第24章 三つの試練(前編)
セラ
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「ピット、」
『セラ、』
「『出ます!』」
あの時、正直私達は冥府の王に対して歯が立たなかった。言わば、神様だからだろうか。吸い込まれ体内に入ってしまった際は消化される運命を辿り、自身の壮大な人生に幕を閉じてしまうのではないかと危惧していたけれど黒き彼……ブラピ君のお陰でどうにかして脱出を可能とし、一時の難は逃れた。しかし、その場で受けた傷はなかなか癒えない。その代償がメデューサを討伐する上で使用された三種の神器だ。はっきり言って25年前の戦いで英雄になったピット君は、あの神器を装備したあの姿で人々の胸に刻まれた筈。確実に象徴と言っていい。そんな英雄譚が刻まれた傍には、三種の神器が欠かせないであろう。そんな神器をいとも容易く破壊した冥府の王に成す術はないのか。心臓を打ち砕いてもピンピンしており、ダメージを受けた様子もなかったぐらいだ。心臓が弱点ではなかったのか。それとも、あの心臓はダミーに過ぎなかったのか。
いずれにせよ心臓が弱点ではないとはっきり分かったが、ハデスに勝利するビジョンが視えて来ない。恐らくゲートから飛行しているこの時点でパルテナ様のことだ。何か考えがあるのだろう。そんな考えを余儀無くしていれば、パルテナ様が飛行中の私達へ向けて話し掛けて来た。
「このままではハデスを倒すことは出来ないでしょう。」
「ダテに冥府の王じゃ ありませんね……。」
『心臓を潰しても、ビクともしてませんでしたしね。』
「……セラちゃん、なんかブッソウだよ。」
太陽が西へ西へ沈みかけている正に夕暮れ時。雲の色が白と橙色でグラデーションしている景色が目の前に広がっており、この時間でお勤めも悪くないかなぁ。なぁんて思っている今日この頃。話の内容は思ったよりも暗め。それはそれで当然だ。何せ、前回結構な度合いでヤラレてしまったのだし、次第に会話の進行状況は対策本部になる。転んでもただでは起きぬとは良く言ったものだ。その言葉そのものがまるで私達のために作られたかの如く、ピッタリ当て嵌まる。前回の戦いに於いてもマイナス要素だけが際立った訳ではない。それだったら私達も今こうして出陣していなかっただろう。ピット君の物言いに対しては聞こえなかった振りをする。
「そこで、神器の神の力を借りることにしました。」
「『神器の神?』」
『神器にも神様がいるんですね。』
「ディントス。三種の神器の製作者でもあります。あなたがたが持っているヘンテコな神器も彼の加護があってこそ。」
「ヘンテコって!」
『まぁ、どれもこれもユニークではあるけど。』
私達の出陣理由はやはり、ハデス対策に寄るものだった。話の流れからして大いに予想出来たが、まさか神器の神様に頼むだなんてそこ迄は考えもしなかった。さすがはパルテナ様だ。目先だけではなく、一にも二にも更に先を見通しておられる。神器の神、ディントス。私達が向かうべき目的地は何処だか分かった。言わずともディントスが居住している何処か、だろう。それを証拠に飛翔の奇跡の飛行ルートが順調に下降した。それは別に良いのだが、一つだけ謎に思う部分がある。それは……
この瞬間も冥府軍と自然軍率いる魔物達がウヨウヨワンサカ存在し、こちらへ攻撃を仕掛けて来るのだ。いつものパターンだが、肝心のハデスとナチュレちゃんの声すら聞こえていない始末。邪魔立てしようものなら真っ先に計画を打ち明け、こちら側に接触して来そうだがそんな気配もない。妙な違和感を覚えている。
「三種の神器もハデスが壊してしまったことだし新たにパワーアップした三種の神器を作ってもらえないかと。」
『それ、かっこいいですね!』
「つまり、最終兵器ですね。」
「ハイ。」
「燃える展開ですね。」
「ハイ。」
「……ところで、冥府軍や自然軍がやって来てますけど。」
「ハイ。」
「おかしくないですか?」
「おかしいですね。」
『これまたおかしいね。』
「オーラム軍まで混じっちゃってるし。これは、もしや……?」
妙な違和感は消失せず、寧ろ膨張しているかのようだ。そんな折、話される狙い。神器の神にパワーアップした三種の神器を作ってもらうのは分かったけれど、こちらから出向いて尚且つ交渉するのだろうか。直談判と言うものであろうか。ディントスが私達に頭を下げて素直に協力してくれる程素直な性格ならば良いのだが、今迄の相手から推察すると神様やら魔王やら女王やら黒き彼やらは実直……とは表現し難い曲者揃いであった。そんな相手達に幾度となく命を狙われたのも数知れず。それでもめげずに乗り越えて来たのだから、その行跡を自分で称賛したいぐらいだ。そんな猛者達に含まれているディントスが果たして私達の申し出に対し、素直に首を縦に頷くだろうか。正直な心境、非常に怪しい。
『セラ、』
「『出ます!』」
あの時、正直私達は冥府の王に対して歯が立たなかった。言わば、神様だからだろうか。吸い込まれ体内に入ってしまった際は消化される運命を辿り、自身の壮大な人生に幕を閉じてしまうのではないかと危惧していたけれど黒き彼……ブラピ君のお陰でどうにかして脱出を可能とし、一時の難は逃れた。しかし、その場で受けた傷はなかなか癒えない。その代償がメデューサを討伐する上で使用された三種の神器だ。はっきり言って25年前の戦いで英雄になったピット君は、あの神器を装備したあの姿で人々の胸に刻まれた筈。確実に象徴と言っていい。そんな英雄譚が刻まれた傍には、三種の神器が欠かせないであろう。そんな神器をいとも容易く破壊した冥府の王に成す術はないのか。心臓を打ち砕いてもピンピンしており、ダメージを受けた様子もなかったぐらいだ。心臓が弱点ではなかったのか。それとも、あの心臓はダミーに過ぎなかったのか。
いずれにせよ心臓が弱点ではないとはっきり分かったが、ハデスに勝利するビジョンが視えて来ない。恐らくゲートから飛行しているこの時点でパルテナ様のことだ。何か考えがあるのだろう。そんな考えを余儀無くしていれば、パルテナ様が飛行中の私達へ向けて話し掛けて来た。
「このままではハデスを倒すことは出来ないでしょう。」
「ダテに冥府の王じゃ ありませんね……。」
『心臓を潰しても、ビクともしてませんでしたしね。』
「……セラちゃん、なんかブッソウだよ。」
太陽が西へ西へ沈みかけている正に夕暮れ時。雲の色が白と橙色でグラデーションしている景色が目の前に広がっており、この時間でお勤めも悪くないかなぁ。なぁんて思っている今日この頃。話の内容は思ったよりも暗め。それはそれで当然だ。何せ、前回結構な度合いでヤラレてしまったのだし、次第に会話の進行状況は対策本部になる。転んでもただでは起きぬとは良く言ったものだ。その言葉そのものがまるで私達のために作られたかの如く、ピッタリ当て嵌まる。前回の戦いに於いてもマイナス要素だけが際立った訳ではない。それだったら私達も今こうして出陣していなかっただろう。ピット君の物言いに対しては聞こえなかった振りをする。
「そこで、神器の神の力を借りることにしました。」
「『神器の神?』」
『神器にも神様がいるんですね。』
「ディントス。三種の神器の製作者でもあります。あなたがたが持っているヘンテコな神器も彼の加護があってこそ。」
「ヘンテコって!」
『まぁ、どれもこれもユニークではあるけど。』
私達の出陣理由はやはり、ハデス対策に寄るものだった。話の流れからして大いに予想出来たが、まさか神器の神様に頼むだなんてそこ迄は考えもしなかった。さすがはパルテナ様だ。目先だけではなく、一にも二にも更に先を見通しておられる。神器の神、ディントス。私達が向かうべき目的地は何処だか分かった。言わずともディントスが居住している何処か、だろう。それを証拠に飛翔の奇跡の飛行ルートが順調に下降した。それは別に良いのだが、一つだけ謎に思う部分がある。それは……
この瞬間も冥府軍と自然軍率いる魔物達がウヨウヨワンサカ存在し、こちらへ攻撃を仕掛けて来るのだ。いつものパターンだが、肝心のハデスとナチュレちゃんの声すら聞こえていない始末。邪魔立てしようものなら真っ先に計画を打ち明け、こちら側に接触して来そうだがそんな気配もない。妙な違和感を覚えている。
「三種の神器もハデスが壊してしまったことだし新たにパワーアップした三種の神器を作ってもらえないかと。」
『それ、かっこいいですね!』
「つまり、最終兵器ですね。」
「ハイ。」
「燃える展開ですね。」
「ハイ。」
「……ところで、冥府軍や自然軍がやって来てますけど。」
「ハイ。」
「おかしくないですか?」
「おかしいですね。」
『これまたおかしいね。』
「オーラム軍まで混じっちゃってるし。これは、もしや……?」
妙な違和感は消失せず、寧ろ膨張しているかのようだ。そんな折、話される狙い。神器の神にパワーアップした三種の神器を作ってもらうのは分かったけれど、こちらから出向いて尚且つ交渉するのだろうか。直談判と言うものであろうか。ディントスが私達に頭を下げて素直に協力してくれる程素直な性格ならば良いのだが、今迄の相手から推察すると神様やら魔王やら女王やら黒き彼やらは実直……とは表現し難い曲者揃いであった。そんな相手達に幾度となく命を狙われたのも数知れず。それでもめげずに乗り越えて来たのだから、その行跡を自分で称賛したいぐらいだ。そんな猛者達に含まれているディントスが果たして私達の申し出に対し、素直に首を縦に頷くだろうか。正直な心境、非常に怪しい。
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