第21章 混沌の狭間(前編)
セラ
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ピット君が、怒った。“怒った”。その単語を耳にしただけでどうにもマイナスな印象を受けがちだけれど、ピット君の場合は決して理不尽な憤りを覚えた訳ではない。そう擁護しておく。彼が怒ったのは、私に対して。理由は単純明快。前回の戦いを少々振り返るが、私はパルテナ様を助け出したい一心で混沌の遣いを彼女から自分の注意を引き、魂を差し出す危ない賭けをした。勝利すれば混沌の遣いを倒せ、また敗北すれば魂を食べられ全てを支配される最悪な展開へと発展するだろう。既に結末は目に見えていた。だが、その時の思いは自分がどうなるかの未来よりも、パルテナ様を救い出したい……彼女を闇の中から救い出せるならば、自分はどうなっても構わないと本気で思っていた。胸中に過った恐怖心は確かに存在していたが、軽く無視をして両腕を広げていてその先の未来はピット君に託そうだとか考えていた気がする。一歩間違えれば混沌の遣いに搦め捕られるが心の何処かでピット君があいつを打倒してくれるって信じていた。
結果、良い方向に流れてはくれなかったが希望が失われた訳ではない。今から、混沌の狭間へ乗り出す場面。とても大事な局面だ。だがそんな折、ピット君に話があるとの呼び出しがあり応じた次第。神器の調子をチェックしている真っ最中であった。応じるなり、ナチュレちゃんの神殿の片隅へ歩行を進め辿り着き仁王立ちをして待ち構えていたピット君に説教を受け、今に至る。ある意味、修羅場と言えよう。
『あのぅ……ピットさん……?』
「……僕は心臓がつぶれるかと思ったんだ。パルテナ様だけでなく、セラちゃんまでも苦しめてしまうんじゃないか?って。」
『でもほらっ!私はこのとおりピンピンしているし!』
「キミさえ守れなかったら僕は……パルテナ様に顔向けできない。」
『ピット君……。』
羅刹の如く形相を前に、唯々諾々するしかない私。敵軍の理不尽な攻撃に怒りを露にするケースは多い。私だって、許容できず怒りを神器に込めて戦った時もある。だが、今回はそのケースとは遥かに異なり、私の思いがけない行動と自分に叱責している印象を受ける。時折垣間見せる悲痛な、切なさそうな表情は彼の心境を現しているかのようだ。その表情を見つめ、思う。“本当に心配してくれたんだ”って。不謹慎にも喜びの感情に支配される。あの時、感じた思いと今の心境。全部を唇に込めて言葉にしよう。今伝えなければきっと、後悔するだろう。
「大体キミは後先考えずに行動するときがあるよね。すこし自分を自覚したほうがいい。どれだけ狙われてるかわかるかい?!僕はそれだけでヒヤヒヤしっぱなしなんだ。この際だから言うよ。お転婆なところもキミの長所だ。けれど、限度ってモノがある。命の危険にさらされるときだってあるんだ。今回だけじゃない。前にも何度あったかわからないぐらいだ。それもこれもキミが……」
『うぅ〜ごめんなさ〜い!』
自分なりの言葉で伝えようとした刹那、まだ言い足りなかったらしくピット君から一方的に捲し立てられてしまう。青菜に塩とはまさにこの事。お陰で言うタイミングを逃してしまった。未だにくどくど言い放つ彼を目の前に溜息をついてしまうのは仕方がなくて、いつになったら終わるのだろう等と考えては言い終わるのを心待ちにしている。今から出陣なのに、余計な所でエネルギーを使っている彼に打って変わり今度は苦笑い。このままだと、私の感じた思いと今の心境を伝えられずに出陣する方向に流れてしまう。この説教も今直ぐ終了させなければ。唯々諾々だった私は、意を決してピット君に伝えるべく口を開いた。
『あ、あのときは無謀な行動だったと思う!反省してるよ。でもね?それは、ピット君を信じていたからなの!ピット君ならゼッタイあいつを打ち倒してくれるって!恐怖心がなかったわけじゃないけど、それよりも信じるキモチが勝ってた。だから、これからもピット君がかならず勝ってくれるしだいじょうぶだよ!』
「……それって……ぜんっぜん反省してないじゃないかぁーーーー!!!!!」
満面の笑顔で自分の思いの丈を伝える。これからも心置きなく行動するから、そのつもりで。私の思いの丈を聞いたピット君は、腹から力を入れて声を大にして叫んでいた。その叫声は、ナチュレちゃんの神殿に留まらず全世界に轟いただろう。反省しているけれど、時には開き直るのも大事であると学んだ。
結果、良い方向に流れてはくれなかったが希望が失われた訳ではない。今から、混沌の狭間へ乗り出す場面。とても大事な局面だ。だがそんな折、ピット君に話があるとの呼び出しがあり応じた次第。神器の調子をチェックしている真っ最中であった。応じるなり、ナチュレちゃんの神殿の片隅へ歩行を進め辿り着き仁王立ちをして待ち構えていたピット君に説教を受け、今に至る。ある意味、修羅場と言えよう。
『あのぅ……ピットさん……?』
「……僕は心臓がつぶれるかと思ったんだ。パルテナ様だけでなく、セラちゃんまでも苦しめてしまうんじゃないか?って。」
『でもほらっ!私はこのとおりピンピンしているし!』
「キミさえ守れなかったら僕は……パルテナ様に顔向けできない。」
『ピット君……。』
羅刹の如く形相を前に、唯々諾々するしかない私。敵軍の理不尽な攻撃に怒りを露にするケースは多い。私だって、許容できず怒りを神器に込めて戦った時もある。だが、今回はそのケースとは遥かに異なり、私の思いがけない行動と自分に叱責している印象を受ける。時折垣間見せる悲痛な、切なさそうな表情は彼の心境を現しているかのようだ。その表情を見つめ、思う。“本当に心配してくれたんだ”って。不謹慎にも喜びの感情に支配される。あの時、感じた思いと今の心境。全部を唇に込めて言葉にしよう。今伝えなければきっと、後悔するだろう。
「大体キミは後先考えずに行動するときがあるよね。すこし自分を自覚したほうがいい。どれだけ狙われてるかわかるかい?!僕はそれだけでヒヤヒヤしっぱなしなんだ。この際だから言うよ。お転婆なところもキミの長所だ。けれど、限度ってモノがある。命の危険にさらされるときだってあるんだ。今回だけじゃない。前にも何度あったかわからないぐらいだ。それもこれもキミが……」
『うぅ〜ごめんなさ〜い!』
自分なりの言葉で伝えようとした刹那、まだ言い足りなかったらしくピット君から一方的に捲し立てられてしまう。青菜に塩とはまさにこの事。お陰で言うタイミングを逃してしまった。未だにくどくど言い放つ彼を目の前に溜息をついてしまうのは仕方がなくて、いつになったら終わるのだろう等と考えては言い終わるのを心待ちにしている。今から出陣なのに、余計な所でエネルギーを使っている彼に打って変わり今度は苦笑い。このままだと、私の感じた思いと今の心境を伝えられずに出陣する方向に流れてしまう。この説教も今直ぐ終了させなければ。唯々諾々だった私は、意を決してピット君に伝えるべく口を開いた。
『あ、あのときは無謀な行動だったと思う!反省してるよ。でもね?それは、ピット君を信じていたからなの!ピット君ならゼッタイあいつを打ち倒してくれるって!恐怖心がなかったわけじゃないけど、それよりも信じるキモチが勝ってた。だから、これからもピット君がかならず勝ってくれるしだいじょうぶだよ!』
「……それって……ぜんっぜん反省してないじゃないかぁーーーー!!!!!」
満面の笑顔で自分の思いの丈を伝える。これからも心置きなく行動するから、そのつもりで。私の思いの丈を聞いたピット君は、腹から力を入れて声を大にして叫んでいた。その叫声は、ナチュレちゃんの神殿に留まらず全世界に轟いただろう。反省しているけれど、時には開き直るのも大事であると学んだ。
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