第21章 混沌の狭間(後編)
セラ
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手を伸ばし掴もうとするのだが、その手は空を切る。その間、繰り広げられた会話だ。ピット君はブラピ君を助ける用途で飛翔の奇跡を発動させるように要求。だが、ナチュレちゃんは要求を一蹴する。それもその筈。飛翔の奇跡は、混沌の遣いを追いかける際既に使用して今日の分は限界に達している。そのまま発動させれば以前から宣告されている通り、背中の羽翼が焼け落ちてしまう。もう二度と、ピット君は空を飛べなくなってしまうのだ。ブラピ君を助けたいが、それは絶対に嫌だ。彼が本当に飛べなくなってしまう未来、そんなの誰も望んでいない。私が助けなければ、誰が助けるんだ。下降スピードが上昇して行く。ピット君を助け、尚且つブラピ君も助ける。それには、三人の空いた間隔を埋めなくては。
「ムリじゃ!あきらめるんじゃ!回収するぞ!」
「やめろぉぉぉ!!ここでブラピを助けなければ絶対に後悔する!!ナチュレ!恨むぞ!早くしてくれ!!早く!!」
「……。わかった。どうなっても知らんぞ!」
『ダメ!!ピット君!それ以上は!!ダメェェェェェ!!』
「うわぁぁぁぁ!!」
「ピット!ねばれ!がんばれ!」
「ピット……!」
『ピットくぅぅぅぅん!!』
だが私の思いも虚しく、彼は使用限界の飛翔の奇跡を羽翼に宿してもらってしまう。下降スピードが更に上昇するピット君。ピット君の跡を追い掛けている私の両眼に飛び込んで来る羽翼が炎に包まれる瞬間。黄色い光が徐々に赤く染まり、仕舞には赤い炎に。それでも、彼は止まらない。ブラピ君を助けたい一心で、必死に彼へ距離を狭め懸命に手を伸ばしている。けれど未だに、ピット君はブラピ君を捕まえられない。あと少し……!もう少し……!そんな声が耳を掠めた気がした。
緊迫した雰囲気の中、ピット君の距離を狭めていく私。その目線の先には当然踠き苦しむブラピ君の姿が。ピット君とブラピ君が必死に手をの伸ばし合う。あと数センチ……!二人が手を伸ばし合い、ピット君がブラピ君をがっしり捕まえ、やっとの思いでピット君の衣服の裾を掴んだ頃にはナチュレちゃんの機転の効かせでエンジェランドへ飛ばしてくれた。
「転送!!」
しかし……
「ピット……。」
『ピ、ピット君……。』
「残念ながらピットは再起不能じゃ。もう空を飛ぶことも戦うこともできまい。そなたはどうするんじゃ?パルテナ。」
ピット君は、もう……目を……覚まさない……。
幾ら飛べないと言えども天使の象徴とも呼べる翼を失うのは、死を意味するも同然。彼はもう二度と、目を覚まして生活を共にするのさえ敵わないのだ。彼の元へ歩み寄ったパルテナ様がボロボロになっているピット君を抱き起こし、悲愴な表情を浮かべピット君を見つめている。彼女が抱き上げる際に落下し、コロコロ転がってしまった彼が頭部につけていた月桂樹を拾い上げる私。月桂樹、ボロボロになったピット君を見つめ止めどなく流れてきたのは……涙だった。彼はいつも私を守ってくれていたのに、私は彼を守れなかった……分かっていたのに。羽翼を失くした天使がどうなるか、ぐらい。もう二度と優しい笑顔を浮かべて「セラちゃん。」って名前を呼んでくれないのだ。
ーハイ!僕は空を自由に飛べるようになりたいです!!
ー勝ってセラちゃんと一緒にエンジェランドに帰るんだ!
風が吹き抜け、静寂の空気の間を擦り抜けていく。燃え尽きてしまった翼、開かない瞼。折角、三人での再会を果たしエンジェランドに帰って来れたのに、ピット君が居ないのでは意味がない。こんな、結末ってない……。止めどなく流れている涙を拭う術を知らず、ピット君とパルテナ様を見つめ所持している月桂樹を強く握りしめていた。
「ピット……。」
パルテナ様はピット君を見つめ、そのまま夜空を見上げていた。その瞳には何を映し、何を思っているのだろう。
(To be continued……)
「ムリじゃ!あきらめるんじゃ!回収するぞ!」
「やめろぉぉぉ!!ここでブラピを助けなければ絶対に後悔する!!ナチュレ!恨むぞ!早くしてくれ!!早く!!」
「……。わかった。どうなっても知らんぞ!」
『ダメ!!ピット君!それ以上は!!ダメェェェェェ!!』
「うわぁぁぁぁ!!」
「ピット!ねばれ!がんばれ!」
「ピット……!」
『ピットくぅぅぅぅん!!』
だが私の思いも虚しく、彼は使用限界の飛翔の奇跡を羽翼に宿してもらってしまう。下降スピードが更に上昇するピット君。ピット君の跡を追い掛けている私の両眼に飛び込んで来る羽翼が炎に包まれる瞬間。黄色い光が徐々に赤く染まり、仕舞には赤い炎に。それでも、彼は止まらない。ブラピ君を助けたい一心で、必死に彼へ距離を狭め懸命に手を伸ばしている。けれど未だに、ピット君はブラピ君を捕まえられない。あと少し……!もう少し……!そんな声が耳を掠めた気がした。
緊迫した雰囲気の中、ピット君の距離を狭めていく私。その目線の先には当然踠き苦しむブラピ君の姿が。ピット君とブラピ君が必死に手をの伸ばし合う。あと数センチ……!二人が手を伸ばし合い、ピット君がブラピ君をがっしり捕まえ、やっとの思いでピット君の衣服の裾を掴んだ頃にはナチュレちゃんの機転の効かせでエンジェランドへ飛ばしてくれた。
「転送!!」
しかし……
「ピット……。」
『ピ、ピット君……。』
「残念ながらピットは再起不能じゃ。もう空を飛ぶことも戦うこともできまい。そなたはどうするんじゃ?パルテナ。」
ピット君は、もう……目を……覚まさない……。
幾ら飛べないと言えども天使の象徴とも呼べる翼を失うのは、死を意味するも同然。彼はもう二度と、目を覚まして生活を共にするのさえ敵わないのだ。彼の元へ歩み寄ったパルテナ様がボロボロになっているピット君を抱き起こし、悲愴な表情を浮かべピット君を見つめている。彼女が抱き上げる際に落下し、コロコロ転がってしまった彼が頭部につけていた月桂樹を拾い上げる私。月桂樹、ボロボロになったピット君を見つめ止めどなく流れてきたのは……涙だった。彼はいつも私を守ってくれていたのに、私は彼を守れなかった……分かっていたのに。羽翼を失くした天使がどうなるか、ぐらい。もう二度と優しい笑顔を浮かべて「セラちゃん。」って名前を呼んでくれないのだ。
ーハイ!僕は空を自由に飛べるようになりたいです!!
ー勝ってセラちゃんと一緒にエンジェランドに帰るんだ!
風が吹き抜け、静寂の空気の間を擦り抜けていく。燃え尽きてしまった翼、開かない瞼。折角、三人での再会を果たしエンジェランドに帰って来れたのに、ピット君が居ないのでは意味がない。こんな、結末ってない……。止めどなく流れている涙を拭う術を知らず、ピット君とパルテナ様を見つめ所持している月桂樹を強く握りしめていた。
「ピット……。」
パルテナ様はピット君を見つめ、そのまま夜空を見上げていた。その瞳には何を映し、何を思っているのだろう。
(To be continued……)
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