第21章 混沌の狭間(前編)
セラ
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ぎりぎりの所まで引きつけ回避するが、動きは虫の如く俊敏だ。その知恵で今まで生き長らえてしたのだろう。特性を知っても尚、共感できない。胸が痞える。パルテナ様以外の被害者を出さないためにも、ここで決着をつけなければならない。だがそう易易、捕縛され攻撃され浄化されてくれる筈がない。やはり、実力で物を言わすしかないらしい。
「逃がすかッ!!」
「最大出力じゃ!!」
『すばしっこいわね。』
陸と陸との間に立ち並ぶ家々上空をたった今飛行中。異様な光景が視界に入り込む。前方には逃げる犯人、混沌の遣い。最大出力で加速しているのに、未だ距離が開いている。その間隔が非常にもどかしい。ピット君も同じ思いを抱いているのか、混沌の遣いへ射撃しながらも歯痒い思いを抱いている様子で下唇を噛みしめていた。家々が立ち並ぶ上空を抜け、トンネルみたいな形状の空間に入り込んで行く。おいかけっこは未だ続く。ナチュレちゃんがナビゲーションしてくれているが、地形を知り尽くしている上では混沌の遣いに劣っている部分がある。その僅かな差を埋めていくしかない。形勢逆転できたらいいのだが、今の時点で混沌の遣いが優勢だろう。逃げ足の速いヤツに対し、先手を打つ秘策があればいいのだが。厭、ピット君ならばピンチをチャンスに変えてくれる筈。何を忘れてたんだ。今までそうしてきたじゃないか。彼ならばやり遂げてくれると信じているからこそ、ずっとずっと隣で戦ってきたんじゃないか。混沌の遣いめ、精神操作までしてくるなんて何と卑劣な。絶対許さないんだから。
「(セラが勝手に思いこんだだけじゃろうが、いまは言わないでおこうかの。)」
混沌の狭間に奥まで入り込んだ気がするが、前方にて逃避を続ける混沌の遣い。正直“待て”と言われて素直に待つ悪役がいないのも事実だが、必死になって逃げている苛立つ後ろ姿。時折、こちらめがけて攻撃してくるが負けじと反撃する天使二人。
「目の中に?!」
『だいじょうぶなのかな?!』
「些末なことに捕らわれるでない!ただヤツを追うのじゃ!!」
攻撃の手を決して休めず、混沌の遣いを只管追いかけて行く。攻撃が効いているのか、混沌の遣いから煙が出始めた。いい調子だ。このままいけば、空中での戦いで倒せるかもしれない。期待が胸中に宿る頃合、混沌の遣いが大きく見開いた瞳孔にルートを変更させ、逃げ込んだ。これで私達からの追っ手を撒けると踏んだのか算段は不明だが、私達も当然瞳孔の中へ入り込んで行く。入り込んだ先で見たものは、ビートルの大群であった。飛行しているから妨害にはならないけれど、隙を与えず走行している。懸命に追いかけ、見失わず攻撃を繰り返していてもヤツは全く以て音を上げたりしない。手応えはあるのだが、あと一歩が及ばないのだ。ビートルの大群を抜け、大空を舞う。幾度も横長の弾を発射して来る混沌の遣い。残念ながら喰らってしまったが、ダメージは少ない。まだまだ大丈夫。何分か前と比較して、混沌の遣いに隙ができているのを感じる。あんなに優勢だったのに、いつの間にか形勢逆転していたらしい。だが、倒れる気配はない様子。然う斯うしている内にまたしても別の目の中へヤツが逃げ込んだ。切羽詰まっているのは分かるのだが、往生際が悪いと思う。
「ぐぅぅぅっ!もう少しなのに!」
「飛翔の奇跡が尽きるまでに追いつけるか?!」
「かまわないから ガンガン飛ばしてくれ!!」
『いいかげん観念しなさい!!混沌の遣い!!』
倒される気は毛頭ないと言わんばかりに未だ逃避する混沌の遣い。景色が一変し、暗黒世界が視界に広がる。うまい具合に妨害してくる木の幹。それ等を避けながら啖呵を切ってみるものの、効果が得られたかは微妙なところだ。そろそろ飛翔の奇跡のタイムリミットが刻一刻と迫ってきている。緊張感が張り巡らされる雰囲気が周囲に流れ始めているのを察知。もしかして、混沌の遣いはこちらがタイムリミットで八方塞がりになるのを待ち侘びているのだろうか。そうすれば、こちらが勝手に自滅してくれると踏んで。それも一つの作戦だが、手法がとんでもなくえげつない。もしかして逃げ回っているのは、時間を稼いでいる目的なのか。その考えに至った瞬間気付けば神器で混沌の遣いへ向けて連続射撃を発射していた。
「飛翔の奇跡の限界が近いぞよ!」
「あと少しなのに!!」
『あとちょっと……!!』
三つ目の目の中へ逃げ込む混沌の遣い。ピット君、ナチュレちゃんがタイムリミットを気にしている会話が耳に届く。同じ種類の生物が惑わせてくるが、そんなのお構いなしに片っ端から攻撃を加え浄化していく。私の嫌な想像は強ち間違いでもないかもしれない。更に緊張感が高まる中、混沌の遣いが とあるヘマをした。こちらに攻撃を加えるのに夢中で前方を見ていなかったから、空間に浮遊している岩石に激突したのだ。その弾みで宙に浮く混沌の遣い。正直、隙だらけだ。
「チャンス!!」
隙を狙い、機会を窺っていたナチュレちゃんが叫んだ。何らかの奇跡を混沌の遣いへ施した彼女が頻りに指示を出してくる。
「いまじゃ!撃て!!」
「シュート!」
『当たれぇ!』
宙に浮いた状態の混沌の遣いは、此見よがしに私達から射撃のシャワーを浴びる。反撃するのも適わず、ヤツは成されるがままに二方向からの射撃を受け、復帰もせず煙を上げながら浮遊する大きな岩へ真っ逆さまに墜落してしまう。
「しとめたか?!」
「パルテナ様の魂を返せッ!!」
『(ほんとうの戦いは、これからね。)』
見ように寄っては、倒されたかとも捉えられるが恐らくその線は薄い。浄化できたのならば、前回戦闘を交えた段階で既に滅された筈。墜落する程のダメージを与えられたものの、本当の戦いはこれから。気を引き締めていかなければならない。この戦いで、全てが決まるだろう。神器を手中に、混沌の遣いが墜落していった大きな岩改め陸地へ距離を狭め、着地態勢に入りながらただそんな考えを巡らせては闘志を健かに燃やしていた。
(To be continued……)
「逃がすかッ!!」
「最大出力じゃ!!」
『すばしっこいわね。』
陸と陸との間に立ち並ぶ家々上空をたった今飛行中。異様な光景が視界に入り込む。前方には逃げる犯人、混沌の遣い。最大出力で加速しているのに、未だ距離が開いている。その間隔が非常にもどかしい。ピット君も同じ思いを抱いているのか、混沌の遣いへ射撃しながらも歯痒い思いを抱いている様子で下唇を噛みしめていた。家々が立ち並ぶ上空を抜け、トンネルみたいな形状の空間に入り込んで行く。おいかけっこは未だ続く。ナチュレちゃんがナビゲーションしてくれているが、地形を知り尽くしている上では混沌の遣いに劣っている部分がある。その僅かな差を埋めていくしかない。形勢逆転できたらいいのだが、今の時点で混沌の遣いが優勢だろう。逃げ足の速いヤツに対し、先手を打つ秘策があればいいのだが。厭、ピット君ならばピンチをチャンスに変えてくれる筈。何を忘れてたんだ。今までそうしてきたじゃないか。彼ならばやり遂げてくれると信じているからこそ、ずっとずっと隣で戦ってきたんじゃないか。混沌の遣いめ、精神操作までしてくるなんて何と卑劣な。絶対許さないんだから。
「(セラが勝手に思いこんだだけじゃろうが、いまは言わないでおこうかの。)」
混沌の狭間に奥まで入り込んだ気がするが、前方にて逃避を続ける混沌の遣い。正直“待て”と言われて素直に待つ悪役がいないのも事実だが、必死になって逃げている苛立つ後ろ姿。時折、こちらめがけて攻撃してくるが負けじと反撃する天使二人。
「目の中に?!」
『だいじょうぶなのかな?!』
「些末なことに捕らわれるでない!ただヤツを追うのじゃ!!」
攻撃の手を決して休めず、混沌の遣いを只管追いかけて行く。攻撃が効いているのか、混沌の遣いから煙が出始めた。いい調子だ。このままいけば、空中での戦いで倒せるかもしれない。期待が胸中に宿る頃合、混沌の遣いが大きく見開いた瞳孔にルートを変更させ、逃げ込んだ。これで私達からの追っ手を撒けると踏んだのか算段は不明だが、私達も当然瞳孔の中へ入り込んで行く。入り込んだ先で見たものは、ビートルの大群であった。飛行しているから妨害にはならないけれど、隙を与えず走行している。懸命に追いかけ、見失わず攻撃を繰り返していてもヤツは全く以て音を上げたりしない。手応えはあるのだが、あと一歩が及ばないのだ。ビートルの大群を抜け、大空を舞う。幾度も横長の弾を発射して来る混沌の遣い。残念ながら喰らってしまったが、ダメージは少ない。まだまだ大丈夫。何分か前と比較して、混沌の遣いに隙ができているのを感じる。あんなに優勢だったのに、いつの間にか形勢逆転していたらしい。だが、倒れる気配はない様子。然う斯うしている内にまたしても別の目の中へヤツが逃げ込んだ。切羽詰まっているのは分かるのだが、往生際が悪いと思う。
「ぐぅぅぅっ!もう少しなのに!」
「飛翔の奇跡が尽きるまでに追いつけるか?!」
「かまわないから ガンガン飛ばしてくれ!!」
『いいかげん観念しなさい!!混沌の遣い!!』
倒される気は毛頭ないと言わんばかりに未だ逃避する混沌の遣い。景色が一変し、暗黒世界が視界に広がる。うまい具合に妨害してくる木の幹。それ等を避けながら啖呵を切ってみるものの、効果が得られたかは微妙なところだ。そろそろ飛翔の奇跡のタイムリミットが刻一刻と迫ってきている。緊張感が張り巡らされる雰囲気が周囲に流れ始めているのを察知。もしかして、混沌の遣いはこちらがタイムリミットで八方塞がりになるのを待ち侘びているのだろうか。そうすれば、こちらが勝手に自滅してくれると踏んで。それも一つの作戦だが、手法がとんでもなくえげつない。もしかして逃げ回っているのは、時間を稼いでいる目的なのか。その考えに至った瞬間気付けば神器で混沌の遣いへ向けて連続射撃を発射していた。
「飛翔の奇跡の限界が近いぞよ!」
「あと少しなのに!!」
『あとちょっと……!!』
三つ目の目の中へ逃げ込む混沌の遣い。ピット君、ナチュレちゃんがタイムリミットを気にしている会話が耳に届く。同じ種類の生物が惑わせてくるが、そんなのお構いなしに片っ端から攻撃を加え浄化していく。私の嫌な想像は強ち間違いでもないかもしれない。更に緊張感が高まる中、混沌の遣いが とあるヘマをした。こちらに攻撃を加えるのに夢中で前方を見ていなかったから、空間に浮遊している岩石に激突したのだ。その弾みで宙に浮く混沌の遣い。正直、隙だらけだ。
「チャンス!!」
隙を狙い、機会を窺っていたナチュレちゃんが叫んだ。何らかの奇跡を混沌の遣いへ施した彼女が頻りに指示を出してくる。
「いまじゃ!撃て!!」
「シュート!」
『当たれぇ!』
宙に浮いた状態の混沌の遣いは、此見よがしに私達から射撃のシャワーを浴びる。反撃するのも適わず、ヤツは成されるがままに二方向からの射撃を受け、復帰もせず煙を上げながら浮遊する大きな岩へ真っ逆さまに墜落してしまう。
「しとめたか?!」
「パルテナ様の魂を返せッ!!」
『(ほんとうの戦いは、これからね。)』
見ように寄っては、倒されたかとも捉えられるが恐らくその線は薄い。浄化できたのならば、前回戦闘を交えた段階で既に滅された筈。墜落する程のダメージを与えられたものの、本当の戦いはこれから。気を引き締めていかなければならない。この戦いで、全てが決まるだろう。神器を手中に、混沌の遣いが墜落していった大きな岩改め陸地へ距離を狭め、着地態勢に入りながらただそんな考えを巡らせては闘志を健かに燃やしていた。
(To be continued……)
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