第23章 決戦!ハデス(前編)
セラ
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見逃してあげたいのは山々だが、ハデスを守備するのであればこちらも浄化するしかない。通常の神器でボコボコにするよりも痛覚は遥かに上だろう。こういう時、味方で良かったなんて痛烈に思うのだ。それを証拠に隣のピット君から「僕からゼッタイ離れないで。セラちゃん。」だなんて言ってもらったりするし。自分の身は自分で守れるし、メデューサ戦の時みたいにヘマしないよう気をつけるつもりでいるし、これ以上ピット君の負担を増やす訳には行かないのだが彼の真っ直ぐな眼差しに首を縦に頷くしかなかった。
「必ず守れよ、セラを。守りきれなかったら、承知しないからな。」
「(僕だって、わかっているさ。)」
空は橙色を鮮やかに着色していたが、黒い雲が空を覆い始めた。そんな折、耳に届くはパルテナ様の声。
「いきますよ、ピット!セラ!」
「望むところです!!」
『エイ・エイ・オー!!』
荒れ地の中心に入り込める大きな穴があって、すんなりその中へ入り下降して行く。飛行スピードは更に加速、暗く深い場所にも当然魔物達は潜伏し、こちらへ攻撃を仕掛けて来る。暗くてジメッとした空間を好むとか耳にしたが、さすがに大勢過ぎると思う。それとも思考を働かせたハデスの仕業か。いずれにせよ、犇めく魔物等を浄化しに掛かる私達。直ぐ近くにオーンが接近していたけれど、三種の神器を使いこなすピット君にはまさに敵なし。浄化不可能、打つ手なしと迄言われたオーンに対しても何のその。眼にも止まらぬ速さで射撃を加え、浄化へ繋げていた。華麗なる神器捌きである。天晴と言わざるを得ない。手慣れている。半ば感心しながらも順調にルートを進む。もう既に冥府界へ辿り着いている筈だが、ハデスはどの辺りに居るのだろう。あの図体でもメデューサのように居城を構えていると思うが、それらしき建造物は視界に映らない。まだまだ先なのだろうか。
「パルテナ様、ハデスの居城はどのあたりにあるのですか?!」
『やっぱりもっと先とか?』
「冥府の王に居城などありません。」
「なぁんだ、雨風しのぐ家もないんですか。」
『なんか、かわいそう……。』
「いやいや、お金が無いわけじゃないんですよ。むしろ冥府の闇ならどこでも住みかになりえるという感じでしょうか。」
色々思索していたら、ナイスタイミングでピット君がパルテナ様に問い掛けてくれた。辿り着かないから、その道程は遠く居城すら窺えないのかと思いきやそうではなくて単に根城すらないのだと言う。これには、麺喰らいだ。元々ないのでは探す手立てもない。敵であり、対立しているものの同情の念を覚える。メデューサですら、あんなに立派な居城に暮らしていたのに。ハデスはそれすら敵わないだなんて。苦労しているのだなと眉尻を下げていたら、パルテナ様が慌てて弁明しているのが耳に届く。あの楽観的な性格所以だろうか。「冥府すべてがハデスさまのテリトリーなんだよね。だから、家も必要ないのよ。」なんて聞こえて来そうな勢いだ。冥府の至る部分が住みかになるのはどんな気持ちだろう。正直な心境、考えたくもない事柄だ。
「警戒なさい、ピット セラ。この深い闇の中すべてにハデスがいるかのように感じます。」
「そんなこと言われましても……。」
『どうすれば……。』
「『……。』」
どんどん進むにつれて、闇は濃くなって行く。パルテナ様が加護してくださっているから問題はないが、体感温度が下がる感覚。悍しい光景が今も尚広がっている。それでいて、この空間の何処かにハデスが居るとしたら……状況は最悪だ。気がつけば、あんなにワンサカ潜伏していた魔物達が何処にも存在しておらず、張り合いがなくなってしまう。そんな冗談言っている場合ではないと頭では分かっているのだが、そうでも言っておかないと気持ちが保てなくなりそうだった。
緊迫した雰囲気、暗い闇の中、浮かび上がる不思議な模様。パルテナ様曰く、その模様に当たってしまえばダメージは免れないらしい。塵も積もれば何とやら、ダメージも蓄積すれば最終的に行き着くのは“ヤラレチャッタ”だ。
幾ら復活できても、またこの通路を通過しなくてはハデスにたどり着けはしない。慎重に回避しなくては。
無数の模様がこちらに向かって来る。右側に飛んで来るならば、即座に右下へ。飛距離の速度からしても回避していける。闇の中が音を飲み込む中、模様からの不思議な攻撃を何とか乗り越えた。ほっと安堵の溜息。
「ようこそ!!」
「うわッ!!」
『きゃあッ!!』
漸く攻撃を切り抜けた闇の先に待ち構えていたのは冥府神ハデスであった。今、私達はハデスの手厚い殴打にひっくり返りながらも何とか態勢を整える。余裕綽々な表情で立ち尽くすその図体は私達の何千倍もあり、幻影で造られた虚像ではない。本物だ。
「必ず守れよ、セラを。守りきれなかったら、承知しないからな。」
「(僕だって、わかっているさ。)」
空は橙色を鮮やかに着色していたが、黒い雲が空を覆い始めた。そんな折、耳に届くはパルテナ様の声。
「いきますよ、ピット!セラ!」
「望むところです!!」
『エイ・エイ・オー!!』
荒れ地の中心に入り込める大きな穴があって、すんなりその中へ入り下降して行く。飛行スピードは更に加速、暗く深い場所にも当然魔物達は潜伏し、こちらへ攻撃を仕掛けて来る。暗くてジメッとした空間を好むとか耳にしたが、さすがに大勢過ぎると思う。それとも思考を働かせたハデスの仕業か。いずれにせよ、犇めく魔物等を浄化しに掛かる私達。直ぐ近くにオーンが接近していたけれど、三種の神器を使いこなすピット君にはまさに敵なし。浄化不可能、打つ手なしと迄言われたオーンに対しても何のその。眼にも止まらぬ速さで射撃を加え、浄化へ繋げていた。華麗なる神器捌きである。天晴と言わざるを得ない。手慣れている。半ば感心しながらも順調にルートを進む。もう既に冥府界へ辿り着いている筈だが、ハデスはどの辺りに居るのだろう。あの図体でもメデューサのように居城を構えていると思うが、それらしき建造物は視界に映らない。まだまだ先なのだろうか。
「パルテナ様、ハデスの居城はどのあたりにあるのですか?!」
『やっぱりもっと先とか?』
「冥府の王に居城などありません。」
「なぁんだ、雨風しのぐ家もないんですか。」
『なんか、かわいそう……。』
「いやいや、お金が無いわけじゃないんですよ。むしろ冥府の闇ならどこでも住みかになりえるという感じでしょうか。」
色々思索していたら、ナイスタイミングでピット君がパルテナ様に問い掛けてくれた。辿り着かないから、その道程は遠く居城すら窺えないのかと思いきやそうではなくて単に根城すらないのだと言う。これには、麺喰らいだ。元々ないのでは探す手立てもない。敵であり、対立しているものの同情の念を覚える。メデューサですら、あんなに立派な居城に暮らしていたのに。ハデスはそれすら敵わないだなんて。苦労しているのだなと眉尻を下げていたら、パルテナ様が慌てて弁明しているのが耳に届く。あの楽観的な性格所以だろうか。「冥府すべてがハデスさまのテリトリーなんだよね。だから、家も必要ないのよ。」なんて聞こえて来そうな勢いだ。冥府の至る部分が住みかになるのはどんな気持ちだろう。正直な心境、考えたくもない事柄だ。
「警戒なさい、ピット セラ。この深い闇の中すべてにハデスがいるかのように感じます。」
「そんなこと言われましても……。」
『どうすれば……。』
「『……。』」
どんどん進むにつれて、闇は濃くなって行く。パルテナ様が加護してくださっているから問題はないが、体感温度が下がる感覚。悍しい光景が今も尚広がっている。それでいて、この空間の何処かにハデスが居るとしたら……状況は最悪だ。気がつけば、あんなにワンサカ潜伏していた魔物達が何処にも存在しておらず、張り合いがなくなってしまう。そんな冗談言っている場合ではないと頭では分かっているのだが、そうでも言っておかないと気持ちが保てなくなりそうだった。
緊迫した雰囲気、暗い闇の中、浮かび上がる不思議な模様。パルテナ様曰く、その模様に当たってしまえばダメージは免れないらしい。塵も積もれば何とやら、ダメージも蓄積すれば最終的に行き着くのは“ヤラレチャッタ”だ。
幾ら復活できても、またこの通路を通過しなくてはハデスにたどり着けはしない。慎重に回避しなくては。
無数の模様がこちらに向かって来る。右側に飛んで来るならば、即座に右下へ。飛距離の速度からしても回避していける。闇の中が音を飲み込む中、模様からの不思議な攻撃を何とか乗り越えた。ほっと安堵の溜息。
「ようこそ!!」
「うわッ!!」
『きゃあッ!!』
漸く攻撃を切り抜けた闇の先に待ち構えていたのは冥府神ハデスであった。今、私達はハデスの手厚い殴打にひっくり返りながらも何とか態勢を整える。余裕綽々な表情で立ち尽くすその図体は私達の何千倍もあり、幻影で造られた虚像ではない。本物だ。