射撃。私を説得するのに夢中で彼は、不意を衝かれ充分買わせる時間のある溜め射撃を簡単に喰らってしまう。ずっとずっと彼の隣で戦いぶりを両眼に焼き付けてきたのだ。彼の行動パターンは大いに予想出来る。私からの連続射撃を予期して、大きく距離を取るだろう。その距離を一気に詰め、打撃。と行きたいのだが、彼も必死らしく距離を狭めんとしている。言わば、逃走だ。なのに回避を専念している。これでは私へダメージを与えたり出来る筈がない。見縊られているのだろうか。
「ピット!セラはあなたを倒すつもりでいます。ここは間合いを詰めて、一気に……!」
「ダメですよ、パルテナ様。セラちゃんを守り通すって誓ったんだ。それを覆してまで、勝つ気はありません。」
「しかし、それではあなたが……ヤラレてしまいますよ!」
『ピット君……。』
見縊られているのでは?だなんて考えを巡らせてみたが、ピット君に限ってそれは有り得なかった。彼が反撃して来ない真意は、自分が私を守り通すと言う一つの信条からであった。パルテナ様大好きのピット君が彼女の助言を撥ね退けたりする日が訪れようとは夢にも思わなかったし、そう迄して守りたい信条なのだろうか。彼はその信条だけを曲げようとは決してしなかった。自分の身が仮に犠牲になろうとも、身を挺して守り通そうとしてくれた……でなかったら私はこの場に存在していなかったのは火を見るよりも明らかだ。彼の本心とも取れる信条を耳にし、言葉に詰まる。ピット君を討ち倒すつもりでこのフィールドに立ち尽くしているが、相手が危害を加えるつもりもない無抵抗の状態での攻撃は……不平等さが際立つ。只のいじめに過ぎない。
『ピット君!私を攻撃してみて!ほらッ!』
「イヤだよ。キミがなんと言おうと攻撃してきても、僕はゼッタイに動かない。」
『……。』
が、頑固者め……。想像以上にピット君の意思は非常に固く、私の言葉でもパルテナ様でも説得が難儀する。戦う方向に流れを持って行くのさえ敵わず、あんなにやる気に満ちていたのだが一気に削がれてしまう事態に発展してしまう。困った、これは困った。戦う素振りを一切見せない彼に私はやきもきしている。こういう時、口から次々に言葉の羅列が出て来る性質の存在を内心羨ましく思う。まさか戦闘拒否をされるだなんて誰が考えるか。そんな相手を説得させる話術を今の私は持ち合わせて等いなかった。戦闘開始のやる気は一体何処へやら。ピット君を目の前にして打撃コンボを喰らわせる意欲さえ湧いて来ない。
『ディントス!降参するわ。私の負けよ。』
「セラちゃん……。」
「ふぉっふぉっふぉ。まぁ、いいじゃろ。」
「まとめて撃破!」
「ちっ、やるじゃねぇか!」
この人物はまんまと私の闘争心を掻っ攫ってしまった。この場に居る全員が思っただろう。ピット君は最終的に私をも倒し、試練を乗り越えるだろう……と。誰もが脳裏に過らせていた。私もその内の一人だ。マグナさんとガイナスは苦戦を強いられながらも敵対しているのに、私には一切攻撃を加えずに戦闘拒否だとは。端からしたら舐められている。だが、私に対して告げた言葉の羅列を吐き出した彼の表情は、冗談を許さない真剣な表情であった。あの表情を見てしまったら最早ぐうの音も出ない。戦いに勝って、ピット君の意思に敗北してしまったのだ。けれど、余り悔しくない。寧ろ羞恥しながらも、誇らしく思う。
とか何とか言っている内にマグナさん、お次はガイナスと倒されてしまった。残るはハンデをくれていたのか、殆んどノーダメージの私だけがフィールドに残る。もう少し傍観していたかったけれど、それは無理らしい。
「セラちゃん!僕はセラちゃんと戦いたくはない!おねがいだ。降参してくれ!」
『ダメだよ、ピット君。これはピット君のためでもあるの。だから……降参してあーげない!』
微笑みを浮かべつつ自身の言葉が言い終わるのと同時に、ピット君へ放つ溜め射撃。私を説得するのに夢中で彼は、不意を衝かれ充分買わせる時間のある溜め射撃を簡単に喰らってしまう。ずっとずっと彼の隣で戦いぶりを両眼に焼き付けてきたのだ。彼の行動パターンは大いに予想出来る。私からの連続射撃を予期して、大きく距離を取るだろう。その距離を一気に詰め、打撃。と行きたいのだが、彼も必死らしく距離を狭めんとしている。言わば、逃走だ。なのに回避を専念している。これでは私へダメージを与えたり出来る筈がない。見縊られているのだろうか。
「ピット!セラはあなたを倒すつもりでいます。ここは間合いを詰めて、一気に……!」
「ダメですよ、パルテナ様。セラちゃんを守り通すって誓ったんだ。それを覆してまで、勝つ気はありません。」
「しかし、それではあなたが……ヤラレてしまいますよ!」
『ピット君……。』
見縊られているのでは?だなんて考えを巡らせてみたが、ピット君に限ってそれは有り得なかった。彼が反撃して来ない真意は、自分が私を守り通すと言う一つの信条からであった。パルテナ様大好きのピット君が彼女の助言を撥ね退けたりする日が訪れようとは夢にも思わなかったし、そう迄して守りたい信条なのだろうか。彼はその信条だけを曲げようとは決してしなかった。自分の身が仮に犠牲になろうとも、身を挺して守り通そうとしてくれた……でなかったら私はこの場に存在していなかったのは火を見るよりも明らかだ。彼の本心とも取れる信条を耳にし、言葉に詰まる。ピット君を討ち倒すつもりでこのフィールドに立ち尽くしているが、相手が危害を加えるつもりもない無抵抗の状態での攻撃は……不平等さが際立つ。只のいじめに過ぎない。
『ピット君!私を攻撃してみて!ほらッ!』
「イヤだよ。キミがなんと言おうと攻撃してきても、僕はゼッタイに動かない。」
『……。』
が、頑固者め……。想像以上にピット君の意思は非常に固く、私の言葉でもパルテナ様でも説得が難儀する。戦う方向に流れを持って行くのさえ敵わず、あんなにやる気に満ちていたのだが一気に削がれてしまう事態に発展してしまう。困った、これは困った。戦う素振りを一切見せない彼に私はやきもきしている。こういう時、口から次々に言葉の羅列が出て来る性質の存在を内心羨ましく思う。まさか戦闘拒否をされるだなんて誰が考えるか。そんな相手を説得させる話術を今の私は持ち合わせて等いなかった。戦闘開始のやる気は一体何処へやら。ピット君を目の前にして打撃コンボを喰らわせる意欲さえ湧いて来ない。
『ディントス!降参するわ。私の負けよ。』
「セラちゃん……。」
「ふぉっふぉっふぉ。まぁ、いいじゃろ。」
「まとめて撃破!」
「ちっ、やるじゃねぇか!」
この人物はまんまと私の闘争心を掻っ攫ってしまった。この場に居る全員が思っただろう。ピット君は最終的に私をも倒し、試練を乗り越えるだろう……と。誰もが脳裏に過らせていた。私もその内の一人だ。マグナさんとガイナスは苦戦を強いられながらも敵対しているのに、私には一切攻撃を加えずに戦闘拒否だとは。端からしたら舐められている。だが、私に対して告げた言葉の羅列を吐き出した彼の表情は、冗談を許さない真剣な表情であった。あの表情を見てしまったら最早ぐうの音も出ない。戦いに勝って、ピット君の意思に敗北してしまったのだ。けれど、余り悔しくない。寧ろ羞恥しながらも、誇らしく思う。