第21章 混沌の狭間(前編)
セラ
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逆さまの建造物の隙間を掻い潜り、真っ直ぐ突き進む。さすれば、ナチュレちゃんからの朗報が入った。正直何処を飛行しているのかルートは分かりづらいが、混沌の遣いへ徐々に距離を狭めているらしい。ピット君の飛翔の奇跡のタイムリミットもあるし、のんびりもしていられない。だが、思わぬアクシデントが私達の身に降りかかる。追っていた筈の混沌の遣いが何匹も姿を現したのだ。さすがに身が竦む思いに駆られる。聞けば、分身ではなくて類似した生物との話。意志力は余り感じない。気持ち悪さで言えば、混沌の遣いが群を抜いているだろう。けれど、似たりよったりの見た目に私達の表情は強張る。もしかして、この中に本物の混沌の遣いが?一瞬そんな考えを余儀なくされたけれど、可能性は低いらしい。ナチュレちゃんに確認済みである。で、あるならば目の前に立ちはだかっている仲間かどうかも怪しい存在はこの場で浄化しても文句は言われないだろう。考え過ぎかもしれないが、混沌の遣いを守備する目的で私達の目の前に立ち塞がっているのかもしれない。こういうのは気の持ちようだ。そう思ったら、俄然やる気が湧いてきた。何匹居るかは知らないが、ピット君と手分けして浄化に勤しむ。同じ種類の生物といえど、そこ迄浄化に手間はかからなかった。
「ぐ……!いちいち驚いてられるか!!」
『ホント、なにが起こるかわからないね。』
同じ種類の生物を全て浄化し終えて進んだ先には、呪文の羅列が空間内に埋め尽くされている。なんて読むかは、残念ながら分からない。混沌の狭間は、私達を驚かせに来ている気がする。厭、混沌の狭間の住人はこれを日常茶飯事だと主張するだろう。私達の平和な日常こそが、こちらの住人にとっての異常なのだと思う。侵入者を撃退する用途ではないのかもしれない。もしかしたら、混沌の遣いが用意したトラップなのかもしれない。答えはどうあっても見つからなさそうだ。これは、私の想像の域を超えないのだから。
誰もが驚愕する展開、ナチュレちゃんですら納得する答えを持ち合わせていなさそうだ。唯一、知り尽くしている存在は一つ目だけで口がない。語る行為すら難しいなんて。今までのボスには居なかったタイプだ。追いかけても追いかけても未だ存在を確認できないし。
「これは!」
「そなたの影じゃな。」
『あれま。ピット君?』
おいかけっことかくれんぼは続いている。卑怯者のあいつは逃げ隠れを繰り返し、私達に姿を見せる様子はない。そんな場面、私達の目の前に立ちはだかる二度目の敵その名も“影ピット”君。ご丁寧に神器を所持して、攻撃を仕掛けてくる。爆筒を持つ者、撃剣を持つ者、衛星を持つ者、更には破掌を持つ者まで居て全員がそのままピット君なのだ。次々に攻撃を仕掛けてくるのはいいものの、私に対してその攻撃は何故か当たらない。必ずや脇に逸れてしまうのだ。首を傾げつつもピット君をちらりと盗み見れば、納得のいかない表情を浮かべていた。ナチュレちゃん曰く「ピットがセラに攻撃できるワケなかろう。」だそうだ。
「まったくもって、キモチ悪い!不愉快だ!僕はもっと、いいオトコだって!」
『(ピット君。マジメに言ってるな。)』
「それ、つっこんでほしいのかの。いわゆるでっかい釣り針かの?」
「い、いや、なんでもない!」
『(やっぱり伝わらなかったな……。)』
影ピット君に寄る攻撃を撥ね除け、敵の懐に渾身の一撃を与えるピット君。効果は覿面だ。次々に浄化されゆく影ピット君。その様子を見つめ、苦笑いを浮かべてしまった。真面目に言い放った言葉さえあしらわれ、自我を保たないコピーを生み出されてしまう始末。ピット君って案外被害者だよねと思わずにはいられない。心の中ではあるが、ついつい応援してしまった。この場で敢えて言わせてもらうけれど、ピット君は天使であるからだが端正な顔立ちをしているのだ。残念ながら、ナチュレちゃんはピット君の魅力に気付いていないらしい。二人の愛は未だ育まれていない様子。二人のキューピットとして、もっと努力しなければ。
『よぉーし!がんばるぞぉ!!』
「セラちゃん、やる気だね!」
……なに、とは言わない。
やる気に満ち溢れ、反射でガッツポーズをしている最中景色が変化し、前方に陸と陸が重なったような不思議な場所が視界に飛び込んでくる。陸と陸が重なる間には家々が立ち並んでいるみたいだ。人が住んでいる気配はない。混沌の遣いと同じ種類の生き物が生息し、住んでいる可能性はあるが。
「あそこじゃ!」
「加速を!!」
『やっと見つけた!!』
想像の範疇であるけれど、まさか混沌の遣いもあの立ち並ぶ家々の何処かに住んでいるのだろうか。なかなか姿を発見できずにいたが、漸く混沌の遣いが飛び回る様子を眼に入れる。無論飛行スピードを上昇させ、跡を追いかける天使二人。感情があるかどうかは計れないが、捕まりたくない一心で横長の弾を無闇に発射して来る。
「ぐ……!いちいち驚いてられるか!!」
『ホント、なにが起こるかわからないね。』
同じ種類の生物を全て浄化し終えて進んだ先には、呪文の羅列が空間内に埋め尽くされている。なんて読むかは、残念ながら分からない。混沌の狭間は、私達を驚かせに来ている気がする。厭、混沌の狭間の住人はこれを日常茶飯事だと主張するだろう。私達の平和な日常こそが、こちらの住人にとっての異常なのだと思う。侵入者を撃退する用途ではないのかもしれない。もしかしたら、混沌の遣いが用意したトラップなのかもしれない。答えはどうあっても見つからなさそうだ。これは、私の想像の域を超えないのだから。
誰もが驚愕する展開、ナチュレちゃんですら納得する答えを持ち合わせていなさそうだ。唯一、知り尽くしている存在は一つ目だけで口がない。語る行為すら難しいなんて。今までのボスには居なかったタイプだ。追いかけても追いかけても未だ存在を確認できないし。
「これは!」
「そなたの影じゃな。」
『あれま。ピット君?』
おいかけっことかくれんぼは続いている。卑怯者のあいつは逃げ隠れを繰り返し、私達に姿を見せる様子はない。そんな場面、私達の目の前に立ちはだかる二度目の敵その名も“影ピット”君。ご丁寧に神器を所持して、攻撃を仕掛けてくる。爆筒を持つ者、撃剣を持つ者、衛星を持つ者、更には破掌を持つ者まで居て全員がそのままピット君なのだ。次々に攻撃を仕掛けてくるのはいいものの、私に対してその攻撃は何故か当たらない。必ずや脇に逸れてしまうのだ。首を傾げつつもピット君をちらりと盗み見れば、納得のいかない表情を浮かべていた。ナチュレちゃん曰く「ピットがセラに攻撃できるワケなかろう。」だそうだ。
「まったくもって、キモチ悪い!不愉快だ!僕はもっと、いいオトコだって!」
『(ピット君。マジメに言ってるな。)』
「それ、つっこんでほしいのかの。いわゆるでっかい釣り針かの?」
「い、いや、なんでもない!」
『(やっぱり伝わらなかったな……。)』
影ピット君に寄る攻撃を撥ね除け、敵の懐に渾身の一撃を与えるピット君。効果は覿面だ。次々に浄化されゆく影ピット君。その様子を見つめ、苦笑いを浮かべてしまった。真面目に言い放った言葉さえあしらわれ、自我を保たないコピーを生み出されてしまう始末。ピット君って案外被害者だよねと思わずにはいられない。心の中ではあるが、ついつい応援してしまった。この場で敢えて言わせてもらうけれど、ピット君は天使であるからだが端正な顔立ちをしているのだ。残念ながら、ナチュレちゃんはピット君の魅力に気付いていないらしい。二人の愛は未だ育まれていない様子。二人のキューピットとして、もっと努力しなければ。
『よぉーし!がんばるぞぉ!!』
「セラちゃん、やる気だね!」
……なに、とは言わない。
やる気に満ち溢れ、反射でガッツポーズをしている最中景色が変化し、前方に陸と陸が重なったような不思議な場所が視界に飛び込んでくる。陸と陸が重なる間には家々が立ち並んでいるみたいだ。人が住んでいる気配はない。混沌の遣いと同じ種類の生き物が生息し、住んでいる可能性はあるが。
「あそこじゃ!」
「加速を!!」
『やっと見つけた!!』
想像の範疇であるけれど、まさか混沌の遣いもあの立ち並ぶ家々の何処かに住んでいるのだろうか。なかなか姿を発見できずにいたが、漸く混沌の遣いが飛び回る様子を眼に入れる。無論飛行スピードを上昇させ、跡を追いかける天使二人。感情があるかどうかは計れないが、捕まりたくない一心で横長の弾を無闇に発射して来る。