第23章 決戦!ハデス(後編)
セラ
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……これは……幻覚なのだろうか。これは、そうだな。自分がまだ未熟だった時の……メデューサが美しい姿を保っていた頃だろう。嬉々としながら、メデューサへ花飾りをプレゼントしたくて美しく咲き乱れている花畑へ彼女と共に来ている。彼女は私に微笑みかけながら、花の匂いを嗅ぎ一輪の花を摘む。優しく風が私達の頬を撫で、私は……拙いながらも彼女に喜んでもらいたくて花飾りを懸命に作っているのだ。穏やかでかけがえのない時間。こんな時間がずっと続けばいいのに……未熟ながらも心からそう願っていた。しかしその幸せな時間も長くは続かず、悲劇は起こる……。結局、あの花飾りもメデューサにプレゼント出来ず仕舞いになってしまった。
「ここは……?!」
「パルテナ様!パルテナ様!!」
誰かの名前を呼ぶ声、あの声は……。聞き覚えのある声に反応して、眉間に皺を寄せてしまうが通常の表情に戻る。記憶が朧げであるけれど、何か目的があった気がするのだが果たしてなんだったのだろう。意識すらはっきりしない。そもそもここは何処なのだろう。メデューサと共に来たあの美しい花畑なのか。それとも、別の場所。神経が私に起きる信号を流してくれているのだが、なかなか思い通りに瞼は開いてくれず双眸は未だ閉じられたままだ。
「……。聞こえないのか?」
「飛翔の奇跡も切れている……。とにかく、先に進むために目の前の敵を浄化しなきゃ……!」
やはりまだ聞こえて来る、慣れている声。それこそ四六時中聞いている感覚に陥る。だが一体誰であるのか、いまいちはっきりしない。何故私が未熟だった時の幻覚に第三者の声が耳に届くのだ。しかも、あの頃との会話にすら合致していない。あの声は……。確か、その声の主に前向きな感情を抱いていた気がする。またしても私達を脅かす存在を打倒してくれるだろう、あの人物に。希望という名の感情を。
「その前にセラちゃんを起こさなきゃ!セラちゃん!セラちゃん!聞こえてる?!セラちゃん!!」
『……。』
今度は耳元ではっきりくっきり聞こえて来る第三者の声。メデューサが名前を呼んでくれた時よりもずっと力強くて、温かい。何故か身体を揺すられている。恐らく第三者がそうしてくれているのだろう。そもそもどうして私を起こそうと身体迄揺すって名前を呼んでくれている……。あなたは一体……。
「セラちゃん!!」
『!』
必死な声で私の名前を何度も呼ぶ彼。その働きもあったから私は漸く瞼を開き、この場所に復帰出来るようになる。メデューサと共に美しい花畑を訪れたあの出来事は単なる思い出に過ぎなかったし、夢の中だけの世界だったのだ。実際瞼を見開き、起き上がって周囲を見渡せば美しい花畑なんて当然の如く存在せず、眼に映るのは冥府城のエントランスを彷彿させる物々しさが広がっていた。正直ここが何処だかは分からない。けれど、妙に残念な気持ちに支配されてしまう。
「セラちゃん?!だいじょうぶ……?!」
『……へっ?』
そうだ。彼は、ピット君だ。あの時も、そして今も。ううん……今だけじゃない。何回も必死になって助けてくれた私達の優しくて強い救世主だ。どうして一瞬でも忘れてしまったのだろう。いつでも傍に居てくれたのに。悲しくて辛い時、嬉しくて誰かと喜びを分かち合いたい時も隣にはいつも彼が居た。それにたった今この瞬間でさえ、不安で仕方がない時にもこうして離れず戦わんとしてくれている。下手したら、私の隣にいつも居るのは彼なのではないか。あの時メデューサと共にいられて満足している筈なのに心の中何処かぽっかり穴が空いているのとでは訳が違う。夢物語でも戻りたくない心情だってある。懐かしさに負けて、あの頃の状態を保っていたら違う未来が待ち受けていただろう。それなのに、その気持ちを相殺する威力を彼が持ち合わせている。そうでなかったら、心が満たされたりはしなかっただろう。
ピット君に心配され、驚きながらも両頬を両手で触れば……止めどなく両眼から涙の滴が伝っているのに気付く。慌てて手の甲を使って拭ってみるけれど決して止まってはくれなくて、涙は次から次へと溢れて来る。隣で見ていたピット君はオロオロ。悲しみの気持ちで溢れているのではないこの涙。けれど止める術を知らない私は、まるで子供のように泣きじゃくった。そんな私を、ピット君は微笑みを浮かべ優しく抱きしめてくれた。泣きじゃくる子供をあやす母のように。
「冥府軍のようだけど……。軽く引くなぁ。」
『うわぁ……いっぱいいるね。』
「セラちゃん、もうだいじょうぶなの?」
『うん!ありがとう、ピット君。』
ピット君があやしてくれたお陰で落ち着いた。戦いの場でありながら、わんわん泣き喚くのもどうなのだろう。冷静に考えれば考える程、後から来る羞恥心。恥ずかしさの余り顔を赤らめてしまったが、ピット君は笑みを浮かべるだけだった。
「ここは……?!」
「パルテナ様!パルテナ様!!」
誰かの名前を呼ぶ声、あの声は……。聞き覚えのある声に反応して、眉間に皺を寄せてしまうが通常の表情に戻る。記憶が朧げであるけれど、何か目的があった気がするのだが果たしてなんだったのだろう。意識すらはっきりしない。そもそもここは何処なのだろう。メデューサと共に来たあの美しい花畑なのか。それとも、別の場所。神経が私に起きる信号を流してくれているのだが、なかなか思い通りに瞼は開いてくれず双眸は未だ閉じられたままだ。
「……。聞こえないのか?」
「飛翔の奇跡も切れている……。とにかく、先に進むために目の前の敵を浄化しなきゃ……!」
やはりまだ聞こえて来る、慣れている声。それこそ四六時中聞いている感覚に陥る。だが一体誰であるのか、いまいちはっきりしない。何故私が未熟だった時の幻覚に第三者の声が耳に届くのだ。しかも、あの頃との会話にすら合致していない。あの声は……。確か、その声の主に前向きな感情を抱いていた気がする。またしても私達を脅かす存在を打倒してくれるだろう、あの人物に。希望という名の感情を。
「その前にセラちゃんを起こさなきゃ!セラちゃん!セラちゃん!聞こえてる?!セラちゃん!!」
『……。』
今度は耳元ではっきりくっきり聞こえて来る第三者の声。メデューサが名前を呼んでくれた時よりもずっと力強くて、温かい。何故か身体を揺すられている。恐らく第三者がそうしてくれているのだろう。そもそもどうして私を起こそうと身体迄揺すって名前を呼んでくれている……。あなたは一体……。
「セラちゃん!!」
『!』
必死な声で私の名前を何度も呼ぶ彼。その働きもあったから私は漸く瞼を開き、この場所に復帰出来るようになる。メデューサと共に美しい花畑を訪れたあの出来事は単なる思い出に過ぎなかったし、夢の中だけの世界だったのだ。実際瞼を見開き、起き上がって周囲を見渡せば美しい花畑なんて当然の如く存在せず、眼に映るのは冥府城のエントランスを彷彿させる物々しさが広がっていた。正直ここが何処だかは分からない。けれど、妙に残念な気持ちに支配されてしまう。
「セラちゃん?!だいじょうぶ……?!」
『……へっ?』
そうだ。彼は、ピット君だ。あの時も、そして今も。ううん……今だけじゃない。何回も必死になって助けてくれた私達の優しくて強い救世主だ。どうして一瞬でも忘れてしまったのだろう。いつでも傍に居てくれたのに。悲しくて辛い時、嬉しくて誰かと喜びを分かち合いたい時も隣にはいつも彼が居た。それにたった今この瞬間でさえ、不安で仕方がない時にもこうして離れず戦わんとしてくれている。下手したら、私の隣にいつも居るのは彼なのではないか。あの時メデューサと共にいられて満足している筈なのに心の中何処かぽっかり穴が空いているのとでは訳が違う。夢物語でも戻りたくない心情だってある。懐かしさに負けて、あの頃の状態を保っていたら違う未来が待ち受けていただろう。それなのに、その気持ちを相殺する威力を彼が持ち合わせている。そうでなかったら、心が満たされたりはしなかっただろう。
ピット君に心配され、驚きながらも両頬を両手で触れば……止めどなく両眼から涙の滴が伝っているのに気付く。慌てて手の甲を使って拭ってみるけれど決して止まってはくれなくて、涙は次から次へと溢れて来る。隣で見ていたピット君はオロオロ。悲しみの気持ちで溢れているのではないこの涙。けれど止める術を知らない私は、まるで子供のように泣きじゃくった。そんな私を、ピット君は微笑みを浮かべ優しく抱きしめてくれた。泣きじゃくる子供をあやす母のように。
「冥府軍のようだけど……。軽く引くなぁ。」
『うわぁ……いっぱいいるね。』
「セラちゃん、もうだいじょうぶなの?」
『うん!ありがとう、ピット君。』
ピット君があやしてくれたお陰で落ち着いた。戦いの場でありながら、わんわん泣き喚くのもどうなのだろう。冷静に考えれば考える程、後から来る羞恥心。恥ずかしさの余り顔を赤らめてしまったが、ピット君は笑みを浮かべるだけだった。
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